合宿明けの学校は、まるで昨日の熱気が残っているみたいにピリピリしていた。
剣王会のメンバーはみんな疲れているはずなのに、どこかキラキラして見えるのは気のせいじゃない。
教室で茉莉奈は、ふと藤井先輩のことを考えていた。
あのツンデレっぷり、そして意外な優しさ……。
「素直になれよ」と言った声がまだ耳に残っていて、顔が熱くなった。
そんな時、不破くんがすっと近づいてきた。
「おはよう、茉莉奈。今日も剣王会、頑張ろうぜ!」
不破くんの笑顔は眩しい。だが茉莉奈は、心の中で揺れていた。
「不破くん、ごめんね。私、藤井先輩のことがまだ気になってて…」
「わかってる。でもさ、俺だって負ける気はしないよ。俺が茉莉奈を守ってみせる!」
彼の真剣な瞳に、茉莉奈は思わず「ありがとう」と言った。
放課後。
剣王会の道場に莉乃先輩が現れた。
「お疲れ様。今日は特別に基礎を教えてあげるわ」
莉乃先輩はいつも通り、大人っぽくてさっぱりした笑顔。だが、その目には強い決意が宿っている。
「莉乃先輩、なんだか今日の先輩、いつもと違いますね」
「ふふ、それは秘密。実はね……私も茉莉奈に話したいことがあるの」
二人きりになると、莉乃先輩は少し照れくさそうに話し始めた。
「私はこの剣王会の“姫”って呼ばれているけど……正直、いつも自分に自信がなくて」
「え?」
「強くならなきゃって思うけど、焦りすぎて空回りしちゃうの。でも、茉莉奈みたいに明るくて純粋な子がいると、私も救われるの」
茉莉奈は胸がじんわり温かくなった。
「莉乃先輩……私、先輩のこと尊敬してます」
「ありがとう。これからも一緒に頑張ろうね」
二人は自然と手を重ねて、少しだけ特別な空気が流れた。
次の日、部活対抗戦が開催された。
剣王会は強豪校を相手に連戦連勝。
藤井先輩も不破くんも、茉莉奈のために全力を尽くしていた。
試合の合間、藤井先輩は茉莉奈を見つめて言った。
「……俺、おまえのこと、ちゃんと考えてる。たまにはそれくらい、知っておけ」
茉莉奈は顔を真っ赤にして、うつむいた。
「藤井先輩……私も先輩のこと、気になってます」
「そうかよ。だったら、もっと素直にしろよな」
その言葉に、茉莉奈の心は弾けた。ツンデレ先輩の素直な気持ちが、こんなにも嬉しいなんて。
しかし、不破くんも負けてはいなかった。
「茉莉奈、俺と勝負しようぜ。どっちが先輩のハートを掴むか、真剣勝負だ!」
二人の間で、甘く切ない三角関係の戦いが始まっていた。
そして放課後。莉乃先輩は茉莉奈に声をかけた。
「ねぇ、今度の合宿、二人で遠征に行かない?」
「えっ、二人だけで?」
「うん。勝ち抜き合宿があって、強豪校もたくさん来るの。君と私で一緒に挑戦したいの」
茉莉奈の胸は高鳴った。
「はい、ぜひ!」
二人旅が、甘酸っぱくてときめく青春の幕開けだった。
そんなこんなで、恋の火花はあちこちで散っている。
チャンバラの勝負も恋の駆け引きも、どちらも真剣勝負。
茉莉奈は心の中で呟いた。
「私の青春は、こんなに甘酸っぱくて、切なくて、何よりキラキラしてるんだって」
そう、これが青春の魔法なのだ。