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第7話 「勝ち抜き合宿、恋の三つ巴バトル!」

朝の澄んだ空気が肌を刺す。

剣王会のメンバーはバスに揺られて、遠くの合宿所へと向かっていた。

今回の「勝ち抜き合宿」は、県内外の強豪校が集まるスポーツチャンバラの祭典。

「ここで勝てなきゃ、剣王会のプライドが保てない」――そんな緊張感が胸を締め付ける。


茉莉奈は窓の外を見ながら、心の中で呟いた。

「莉乃先輩と二人旅なんて、緊張するけど楽しみ……」

同時に隣の席でスマホをいじっている藤井先輩をちらりと見る。

彼はいつも通り、無言で画面に没頭しているけど、時々眉間にシワが寄っている。

「……あいつも緊張してるのかな?」


そして後ろの席から、どんと肩を叩かれた。

「おい、茉莉奈。準備はいいか?」

振り返ると、そこには不破くんの真剣な眼差しがあった。

「うん、もちろん!」

不破くんの瞳の奥に見え隠れする「俺が守る」という熱い決意が、なぜか心強く感じられた。


合宿所に着くと、すでに県外の強豪校たちが集まっていた。

大会前のウォーミングアップが始まる中、莉乃先輩が茉莉奈の元へ歩み寄る。


「茉莉奈、しっかり準備できてる?」

「はい、先輩! 莉乃先輩と一緒だから絶対頑張れます!」

莉乃先輩の瞳が柔らかく輝き、優しい笑顔を見せる。

「じゃあ、私たちのペア、絶対負けないわよ」


二人の距離が自然に近づき、茉莉奈は胸の鼓動を押さえきれない。


大会が始まる。

まずは個人戦。

藤井先輩は驚異的な動きで次々に勝ち進んでいく。

だが彼の顔には、普段の無表情とは違う、熱い覚悟がにじんでいた。


試合の合間、茉莉奈は藤井先輩に話しかけた。

「先輩、試合中、すごくかっこよかったです!」

彼は少しだけ顔を赤らめて、ぽつりと言った。

「……別に、おまえのためじゃねえし。勝つのは当たり前だ」

でも、その照れ隠しの口調が、茉莉奈には愛しく聞こえた。


次は団体戦。

茉莉先輩・藤井先輩・不破くんの三人で戦うことになった。

だが、試合は思わぬ展開を見せる。


不破くんが茉莉奈に向かって叫ぶ。

「茉莉奈、俺が絶対守るからな!」

彼の目は真剣そのもの。

茉莉奈は胸が熱くなったが、同時に心の中で葛藤もあった。

「私のこと、あんなに想ってくれて……でも、私の気持ちは藤井先輩に向いてる……」


試合後の休憩時間、莉乃先輩が茉莉奈にそっと寄り添う。

「茉莉奈、あなたのこと、ちゃんと見てるわよ。自信持ちなさい」

「莉乃先輩……ありがとうございます。先輩の言葉が、すごく心強いです」

二人は見つめ合い、まるで秘密の約束を交わすかのように微笑んだ。


その夜、合宿所の広間で行われた交流会。

みんなが盛り上がる中、藤井先輩は不破くんに不意に言った。

「……おまえ、茉莉奈のこと好きらしいな」

「えっ、バレてた?」

「バレてんだよ。だが、勝負はこれからだ」

「藤井先輩、手加減しねえからな!」


二人の目が真剣にぶつかり合う。

茉莉奈はその様子を見て、胸の中で何かがはじけるのを感じた。


翌朝、莉乃先輩と茉莉奈は早朝の道場で稽古をしていた。

「今日は特訓よ。私たちの絆をもっと強くするの」

茉莉奈は刀を握りしめ、真剣な眼差しで応じた。


稽古の合間、莉乃先輩はぽつりとつぶやいた。

「実はね、私も昔は恋に不器用で……でも、剣王会で皆と過ごすうちに少しずつ変わったの」

「莉乃先輩がそんなことを?」

「そうよ。だから、茉莉奈も焦らずに、自分の気持ちに正直になりなさい」


二人は刀を合わせて、火花を散らしながら笑い合った。

それはまるで、未来への約束のようだった。


合宿最終日、決勝戦が始まる。

対戦相手は県内最強のチーム。

剣王会の三人は力を合わせ、互いを信じて戦う。

藤井先輩は毒舌を交えつつも、茉莉奈への特別な視線を隠さず、

不破くんは茉莉奈を守るために果敢に攻め、

莉乃先輩は冷静かつ的確な指示でチームをまとめた。


試合は激闘の末、ぎりぎりの勝利で剣王会が勝ち抜いた。


帰りのバスの中。

茉莉奈は藤井先輩の隣で、少しだけ手を握った。

藤井先輩は驚いて、一瞬固まる。

「……バ、バカ。なにしてんだよ」

でもその頬は真っ赤で、目はどこか優しかった。


不破くんはその様子を見て、「俺も負けてらんねえ!」と拳を握った。

莉乃先輩はそんな二人を微笑みながら見つめていた。


茉莉奈は心の中で決めた。

「この三人との関係、どれも大切。どんな展開でも、私はこの青春を大切にしたい」


甘酸っぱさ、友情、恋。

スポーツチャンバラはただの勝負じゃない。

それは彼女たちの心を繋ぐ、真剣勝負だった。



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