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第9話「恋のエッジに、新たな風──ライバル登場!? 恋のチャンバラ、第二幕」

「え? 転校生!?」

茉莉奈が思わず声を上げたのは、合宿が終わって数日後、日常に戻った剣王会の部室でのことだった。


「今日からこの学校に転入してきた不知火しらぬい紗綾さあやさんです」

顧問の紹介とともに入ってきたのは、長い黒髪と鋭い目つきが印象的な、クール系美少女だった。


「スポーツチャンバラ、全中ベスト8って……ガチの人じゃん!?」

「しかも、剣王会に入部希望だと!?」


ざわめく部員たち。だが、茉莉奈の胸を最もざわつかせたのは、彼女が放った一言だった。


「藤井先輩に、会いに来ました」


……え? いま、なんて?


「ごめんなさい、聞き間違い……?」


「中学の頃から、ずっと先輩に憧れていました」


即死レベルの宣戦布告が、茉莉奈のハートを直撃した。


「ちょ、ちょっと待って……何それ!? まるで少女漫画のライバルキャラじゃん!」


茉莉奈はその日の帰り道、藤井先輩とすれ違った瞬間を思い出して頭を抱えた。


「……先輩、なんて顔してたっけ……。いや、いつもの無表情だったけど、目がちょっと泳いでた気がするし……!」


悶々としながら部室に戻ると、紗綾が藤井先輩に付きっきりでフォームを教わっているのを目撃してしまう。


(う、うわあああああ! 近い、距離近すぎ! ていうか先輩、教えるのうまいし! えっ、何その優しい目……私のときと違くない!?)


さらに追い打ちをかけるように、紗綾が茉莉奈の目の前で藤井先輩に言い放つ。


「私、恋愛とか興味ないって思ってた。でも、先輩だけは特別なんです」


その言葉に、茉莉奈の胸の奥がズキンと痛む。


その日の練習後、莉乃先輩が茉莉奈の肩をポンと叩いた。


「……焦る気持ちはわかるけど、大事なのは自分の気持ちとちゃんと向き合うことよ」


「莉乃先輩……」


「誰が好きで、どうして好きで、どうしたいのか。ね?」


莉乃先輩の言葉が胸にしみて、茉莉奈はゆっくり頷いた。


そして数日後、校内スポーツチャンバラ部活対抗戦が開催されることに。


茉莉奈はエントリーリストを見て、目を見開いた。


「え……!? ペア戦のくじ引き、まさかの……!」


──藤井先輩と紗綾がペアになっていた。


「え、私のペアは……まさかの不破くん!?」


不破「やっと来たか、この時が……! おれの全力、見せるときだ……!」


不破くんが気合いを入れる中、茉莉奈の心中は真逆だった。


(うそ、うそでしょ……先輩と、紗綾ちゃんがペアって……)


でも、泣き言なんて言ってられない。試合は明日。全ての恋と剣が交差する、運命の一日が始まる。


そして大会当日。


白熱する試合が続く中、ついに――


「準決勝、剣王会代表・藤井&不知火ペア vs 剣王会代表・茉莉奈&不破ペア、開始!」


「なんで身内対決なの~~~~~~!?」

茉莉奈の叫びは虚しく響いた。


試合が始まると、紗綾は藤井先輩にぴったりと張り付き、流れるような連携を見せた。


「な、なにあの連携力! はじめて組んだとは思えない!」


「藤井先輩は、私の剣のリズムを分かってくれてるんです」

紗綾の言葉がまっすぐに刺さる。


(そんなの、ずるい……! でも、私だって……!)


茉莉奈は全力で打ち込み、不破くんも負けじと動いた。


そして――決着の一太刀。


「一本! 勝者、茉莉奈&不破ペア!」


観客が湧く中、茉莉奈は息を切らしながら藤井先輩を見る。


「私、もっと強くなる……剣も、気持ちも!」


その言葉に、藤井先輩は顔を少し赤らめて、ぼそっと言った。


「……バカ。勝手にそうやって決意するなよ……応援、するけど」


顔を赤くしながら目をそらす藤井先輩に、茉莉奈の胸がきゅうっと締めつけられた。


紗綾は静かに茉莉奈の隣に立ち、低く言う。


「負けたからって、諦めません。藤井先輩は、私の初恋なんですから」


(──恋のチャンバラ、第二幕突入。甘くて苦くて、ちょっと切ない。でも、絶対負けられない!)


青春の勝負は、まだまだ続く。

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