春の陽射しが差し込む体育館の中、剣王会の練習はいつもと変わらず熱気に包まれていた。
茉莉奈は、フォームソードを握りしめながら、先輩たちの動きを目で追っていた。
その視線の先には、藤井慧先輩の姿があった。
無口で無愛想、だけどその剣さばきは誰よりも美しく、力強い。
茉莉奈の胸は、自然と高鳴っていた。
そんな茉莉奈の隣に、紗綾がそっと近づいてきた。
「ねぇ、茉莉奈。最近、藤井先輩と仲良くなったんじゃない?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!」
茉莉奈は慌てて否定したが、顔が赤くなるのを止められなかった。
紗綾は、そんな茉莉奈の様子を見て、少し寂しそうに微笑んだ。
「そっか……。実はね、私、藤井先輩のこと、好きだったんだ」
茉莉奈は驚いて紗綾を見つめた。
「でも、今日、告白してきたの。そしたら……断られちゃった」
紗綾の目には、涙が浮かんでいた。
「茉莉奈には、頑張ってほしいな。応援してるから」
そう言って、紗綾は笑顔を作った。
茉莉奈は、胸が締め付けられる思いだった。
練習が終わり、茉莉奈は一人で体育館に残っていた。
フォームソードを握りしめ、藤井先輩の言葉を思い出していた。
「下手だけど、まっすぐ突っ込んでくるの、悪くない」
その言葉が、茉莉奈の胸に深く刻まれていた。
「私、どうしたらいいんだろう……」
茉莉奈は、心の中で自問自答していた。
その時、体育館の扉が開き、藤井先輩が入ってきた。
「……まだ、練習してたのか」
茉莉奈は驚いて振り返った。
「あ、はい……。もう少しだけ、練習しようと思って」
藤井先輩は、茉莉奈の隣に立ち、フォームソードを構えた。
「一本、付き合ってやる」
茉莉奈は、驚きながらも頷いた。
二人は、静かに構え、剣を交えた。
その一瞬一瞬が、茉莉奈の心に深く刻まれていった。
試合が終わり、藤井先輩は茉莉奈に言った。
「お前、少しは上達したな」
茉莉奈は、嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
藤井先輩は、少し照れたように目を逸らした。
「……うるさい。黙ってる方が可愛いぞ、お前」
茉莉奈の心臓が、一瞬止まったような気がした。
「えっ……?」
藤井先輩は、何も言わずに体育館を出て行った。
茉莉奈は、その背中を見送りながら、胸の高鳴りを感じていた。
「これって……恋、なのかな」
茉莉奈は、そっと呟いた。
その夜、茉莉奈は紗綾に電話をかけた。
「もしもし、紗綾? 今日、ありがとう」
紗綾は、電話越しに笑った。
「ううん、茉莉奈が幸せになるなら、それでいいんだ」
茉莉奈は、涙をこらえながら言った。
「私、頑張るね」
「うん、応援してるよ」
二人の友情は、さらに深まっていった。
そして、茉莉奈の恋も、少しずつ動き始めていた。