明くる日、朝から刀を打って汗を流していた。昨日の佳奈の言葉は俺の胸を強く打ち。胸の中で燻っていたなにかに火をつけた。
今回の刀身の打ち方は本来の炉を使った刀身ではない。
異世界に居た時代、刀を作る為にやっていた魔法を使っての製造を行っていたのだ。
砂鉄から玉鋼を作るところから魔法の高火力な炎を使う。そして打ち重ねていく。魔法の高火力の炎を使用して打つことで刃に魔力が宿り、強度が上がる。
魔力に目覚めたばかりの身体の為、体内に内包している魔力はそんなに多くない。鍛錬の意味も込めて休み休みだが魔法での刃の作成を行っていた。
午前中の終わりを告げるベルがなり、食堂へと向かった。
「刃さん、あんな無茶な作り方して大丈夫なんっすか? 体がもたないっすよ!?」
声を掛けてくれたのは俺の直属の部下としてついてくれている
「大丈夫だ。あれは鍛錬も込みの製造なんだ。辛くなくちゃ意味がないだろう」
「なんかいきなりドМになったんすか? その歳で魔人になるなんて珍しいらしいじゃないっすか。しかも、異世界にいた時の記憶があるとか? 本当っすか!?」
バカにしような笑みを浮かべながらそんなこと言う。たしかにいきなりそんなことを言われてもはいそうですかと鵜呑みにできる話ではないと思うけどな。
「本当だよ。さっきの製造方法も実際に異世界へ言ってた時にやっていた製造法だ。あれで魔法にも強いし頑丈な
「へぇぇぇ。じゃあ、これからの製造は全部それですか?」
それができれば苦労しねぇけどな。そんなに体力使ってられないんだわ。
「いや、身体がもたないからな。今は俺の分だけの特注だ」
「そうっすか。武岩総長にせがまれないといいっすね?」
武岩総長に製造をせがまれる場面が目に浮かんで額に汗が噴き出てくる。一本作成するのでもかなり魔力、気力を使うからあまりやりたくないのだが。せがまれた時はしかたがないと思ってあきらめるしかないな。
ジスパーダの基地には食堂があり、自由に食事をとることができるようになっている。食事代がかからないから俺としては助かる。日本の平和を守るべく結成された魔人戦闘部隊は国で唯一無二の組織である。日本全国に支部があるがここは中心部の中央基地だ。
「刃さん、いっつもカツカレーっすね?」
「たまにはラーメンも食うぞ?」
カツとカレーのハーモニーを口の中へと入れ、身体へと活を入れていく。こうでもしないと午後から動けない。
「その二択じゃないっすか! 体に良くないっすよ?」
「俺は実家だから夜はちゃんと野菜出るからいいんだよ」
「自分は朝昼晩、野菜を取るようにしてるんすよ。体つくりの基本っすよ? たんぱく質も摂らないと筋肉が付きませんし、バランスよくビタミンとかもとらないと」
将人は健康オタクみたいなところがあって食事にはうるさいのだ。食堂のおばちゃんにも野菜をもっと多くした方がいいと意見したことがある。予算が決まっているんだと言って怒られていたことを思い出す。
「わかったって。でもよ、美味いんだからしかたないんだよ」
「だからって……」
こういう話になるとコイツは長いから早いことご飯をすませて出て行くのに限るのだ。
午後からは成形する工程に入る。これも午後一杯かけてなんとか今日中に終わらせたい。何故こんなに急いでいるかというと、実は武岩総長が近々、牛鬼を討ちに行くと宣言したのだ。
あの時の佳奈の言葉に感化されたのは俺だけではなかったようだ。このジスパーダのあり方、次々と同士が現れ必ず悪を討つ。それは秀人が佳奈へ語っていたジスパーダのありかたというもの。
気合いを入れ直して熱い工房に籠っての作業を行う。成形の工程に行こうと思ったが、もう少しだけ強度を上げる為に層を厚くする。後一折。これが生死を分けるかもしれない。
熱のこもった工房で汗を大量に流しながら打ちつけていく。これが根気のいる作業なのだ。汗の匂いと鉄の焼ける匂いが充満している。
渾身の力を振り絞り、魔力で身体強化しての作業となった。なんとか引き延ばすことができた為、そのまま成形の工程に入る。刀の形を成していき刃文を付ける工程だ。
焼き入れを行って刃文を付けて行く。研磨の工程で鋭く細く繊細に仕上げる。今回の刃は湾れ
できた刀身を眺めて反射した青い光が俺の目を刺激する。綺麗にできたと思う。魔力が込められているからか仄かに青くなっていた。
「刃さんできたっすか?」
「あぁ。これだ」
できたものを見せると目を細めて斜めにしたり横にしたりしながら見定めている。
「すごいっす。こんなに綺麗な刀身はみたことがないっすねぇ」
「最高傑作だろ?」
「間違いないっす!」
今日までに鞘と柄、鍔などの部分も作ってもらえるようにお願いしているのだ。順々に職人さんの所を回って礼を言いながら刀を完成させた。皆さん口を揃えたのは青い炎をイメージしたという事だった。
全体的に青いイメージの物が多く精悍な刀になった。
銘は『
意味は空の果てに行った友がすぐ隣にいるような厚い友情。
俺と秀人を現す言葉だ。
この刀を持って俺は敵を討つ。