権蔵のヤツ、いよいよ手段を選ばなくなってきたな・・・・・・。
しかし、3連続で権蔵ルート行きなんて通常プレイではまず有り得ないことだ。陰謀論じみた言い回しだが、この世界には、どうしても俺を権蔵ルート送りにしたい何者かの力が働いているのは間違いない。とはいえ、いったいどこの誰が何のためにそんなことを・・・・・・?
だが、俺は絶対に諦めない! 必ずどこかに、ハーレムへと続く突破口が隠されているはずだ!
・・・・・・とりあえず、図書室は駄目だったから、職員室にでも行ってみるか。
***
どこに向かおうか?
・「図書室」
・「職員室」 ←
山本の奴め。今頃血眼になって校舎を探し回っていることだろう。俺が隠れたのは図書室か、トイレか、はたまた保健室かと。
だが、そこで俺はお前の裏をかいてやる。あえての職員室、これだ。まさか教員から逃げようという奴が、自ら職員室に向かってくるなんて夢にも思うまい。
俺は踵を返し、職員室へと向かうことにした。
***
さあ、マズいことになった・・・・・・。
言っておくが、決してうっかり山本と鉢合わせになったとかではない。「山本から逃げる」という一点だけにおいては、俺の計画は完璧のパーペキのパーフェクト・・・・・・のはずだった。
「あ、田中! こんなところで何してんのよ!?」
・・・・・・まさかの委員長と鉢合わせになったことを除けば。
「げっ!? 委員長!?」
「『げっ!?』とは何よ!? 『げっ!?』とは!」
まずいな・・・・・・。「鉄の女すぎてサッチャーも裸足で逃げ出す」と言われるほどの委員長のことだ。間違い無く俺をとっ捕まえて、山本の元へと突き出すつもりに違いない。
「・・・・・・なんか失礼なこと考えてるでしょ?」
ジト目でこちらを見てくる委員長。マズい、思考が・・・・・・読まれている?
「何がマズいのかしら? 言ってみなさい」
委員長の顔が恐ろしくて直視できない。美少女ゲーム補正で血管こそ浮いていないが、このままでは「実績を解放しました:パワハラ会議開催エンド」なんてことになりかねない顔をしている。
いや、まだだ。まだ諦めるな、ケンジ! ついさっき「俺は絶対に諦めない!」とかドヤ顔で言ったばかりじゃないか。まだ委員長が俺をとっ捕まえに来たとは決まっていない・・・・・・はず・・・・・・!
「ちなみに・・・・・・つかぬことをお聞きしますが・・・・・・委員長はいったいどのようなご用件で・・・・・・」
「山本先生にアンタを探すよう言われてきたのよ」
はい、終わりましたー! 4周目! 完!
「そういうわけだから、さっさとお縄につきなさい」
クソ! かくなる上は・・・・・・賄賂で買収するしかねぇ・・・・・・!
しかし、今渡せるようなものなんて・・・・・・
・「河原で拾ったエロ本」
・「いつぞや瀬里奈に押しつけられたBL本」 ←
これしかない・・・・・・! 「世の女子の90割くらいはBL好き」って図書委員の加藤も言っていた(※あくまでも加藤の見解です)。
「委員長・・・・・・? こちらに免じて見逃していただくことは・・・・・・?」
なんとかなれーーーッ!
「何よ、これ・・・・・・? 『田中×佐々木』・・・・・・?」
お、意外と好感触か? 委員長は渡されたBL本を手に取り、その表紙を興味深そうにまじまじと見つめている。このむっつりさんめ。
しかし、次の瞬間。委員長は顔を上げ、呆れたような目線がこちらに向けられた。
「・・・・・・なんでアンタ、
え・・・・・・? そういや、いつだったか瀬里奈に押しつけられたその本だけど、ちゃんと中身を確認したことはなかったな・・・・・・。
でも普通、まさか表紙の「田中」が自分のことを指しているなんて夢にも思わないだろ!?
「それにこのカプなら『佐々木×田中』でしょ?」
何が違うのかまったく分からない・・・・・・。
というか、それよりも。「田中」が俺ってことはもしかして、その「佐々木」って・・・・・・
「ああ、僕もそう思うな。ケンジ」
・・・・・・やっぱりお前かあぁぁぁ!!!
(システムメッセージ:「権蔵ルート」に入りました)
背後から肩に権蔵の手が置かれ、吐息混じりの声が耳元をくすぐる。
「これは、その身体に理解らせてあげる必要があるかな・・・・・・?」
(この続きはこの作品がカテエラになるので割愛させていただく。え? 「もう手遅れだろ」って? まあ、うん・・・・・・)
こうして権蔵にいつの間にやら保健室へと連れ込まれ、俺は理解らされたのだった・・・・・・。俺は受け側であることと、委員長は腐女子だということを・・・・・・。