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第20話 Fランク任務開始

 提示されたFランク任務は3つ。



―――――――――――――――


【Fランク任務“悪夢の悪魔”】


 依頼人:20代女性 職業:主婦


『最近、悪夢ばかりを見るのです。悪魔に食い殺される夢です。おかげで寝起きが最悪……きっと夢魔に惑わされている。お願いです、エクソシスト様。私に悪夢を見せる悪魔を討伐してください』


 受付所感

『低級悪魔の仕業か、もしくは精神的な異常の可能性が高いです。接してみて、悪魔の仕業ではなく精神疾患だと判断出来たら病院に連れて行ってください』



【Fランク任務“図書館の声”】


 依頼人:50代女性 職業:司書


『私が働く図書館でたまに男の人の声が聞こえるのです。「こっちにおいで。こっちにおいで」って。ある日、その声に従っていくと、もう使われていない倉庫の前に着いて、そこまで行って怖くて引き返しました。本棚の本も勝手に入れ替わったりしてるし、本棚ごと入れ替わってることもありました。なにかおかしい。きっと悪魔の仕業。エクソシスト様、なんとかしてくれませんか?』


 受付所感

『本や本棚に取り憑く道具型悪魔の可能性あり。いずれにせよ、怪我人・行方不明者がいないことやおこなっていることがイタズラレベルのため低級悪魔の仕業だと推測できます。現場に行き、悪魔を祓ってください』



【Fランク任務“こんなの俺じゃない”】


 依頼人:20代男性 職業:狩人


『おかしいんだ……俺は真っ当な人間なのに、気づいたら全裸で外を走っていることがある。走り終わると、気持ちがスッキリしていて、妙な高揚感がある。変だ、俺は生まれてからずっと普通に生きてきたザ・普通人間。こんな性癖あるはずがない。きっと悪魔が俺に取り憑いているんだ! 頼む! 俺に憑いた悪魔を祓ってくれ!!』


受付所感

『悪魔に取り憑かれていたらこんな依頼を出せないと思います。病院に連れて行くか、場合によっては騎士団に突き出してください』



―――――――――――――――



 なんか、別にエクソシストじゃなくても出来そうな依頼ばかりだな。


「これしかないのか?」

「はい」

「それなら……この“図書館の声”ってやつにしようかな」


 消去法だ。他2つが色んな意味でめんどくさそうだったからな。どっちみち3つ依頼をこなさないといけないんだから、結局はやる羽目になるんだろうが……。


「わかりました。この依頼は念のため、司祭の同行が必要です」

「司祭と2人で任務をやれってか?」

「はい。同行する司祭は、そうですね……あの子を連れて行ってください」


 マーサが指さしたのは、部屋の隅にいる子たぬきだ。


「フォウゼル司祭!!」


 マーサが大声を出すと、たぬきはビクッと体を震わせ立ち上がった。


「は、はぁい!!」


 と、高めの女子の声がたぬきの口から聞こえた。


「【た、たぬきが喋ってやがる!!?】」

「いや、ロウソクお前が驚くのかよ」


 喋るロウソクが肩に乗ってるせいで、たぬきが喋ってるのに全然驚きがない。


「な、なんでしょうか……マーサ司祭……」


 おどおどと、布団を引きずりながらたぬきは近づいてくる。


「これからこちらの方と任務に行ってください」

「えぇ!? 無理無理! 無理ですよ! だってフォウは、人見知りで~、弱くて~、怠惰で~、なんの役にも立たないんですよ!!」

「いつまでもサボっていられると迷惑です。あなたもエクソシストなのですから、働いてください」

「エクソシスト? このたぬきがか?」


 俺が聞くと、たぬきはムッとして、


「フォウはたぬきじゃありません! れっきとした人間です!」

「フォウゼル司祭の呪神、怪狸カイリは取り憑いた人間に変化の術を授けるのです」

「その能力で、たぬきに化けてるってことか?」


 俺は膝をつき、布団被りのたぬきの頬を鷲掴みにする。

 プニプニとした頬っぺただ。モフッとした毛並み……本物のたぬきにしか思えない。


「むひゃひゃ! やめっ、やめてくださいっ! ――ぽう!」


 フォウは体を駒のように回して俺の手を払う。


「なんでたぬきの姿でいるんだ? 人間の体よりたぬきの体の方が不便だろ」

「そ、その……人間の姿は恥ずかしいので……」


 そっちの方が明らかに恥ずかしいだろうに。

 いや、もしかして……元の姿がめちゃくちゃ不細工だったりするのか? 気になるな……。


「では改めて。エルさん、フォウゼル司祭。あなたたち2人にFランク任務“図書館の声”を解決していただきます。場所は街を出て北にある〈ダスキートン〉という街の図書館です。馬車を利用して向かうことをおすすめします」


 任務を受け、俺は化狸フォウと共に〈ダスキートン〉へ向かった。

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