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第21話 “図書館の声” その1

「ぷーっ! ろwうwそwくwの付喪神ぃ!? 絶対、弱っちいじゃないですかぁ!」


 図書館へ向かう馬車の中。

 俺がティソーナを紹介すると、隣に座っているフォウが笑い転げた。


(もうお決まりの反応だな……)


「【なめんじゃねぇぞ! 俺様が本気を出せばダイヤモンドだって斬れるんだからなぁ!!】」

「ダイヤモンド!」


 フォウはやれやれと肩を竦め、俺の膝に肉球を乗せる。


「まったく、つまらない冗談を言うロウソクちゃんですね」

「冗談じゃねぇさ」

「え?」

「こいつに斬れねぇもんはねぇよ」


 俺が真剣な目で言うと、フォウは顔を真っ青にして席の端っこに身を寄せた。


「ロウソクの付喪神に、妄言癖の術師……これ、フォウが頑張らないといけない案件では!?」


 馬車が止まる。

 俺とフォウは街中にある図書館へ辿り着いた。

 図書館は家とかショップの並ぶ場所にあり、通行人も普通にいる。


 図書館の前には依頼人と思しき女性が立っていた。


「お待ちしておりました。エクソシスト様……あれ? エクソシスト様ですよね?」


 そう思うのも無理はない。

 俺は黒いシャツに緑のズボン。白の上着を腰に巻いているラフな恰好(上着を腰に巻いてるのはベルトに付けたロウソクを隠すため)。


 もう1人は布団を被ったたぬきだ。


「そうだよ。俺が依頼を受けたエクソシストだ」


 正確にはまだだけどな。


「そうですか。失礼しました。私はこの図書館で働く司書です。今日は図書館への入館は禁止にしております。なので、現在図書館の中には誰もいません」


「おお、それは助かる」


「これが図書館の鍵です」


 司書は5つの鍵が掛かった鉄の輪をくれた。

 俺は右肩にティソーナを、左肩にフォウを乗せ、図書館の前に立つ。


「感じるな、霊力」

「あの~、お腹痛くなってきたので帰っていいですか?」

「帰ってもいいけど、マーサ司祭に告げ口するからな」

「うっ! ……いじわる」


 異質な空気を感じる図書館に、足を踏み入れる。



 ◆◆◆



 エルとフォウゼル。2人と入れ違いになるように1人の助祭(非戦闘員)が教団支部のマーサ司祭を訪ねた。


「え!? それは本当ですか!?」


 マーサは助祭の話を聞き、顔に汗を浮かばせる。


「はい。例の図書館を利用した人たちが次々と記憶障害を訴えています。特殊な能力を持つ悪魔……それもかなりの影響力をもった悪魔が潜んでいるかと。Fランクは妥当なランクではありません。Eランク……いや、Dランクに引き上げるべきです」


「そんな……! もう司祭1名と入団希望者を1名、向かわせてしまっています!」


 Dランク任務は司祭2名から受けられる依頼。

 戦闘力の低いフォウゼルと、司祭ですらないエルでは荷が重い、とマーサは判断する。


「私が行きます! 馬車の用意を!」


 焦るマーサのもとへ、1人の男が訪れる。


「お久しぶりです。マーサ司祭」


 男は灰色のロングヘアーで、身長は180cmほど。制服を着ていることからエクソシストだとわかる。


 両耳には、金属の輪に銃弾をぶら下げたピアスが付いてる。


「ロビン大司教!」

「どうしたの? なにかもめ事?」


 彼の名はロビン=アルヴァス。17歳で第七教団所属の大司教となった男だ。


「それが……」


 マーサは“図書館の声”のランク変動についてと、その任務にすでにエルとフォウゼルが向かったことを伝えた。


「Dランクか。フォウの手にはちと余るな……」

「いまから私が救援に向かいます!」

「いいよ、俺が行く。いま暇だし……」


 ロビンの右耳についた弾丸が喋り出す。


「【サッキ、デートスル予定ダッタ女ニフラレタカラナ!!】」


 甲高い少年の声だ。

 右耳の弾丸の発言を受け、今度は左耳の弾丸が喋り出す。


「【別の女の子と付き合っているのがバレて振られたのよね。自業自得よ】」


 右耳の弾丸に比べ、左耳の弾丸は穏やかな女性の声だ。

 彼らは弾丸の付喪神であり、いまは耳のピアスに付いた弾丸に取り憑いている。


 ロビンは痛い所をつかれ、肩を落とした。


「……すみませんロビン大司教。女性に振られたばかりなのに……」


「いや、いいよ。変な気を使わないでくれ……」


「【スッゲー、デブナ女ダッタゼ!】」

「【コラ! デブって言っちゃ可哀そうよ。ロビンはふくよかな女性が好きなのよね】」


 ロビンは頭を掻きながら、出口に向かう。


「100㎏以下の女は抱いた心地がしないのよ。あーあ、エクソシストは細身の女ばっかりで嫌になるぜ」


 ロビン=アルヴァスは見た目も美麗で、女性にモテる。しかし、体重100㎏以下の女性はお断り。

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