目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第31話 エルvsボンペイ

「まったく、血気盛んな奴らだ」


 バケツ教師はやれやれとバケツを掻く。


「いいだろう。第3試合はすぐに始めよう」


 俺とボンペイは向かい合って立つ。

 俺はロウソクを前に出し、ティソーナを憑かせる。


「憑神!」


 ロウソクにティソーナを憑かせると、ボンペイがほんのすこし、戸惑った表情をした。


「ロウソク? それが武器になりえるのか?」


 馬鹿にした口調ではない、本気で不思議がっている感じだ。

 今までの連中みたいに油断してくれればやりやすかったのにな。むしろ、妙な武器を前にして警戒を強めてやがる。


 ギャラリーがざわつき始めた。

 第1試合の時より、ギャラリーの数が倍くらいになってる気がする。


「双方準備はいいか?」


「はい」

「もちろん」


「では……試合開始ッ!!」


 ボンペイは一歩で、俺との間合いを3メートルまで詰めた。


(速い!?)


 右拳が突き出される。

 俺はロウソクから炎の刃を出し、ボンペイの右の拳に合わせにいく――


「ぶはっ!」


 気づいたら、に腹を殴られていた。


(確実に右できてた……! 俺の動きを見て後出しで拳を変えやがった!! なんて反射神経ッ!!)


 数メートル殴り飛ばされ、地面に靴底を擦りながら着地する。

 着地の隙をつこうとボンペイが迫る。


「ちぃ!!」


 俺は炎の刃を横に振るう。

 ボンペイは右腕を上げ、刃を受けようとする。


 炎の刃が、ボンペイの右腕に当たった。と思ったら、ボンペイは大きく後退していた。



「なんて切れ味だ……!!」 



 ボンペイは焦った顔をしていた。ボンペイの右腕には浅いが切り傷ができており、血が滴っている。


(あの野郎……! 剣が腕に食いこんだ瞬間に下がりやがった)


 自分の霊力防御に自信があったんだろうな。ティソーナの刃に防御が突破されて、少なからず動揺している。間合いを慎重に測ってやがる。


 スピードは完全に俺が負けている。

 だけど、俺の攻撃力がやつの防御力に勝っていることはわかった。


「ティソーナ、モード“爆弾(ダイナマイト)”」


 1本のロウソクをボンペイに向かって投げる。


「――ッ!?」


 ロウソクは爆裂し、大きな土煙を上げる。


「決まったか!」


 とギャラリーの1人が言うが、残念、この程度の威力じゃ直撃したとしてもあいつは倒れないだろう。

 俺はロウソクを2本出し、1本を土煙舞う地面に転がし、1本を構えてティソーナを憑かせる。


「【来るぜ!】」

「わかってる!」


 煙の中から飛び出してくるボンペイ、俺の顔面目掛けて拳を飛ばしてくる。

 俺は拳を躱し、突きを返す。ボンペイは膝を折り、屈んで刃を回避、足払いを仕掛けてくる。俺はジャンプして足払いを避け、上から刃を振り下ろしながら着地。ボンペイはバックステップで振り下ろしを避けた。


 それから2、3度剣と拳のやり取りをし、状況を打開するため俺がロウソクを振り上げ炎刃を振るう。ボンペイはバク転でそれを躱した。


(いまだ)


 俺は手元のロウソクからさっき転がしたロウソクにティソーナを移動させる。

 ボンペイが着地したところで、地面を転がっていたロウソクから炎の刃が飛び出し、ボンペイの左肩を掠めた。


「【左肩ぶっさすつもりだったのによぉ!】」

(ギリギリで勘づかれたか!)


「小癪なっ……! マネを!!」


 ボンペイはロウソクを俺に向かって蹴り飛ばす。


「ぬおっ!」


 俺の腹にロウソクが激突する。ロウソクにも霊力が込められており、深く俺の腹にめり込んだ。しかもロウソクの芯のある方からだ。ティソーナがあともうちょい火を消すのが遅かったら串刺しになってた。


「かはっ!」


 胃の中のモンを吐き出しかけたぜ。


(一瞬の接触でこれだけの霊力を込められるのか……!)


「呪神、式神、付喪神。僕はこれまで、3種の中で付喪神が一番弱く、扱いづらいものだと認識していた。だが、改めなければな。付喪神の強みはこの柔軟な動きか」


「……久しぶりに、剣闘士時代あの頃のことを思い出したぜ」


 互いに、理解しただろう。


――こいつは、本気でやらなきゃ倒せない。


 互いの霊力が溢れ出す。


「――っ!!」

「――ッ!!」


 霊力同士がぶつかり合い、ゴゴゴッ! と空気が震える。

 俺とボンペイは同時に、地面を蹴った。


――本気の戦いが始まる。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?