エクソシストは守護神を使役し、戦う者。そう習った。
実際、守護神がいないと悪魔と戦うのは困難だ。守護神なしじゃいまだにサムライ悪魔にすら勝てないだろう。
この試験はエクソシストになるためのもの。
この場に守護神を持ってこないなんてありえないことだ。
「……舐めんなよ」
相手の受験生、ティラノがそう言うのも無理ない。
「エクソシストになるための試験で、守護神を持ってこないなんざ神経を疑うぜ」
「それはこちらの台詞だ」
ボンペイは一切
「守護神なんて
まじかあいつ……。
「ひゅー! お前とは別ベクトルで面白い野郎が出てきたな」
「よりにもよって、この場であれを言うか? 空気が10倍ぐらい重くなったぜ」
取り囲む試験官たち、教団関係者の顔が曇った。
「……こりゃ、生半可な勝ち方じゃ合格できねぇな」
ロビンは楽しそうだ。
「ザウルス!!」
ティラノが叫ぶと、彼の頭上にトカゲ人間の守護神が現れる。
「リザートマンだな」
「形的に呪神か」
守護神ザウルスはティラノに取り憑く――
「憑神ッ!」
ギャラリーにいても感じるほどの、霊力。
ティラノは牙を生やし、瞳は爬虫類の瞳、尻からは長い尾が生える。さらに全身を硬そうな鱗で覆った。
相当な実力者だ、見るだけでわかる。ヴィッツより格段に能力は上だな。
「リタイアするなら今の内だぜ、ボンペイ!!」
「……それもこちらの台詞だ」
ボンペイは全身から霊力を溢れさせた。
――圧倒的だった。
守護神を連れていないにも関わらず、やつの霊力はティラノの3倍近く膨らんだ。
「あ、あぁ……!?」
ティラノは膝を震わせる。
ボンペイは武器を持たず構える。構えからして、やつは武闘家だ。
会場中がボンペイの霊力に吞まれていく。
「僕は神にも悪魔にも頼らない。人の力で、
憎しみに満ちた瞳、憎しみに満ちた霊力。
あまりの気迫に、俺は腰についたロウソクを握ってしまった。
「双方準備はいいか?」
バケツ教師が問う。
「はやくはじめてください」
ボンペイは催促する。一方、ティラノは……、
「……ちょ、ちょっと待て!!」
ティラノは憑依を解き、右手を挙げた。
「ギブアップ……」
賢明な判断だ。
両者の実力差は明らかだったからな。
「どうするんだこれ。まともに実力を見れなかったぞ」
「そうだなぁ」
大人たちが集まり、会議している。
5分経ち、
ようやく結論が出たようだ。代表して、バケツ教師が喋る。
「第1試合、第2試合、どちらも対戦相手との実力差が離れていたため、受験生の能力を測ることができませんでした! なので、実力が拮抗するように組み合わせを変えて再試合を
ん? ってことはもしかして……、
「第3試合、エルvsボンペイ! 第4試合、ヴィッツvsティラノを
なるほど、好都合だ。
あいつとは戦ってみたいと思っていた。
「第3試合は20分後――」
「そんなに待てるかよ!」
俺はギャラリーから岩板へ飛び降りる。
ボンペイも、反対側から上がってきた。
「やろーぜ。いますぐ」
「……望むところだ」