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第30話 第二試合

 エクソシストは守護神を使役し、戦う者。そう習った。

 実際、守護神がいないと悪魔と戦うのは困難だ。守護神なしじゃいまだにサムライ悪魔にすら勝てないだろう。

 この試験はエクソシストになるためのもの。

 この場に守護神を持ってこないなんてありえないことだ。


「……舐めんなよ」


 相手の受験生、ティラノがそう言うのも無理ない。


「エクソシストになるための試験で、守護神を持ってこないなんざ神経を疑うぜ」

「それはこちらの台詞だ」


 ボンペイは一切退かない。


「守護神なんてかたっているが、元は悪魔だろう。退魔士をこころざす者が、元悪魔の力を借りるなんて――神経を疑うな」


 まじかあいつ……。


「ひゅー! お前とは別ベクトルで面白い野郎が出てきたな」

「よりにもよって、この場であれを言うか? 空気が10倍ぐらい重くなったぜ」


 取り囲む試験官たち、教団関係者の顔が曇った。


「……こりゃ、生半可な勝ち方じゃ合格できねぇな」


 ロビンは楽しそうだ。


「ザウルス!!」


 ティラノが叫ぶと、彼の頭上にトカゲ人間の守護神が現れる。


「リザートマンだな」

「形的に呪神か」


 守護神ザウルスはティラノに取り憑く――


「憑神ッ!」


 ギャラリーにいても感じるほどの、霊力。

 ティラノは牙を生やし、瞳は爬虫類の瞳、尻からは長い尾が生える。さらに全身を硬そうな鱗で覆った。


 相当な実力者だ、見るだけでわかる。ヴィッツより格段に能力は上だな。


「リタイアするなら今の内だぜ、ボンペイ!!」

「……それもこちらの台詞だ」


 ボンペイは全身から霊力を溢れさせた。



――圧倒的だった。



 守護神を連れていないにも関わらず、やつの霊力はティラノの3倍近く膨らんだ。


「あ、あぁ……!?」


 ティラノは膝を震わせる。

 ボンペイは武器を持たず構える。構えからして、やつは武闘家だ。

 会場中がボンペイの霊力に吞まれていく。


「僕は神にも悪魔にも頼らない。人の力で、悪魔やつらを滅ぼす……!」


 憎しみに満ちた瞳、憎しみに満ちた霊力。

 あまりの気迫に、俺は腰についたロウソクを握ってしまった。


「双方準備はいいか?」


 バケツ教師が問う。


「はやくはじめてください」


 ボンペイは催促する。一方、ティラノは……、


「……ちょ、ちょっと待て!!」


 ティラノは憑依を解き、右手を挙げた。


「ギブアップ……」


 賢明な判断だ。

 両者の実力差は明らかだったからな。


「どうするんだこれ。まともに実力を見れなかったぞ」

「そうだなぁ」


 大人たちが集まり、会議している。

 5分経ち、

 ようやく結論が出たようだ。代表して、バケツ教師が喋る。


「第1試合、第2試合、どちらも対戦相手との実力差が離れていたため、受験生の能力を測ることができませんでした! なので、実力が拮抗するように組み合わせを変えて再試合をおこないます!」


 ん? ってことはもしかして……、


「第3試合、エルvsボンペイ! 第4試合、ヴィッツvsティラノをおこなう! ちなみに、エルとボンペイに関してはすでに合格は決定しているが、今後の任務の割り振りなどの関係もあるため、実力を正確に測りたい。悪いが付き合ってもらう」


 なるほど、好都合だ。

 あいつとは戦ってみたいと思っていた。


「第3試合は20分後――」

「そんなに待てるかよ!」


 俺はギャラリーから岩板へ飛び降りる。

 ボンペイも、反対側から上がってきた。


「やろーぜ。いますぐ」


「……望むところだ」

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