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第29話 七つの教団

「おつかれ」


 試験を終えた俺は梯子でギャラリーに上がった。

 すると、ロビンがカップにコーヒーを入れて待っていた。


 俺はカップを受け取り、ロビンの横に立つ。


「これで無事エクソシストになれたな」

「どうかな。勝ったからと言って、合格とは限らないってあのバケツ教師は言ってたぜ」

「いいや、あんな芸当見せられて合格にしないわけねぇさ」


 ロビン曰く、心配はいらないとのこと。とりあえず一安心だな。

 第2試合はあと10分後に始まる。

 別に見る必要はないが、あの紺髪のやつの実力が気になる。


「そうそう、お前、入団希望書まだ書いてないだろ?」

「なんだそりゃ」

「教団には一から七までの派閥があってな、どこに入団したいか入団希望書に書けば、ある程度希望を聞いてもらえるんだよ」


 ロビンはポケットからしわくちゃになった入団希望書を渡してきた。

 見ると、それぞれの教団の説明と、第一希望から第三希望まで書ける欄があった。



―――――――――――――――



【第一教団】

 最強の教団。最も人数が多く、前線に出ることが多い。付喪神使い、呪神使い、式神使いがバランスよく所属している。教皇直属の教団。


【第二教団】

 シャルブック大聖教を取りしきっている。神を信じ、神に身を捧げることを良しとしている。その性格上、式神使いと付喪神使いは少なく、神に身を貸す(というていで使えるため)呪神を好む。


【第三教団】

 シャルブック聖教学校を取りしきっている。将来エクソシストを教育したい者に勧められる。聖教学校にいる教師の9割が第三教団の者である。どんな生徒にも対応できるよう、付喪神使い、呪神使い、式神使いがバランスよく所属している。 


【第四教団】

 唯一、味方への審問を許可されている教団。裏切り者の炙り出しなど、身内調査をする。エクソシストに対する法や罰を決め、教皇に報告する(罪や罰に許可を出すのは教皇の役目)。拷問器具に取り憑ける付喪神を特に好み、ゆえに付喪神使いが多い。


【第五教団】

 悪魔の生態や守護神の仕組みを解明する研究者が集う教団。エクソシストではない助祭も多く参加しており、エクソシストの武器などの開発もする。シャルブック教団の頭脳である。戦闘力のあるエクソシストはまず派遣されず、最弱の教団と呼ばれることもある。研究を手伝わせることができるため、式神使いが好まれる。


【第六教団】

 エクソシストの治療を担当する教団。付喪神、呪神、式神問わず、回復能力のある守護神使いを好む。


【第七教団】

 おさである枢機卿が常に行方不明(迷子)でいないため、まとまりがなく、方向性が定まっていない。他の教団の要請を受け、出動することが多い。傭兵の教団と言われている。自由主義ゆえに守護神の傾向も偏ってない。枢機卿が変わる前は隠密活動を担当していたが今は見る影もなく、隠密活動は第一教団や第四教団に押し付け……引き継がれている。



―――――――――――――――



 とりあえず、教団の説明文に一通り目を通した。


「ちなみに、俺やハーツ枢機卿が所属しているのが第七教団だ」

「じゃあ第一希望は第七教団で決まりだな」

「ほれ、ペン」


 ロビンよりボールペンを受け取る。

 迷いどころは第二希望と第三希望。第一希望が通るとは限らないのだから、慎重に決めたいな。

 大聖教をしきる第二教団、研究者が集う第五教団、医療担当の第六教団は性に合わなそうだ。


 うーん、第二希望は第一教団かな。バリバリ前線に出れるみたいだし、教皇にも近そうだ。

 人にモノ教えるのは苦手だから、第三希望は第四教団にするか。


「あー……エル。あまり、こういうのは口出しするべきじゃないんだけどよ」


 入団希望書を覗き見たロビンが口を挟んでくる。


「第四教団はやめておけ」


 なんで? と聞こうとしたところで、


「時間だ。第2試合を始めるぞ」


 バケツ教師の声が響いた。

 俺はとりあえず言うとおりに第三希望を第四教団から第三教団へ変え、ロビンに渡した。

 バンダナ男と紺髪の男が岩板の上に立つ。


「紺髪の奴がボンぺイ、バンダナ男がティラノだったかな」


 ロビンの言葉で2人の名前を知る。

 あいつ、ボンペイって言うのか。変な名前だな。


「まず決闘を始める前に、守護神を披露しろ」


 バケツ教師が言うと、ボンペイは右手を挙げた。



「申し訳ございません。僕は、守護神を持っていません」



 ボンペイはハッキリとそう言った。堂々と、胸を張って。

 場が騒然とした。

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