食事処を出て、そのまま
夕方近くにやっと帰ってきた
「伯父上、戻りました」
「奉納祭のお礼を直接お伝えしたくて、公子様に頼んで連れて来てもらいました。あの時は助けてくださり、本当にありがとうございました」
「いや、礼には及びません。むしろ、こちらの方が礼を言いたいほどです。玄武の宝玉は浄化され光を取り戻しました。なにより、今まで見たどんな舞よりも実に見事な舞でした」
六十代くらいの宗主は目じりの笑い皺が特徴的で、威厳があるがとても優しい眼差しをしており、瞳の色は
「今日は
「俺の方こそ助けてもらってばかりなのに、なにもお返しできてなくて。今日もそのお礼のはずだったのに、良く考えたら自分が一番楽しんでいたような気も····、」
あはは····と苦笑し、
「とんでもない。友のひとりもいない子で、誰かと出かけるなど今まで考えられない事でしたので。よほどあなたが気に入ったのでしょう」
「それは俺も似たようなものです」
正直、友と呼べる者はいない。
「先ほどまで
「父上が?」
そうえいば、昨日の夜に
「歴代の
「あの時宗主や公子様が発言してくださらなかったら、奉納祭は成功していなかったと思います」
謙遜する宗主にふるふると首を振って
「
叶わないことだと知っていたが、
邸の外まで
「そうだ。俺に掛けてくれた衣なんだけど、明日見送りに行く時に返すね。持って来ようと思ったんだけど、まだ乾いていなかったから」
「別に、持っていてくれてかわまない」
「じゃあ、次に逢う時に返すね」
いつものように人懐こい笑みを浮かべて見上げると、その頬に
「君を、見つけられてよかった」
その言葉の真意はわからなかった。けれどもどこまでも優しい眼で見つめられ、なんだか寂しい気持ちになった。夕暮れ色に染まった空が余計にそう思わせる。
「また一緒に遊べるといいねっ」
そんな気持ちを振り払うように、
絶対に、また、一緒に。
そう誓って、