「ちょ····っ!? あの馬鹿! なにを考えてるんだ!」
「
「ぎゃーーーなにしてるんですかっ!!」
「嘘だろ····、ま、待った! さすがに無理!」
無理と言いつつも、落ちてくるものをなんとか受け止めるために手を広げ、顔を上にしたまま慌てて後ろへ前へと足を右往左往させて叫ぶ。
「あ、あぶな·····うぐっ!? 」
強い衝撃で一瞬目の前が真っ暗になり、そのまま後ろによろめき大きく尻もちをついて座り込むと同時に、首に抱きついているその重さとぬくもりに安堵する。
「いてて······お前、空から落ちてくるとか······馬鹿なのか」
「へへ。
「ただいま、じゃない! 何回攫われたら気が済むんだっ! っていうか、これから助けに行くって時に自力で戻ってくるなっ」
「こちらも大変だったんですよ! 恐ろしい
ふたりの横で
「遠くから見えた村の様子を見て不安になったよ。ふたりとも、怪我はしてない?」
「お前こそよく無事に戻れたな。ああ、まあそうだよな、
抱きついたまま離れない
横にあるはずの顔を見ることができない。今、自分はどんな顔をしているのだろう。春の匂いの残る風が舞い、葉っぱが浮き上がった快晴の空を見上げたまま顔を歪める。
(ほら、言ってるそばからやってきたぞ)
視線の先にもうひとつの影が慌てて地面に降りてきた。まさかあの高さから飛び降りるとは思いもよらなかったのだろう。
「治ってる」
「うん、傷跡もない。こんなことができるなんて、いったいどんな方法で?」
ふたりは首を傾げて、確かに破けている衣と血の痕をまじまじと観察していた。その追及をかわすように、
「······戻りました」
「うーん。負傷した弟を兄が華麗に助けるという妄想をしていたのに、まったくもって残念だよ、」
大扇を開きぱたぱたと風を起こして、
「首謀者かどうかは不明ですが、妖獣を操っていた者に遭遇しました。狙いは玄武の宝玉と言っていましたが定かではないかと、」
右の袖から宝玉が入った銀色の糸で刺繍が施された白い袋を取り出し、
「定かではないというと?」
実のところ、
「今は、勘としか。ただ、操っていた者は黒い衣を纏い顔を隠していましたが、おそらく、」
「ああ、それは間違いないだろうね。今生で奴らの所業を目にすることになるとは」
ふたりは同じ名を頭の中で呟く。妖獣を操っていた時点で、それは確定していた。五大一族の術士たちはそのような能力はなく、あれは邪道もしくは鬼道とされている呪術。この国の誰もその手の呪法を良しとしていない。
「邸に着いたら各一族に知らせを送る。父上も懸念していた。これが狙われたということは、他の宝玉も危険だろう。簡単に奴らの手に渡るとも思えないが、問題はそれを何に使うつもりなのか、だ」
その先の目的を知る必要がある。
「負った傷は問題ないようだし、無事に戻ってなによりだ」
「はい。心配をおかけしました」
「邸に戻り次第、玄武堂に宝玉を封印する。ふたりとも、ゆっくり休む間もないが尽力してくれ」
ふたりは頷き、同意する。封印すれば簡単には手を出せないだろう。
張り詰めた空気の中、離れた所で