「オラオラオラァッ! 道を開けろってんだよ!」
覚醒したばかりの夏目 莉緒さんのアバター――金色の特攻服を
その勢いは凄まじく、マインドワームの影響下にある若者たちを、まるでボーリングのピンみたいに弾き飛ばしていく。両手の鋭い爪が、邪魔するものを容赦なく引き裂く。
「すっげぇパワー……!」
大輝が思わず声を上げる。僕も同感だ。荒削りだけど、その一撃一撃の威力は、大輝のアバターにも引けを取らないかもしれない。
「援護するぞ!」
僕たちは、莉緒さんの切り開いた道を追うように、後に続いた。大輝のアバターが莉緒さんと共に前線で暴れ回り敵の数を減らしていく。
僕のアバターは中距離から光線銃で的確に敵を射抜き、戦況を分析。そして、一葉さんのアバターは、回復と補助の光で僕たちを支援しつつ、操られている若者たちに浄化の力を注ぎ、彼らの精神的な負荷を和らげていく。
僕らの勢いに、儀式を主導していたフードの人物は、明らかに焦りの色を見せ始めた。
『チッ……使えん
彼はそう吐き捨てると、自ら一歩前へ踏み出し、禍々《まがまが》しいオーラを立ち上らせた。アバターを起動するわけではない。だが、その全身から放たれるプレッシャーは、先ほどの中ボス(相良先輩の影)以上かもしれない。
『
マインド・イーター……! やはり、こいつが……!
リーダー格の男は、両手を広げると不気味な詠唱を始めた。すると、廃工場の床に描かれていた魔法陣のような模様が赤黒く光り出し、僕たちの足元から無数の黒い手が伸びてきて、動きを封じようとしてくる!
「うわっ!?」
「くっ、捕まる……!」
同時に、頭の中に直接、不安や恐怖を
『さあ、絶望に染まるがいい。そして、我々の
リーダー格の男が高笑いする。まずい、このままでは……!
「……んなモンで、ウチがビビると思ってんじゃねーぞ!!」
その時、莉緒さんのアバターが、金色のオーラを爆発させた! 気合、としか言いようのない力で、足元の黒い手を弾き飛ばし、精神攻撃のノイズも
「ダチを助けに来たんだ! テメェみたいな陰気くせーヤツに、邪魔させるかよ!」
彼女は、一直線にリーダー格の男へと突進する!
「莉緒さん、無茶だ!」
一葉さんが叫ぶ。確かに、一人で突っ込むのは危険すぎる。
「援護する!」
僕と大輝も、拘束を振り払い、莉緒さんに続こうとする。
リーダー格の男は、莉緒さんの突撃を
「させません!」
一葉さんのアバターが放った聖なる光の盾が、エネルギーの槍をギリギリで防いだ!
「ナイス、一葉!」
その一瞬の隙を、莉緒さんは見逃さなかった。
「食らいやがれぇぇぇっ!!」
友情と、祖母への想い……彼女の大切なものを守るという強い意志が込められた拳が、リーダー格の男の
『ぐ……あ……!? ば、馬鹿な……この私が……!』
リーダー格の男は、信じられないという表情で莉緒さんを見つめ、そのまま力なく崩れ落ちた。同時に、祭壇の禍々しい光が消え、詠唱の声も止み、廃工場全体を覆っていた異様な気配が、急速に薄れていく。
儀式は……阻止できたんだ!
操られていた若者たちも呪縛から解放されたように、次々とその場に倒れ込み、意識を失っていく。莉緒さんは、すぐに親友のマキさんの元へ駆け寄った。
「マキ! しっかりしろ、マキ!」
マキさんは、まだ意識は戻らないものの、苦しげな表情は消え、穏やかな寝息を立てていた。
「……よかった……」
莉緒さんの目から、
「やったな、夏目!」
「ええ、本当に……!」
僕らが勝利を喜び合った、その時だった。
『……これで、終わりだと思うなよ……愚かな子供たちが……』
倒れていたはずのリーダー格の男が、最後の力を振り絞るように、呪いの言葉を吐きかけた。
『計画は……止まらない……。
そう言い残すと、彼の
後には、不気味な静けさと、まだ完全には消え去らない脅威の予感だけが残されていた。