あの廃工場での激しい戦いから数日。
僕たち四人は、あの後、意識を失った若者たちのことを匿名で通報し、すぐに現場を離脱した。
後日、ニュースで彼らが無事保護されたことを知り、ひとまずは胸を撫で下ろした。特に、夏目 莉緒さんの親友のマキさんは、幸いにも後遺症などもなく、今は自宅で療養しているらしい。
儀式やアバターの記憶は、ショックで
今日の放課後、僕は校門の前で莉緒さんに呼び止められた。彼女は少し照れたような、でも真っ直ぐな目で僕を見て言った。
「……この前は、その……悪かったな、いろいろと」
「え?」
「だから! 助けてもらった礼だよ! マキのこと……マジで、サンキュ」
ぶっきらぼうだけど、心のこもった感謝の言葉。なんだか嬉しくなって、自然と笑顔になった。
「ううん、夏目さんが頑張ったからだよ。すごかった、あの時のアバター」
「……っ! ば、バーカ! 当たり前だろ!」
彼女は顔を赤くしてそっぽを向く。やっぱり、褒められるのは苦手らしい。
「マキ、昨日お見舞い行ったらさ、だいぶ元気になってた。ウチのこと、心配してくれて……。
「そっか……よかった」
彼女の心からの
僕たちは、帰り道すがら、少しだけ話をした。彼女がどうしてあんなに友達思いなのか、とか、おばあさんのことをすごく大切にしている理由とか。
「ウチ、昔、
普段の彼女からは想像もつかないような真剣な表情。見た目は派手なギャルだけど、彼女の芯には、すごく強くて、温かいものがあるんだな、と思った。そういうギャップが、なんだかすごく……魅力的だ。
「……そっか。夏目さんって、強いんだな」
「はあ? なに急に……キモいんだけど」
「あはは、ごめん。でも、本当のことだよ」
僕が笑うと、彼女も「……まあ、否定はしねーけど?」と、少しだけ得意げに鼻を鳴らした。
「……だからさ」と彼女は続ける。「あんたたちにも、借りは返す。この前のリーダー格みたいなヤツ、まだいるんだろ? マインド……なんとかって」
「マインド・イーター……」
「そう、そいつら! ウチのダチやばーちゃんに手ぇ出すようなヤツらは、このウチが許さねぇ! だから、また何かあったら、ウチにも声かけろよな! 絶対、ぶっ飛ばしてやっから!」
彼女は、自分の拳を固めて力強く宣言した。その姿は、まさに覚醒したてのアバターのように、頼もしかった。
その週末、僕たち四人は、正式にチーム「アーク」として、アジトである旧社務所に集まった。莉緒さんも、もうすっかり馴染んでいる。
「改めて、よろしくな、莉緒!」
「はい、よろしくお願いします、夏目さん」
「……うぃーす。ま、足手まといにだけはなんないように、頑張ってやんよ」
莉緒さんは、照れ隠しなのか、わざとぶっきらぼうに答える。
僕らは、今回の廃工場事件を振り返り、マインド・イーターという組織の存在と、彼らがマインドワームを使って計画的に精神汚染を広げようとしている事実を再確認した。
「前のリーダー格のヤツ、消える前に言ってたよな。『計画は止まらない』って」
大輝が、険しい表情で言う。
「ええ。おそらく、
一葉さんの分析も、それを裏付けていた。
「情報収集をもっと強化しないと……。それに、僕らの連携も、もっと高めていかないとだな」
僕が言うと、みんなが頷く。
《そうだねー。それに、もう少し仲間を増やした方がいいかもよ?》
ノアが、いつもの軽い口調で、でも重要なことを言った。
《今回の件で、たぶん《《マインド・イーター》》もキミたちの存在に気づいたはずだ。これから、もっとヤバいのが出てくるかもしれないからね》
ノアの言葉に、僕らは息を呑んだ。マインド・イーターに、僕らの存在が……?
生徒会長の結城 誠。彼の周りで
僕らの戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。四人になったチーム「アーク」。僕らは、互いの顔を見つめ、決意を新たにする。この街を、そして大切な人たちを守るために。