夕陽が差し込む歪んだ生徒会室。僕たち四人のアバターは、結城 誠先輩……いや、彼に取り憑いた禍々しい影、「シャドウ・プレジデント」とでも呼ぶべき存在と対峙していた。
その全身から放たれる冷徹なプレッシャーは、これまでのどの敵とも比較にならない。
『無駄な抵抗はやめたまえ。私の理想の実現のため、君たちには消えてもらう』
シャドウ・プレジデントは、感情のない声で告げると、その手をかざした。途端、僕らの足元に、まるで校則でも書き連ねたような、無数の光の鎖が出現し、動きを封じようとしてくる!
「うわっ!?」
「こいつ、動きを止めてくる気か!」
「させるかよっ!」
大輝と莉緒さんのアバターが、そのパワーで光の鎖を強引に引きちぎる! 同時に、僕と一葉さんのアバターが後方から援護攻撃を放った。
「ナイス、二人とも!」
「よし、行くぜ!」
大輝と莉緒さんのアバターが、再び前線へと飛び出す。炎の拳と、金色の爪が、シャドウ・プレジデントへと襲いかかる! しかし――
『甘い』
シャドウ・プレジデントは、最小限の動きで二人の猛攻を
「ぐっ……!」
「きゃっ!」
二人が同時に吹き飛ばされる。なんて強さ、そして正確さだ……!
「桐生君! 莉緒さん!」
一葉さんのアバターが、すぐに二人の元へ駆け寄り、回復の光で傷を癒やす。
《悠人、気をつけて! あいつ、ただ強いだけじゃない! こっちの行動パターン、完全に読んできてる!》
ノアの警告が響く。完璧な計算に基づいた攻撃……それが、誠先輩の……いや、彼を操る『意志』の戦い方なのか?
「だったら、予測できない動きで撹乱するしかない!」
僕は指示を出す。大輝と莉緒さんは頷くと、再び立ち上がり、今度は左右から揺さぶりをかけるように動き始めた。
僕もアバターの光線銃で、予測しにくい角度から援護射撃を行う。一葉さんは、回復だけでなく、浄化の光でシャドウ・プレジデントの精神に干渉し、集中力を
『……
シャドウ・プレジデントは、眉一つ動かさずに、僕らの攻撃に対応してくる。その完璧な防御と反撃に、僕らはじわじわと追い詰められていく。
(こいつ、本当に隙がないのか……?)
焦りが募る。その時だった。
《くだらない……こんなこと……何の意味がある……?》
シャドウ・プレジデントの口から、苦しげな声が漏れた。それは、結城先輩自身の声……?
《完璧でなければ……この街を、僕が……導かなければ……でも……》
一瞬、シャドウ・プレジデントの動きが乱れた! 彼の中で、結城先輩自身の心が、まだ抵抗しているんだ!
「今だ!」
僕らは、その一瞬の隙を見逃さなかった。
「先輩! 目ぇ覚ませよ!」
大輝の炎が、シャドウ・プレジデントのガードをこじ開ける!
「あんたのダチも、先輩も、みんな心配してんだぞ!」
莉緒さんの爪が、その装甲に深い傷を刻む!
「会長! あなたの本当の心は、そんな歪んだ支配を望んでいないはずです!」
一葉さんの祈りの光が、彼の精神の核へと届こうとする! そして、僕は――!
「結城先輩! あなたが本当に作りたいのは、そんな冷たい世界じゃないはずだ!」
アバターの光の剣に、僕ら四人の想いを乗せて、シャドウ・プレジデントのコア……彼の歪んだ理想の象徴である、胸のエンブレムへと突き立てた!
『ぐ……ああああああーーーーっ!!』
シャドウ・プレジデントが、初めて
やったか!? 僕らがそう思った瞬間。
『……まだだ……まだ、終わらせん……!』
シャドウ・プレジデントは、最後の力を振り絞るように、歪んだ空間全体をさらに捻じ曲げ始めた! 生徒会室の壁や床が砕け散り、僕らは強烈なエネルギーの奔流に飲み込まれそうになる!
《まずい! このままじゃ、彼の精神そのものが崩壊しちゃう!》
ノアの悲鳴に近い声。
(こうなったら……!)
僕には、もう一つの手段があった。彼の『心の
「ノア、やるぞ! 彼の心の中にダイブする!」
《……! 分かった! 全力でサポートする!》
僕は、大輝と一葉さん、莉緒さんに目配せする。
「ここは任せた!」
「おう!」
「気を付けて!」
「さっさとケリつけてこいよ!」
三人の声援を背に受け、僕はスマホを構え、『