あの冷徹な番人を倒し、僕たち四人の前には、さらに奥へと続く道が開かれた。
一歩足を踏み入れると、これまでの無機質な通路とは明らかに違う、粘つくような、それでいて凍えるような、異様な精神エネルギーが渦巻いているのを感じる。
壁には、
「……ひどい……。ここは……まるで……」
一葉さんが、顔を
「ああ……マインド・イーターに精神を破壊された人たちの……
僕も、胸が悪くなるような感覚を覚えながら呟いた。こいつらは、人の心を
「……ぜってぇ許さねぇ……!」
大輝が、怒りに拳を震わせる。莉緒さんも、固く唇を結び、鋭い眼光で前を見据えていた。僕らの怒りと決意は、この異様な空間を進む原動力となった。
いくつかの精神的なトラップや、より強力になった「心の影」たちを連携で突破し、僕たちはついに、この地下施設の最深部と思われる、巨大なドーム状の空間へとたどり着いた。
そこは、まるで巨大なコンピューターの内部のようだった。壁面には複雑な光の回路が走り、中央には天へと伸びる巨大な塔のような装置がそびえ立っている。
その装置からは無数のケーブルが伸び、
そして、その塔の
年の頃は……分からない。若者のようにも老人のようにも見える。穏やかな笑みを浮かべているが、その瞳の奥には、底知れないほどの深い闇と、絶対的な支配者のような冷たい光が宿っていた。彼こそが、この計画を主導する、マインド・イーターの指導者……!
『……よくぞ来た、
彼は、僕たちを
『最後の障害が、君たちというわけか。まあ、いい。私の理想とする新世界の誕生を、特等席で見せてあげよう』
「新世界……だと?」僕が問い返す。「人の心を操り、支配するような世界が、理想だっていうのか!?」
『『操る』のではない。『導く』のだよ』彼は、穏やかに首を振る。『感情という名の病から解放し、完全なる理性と秩序の下で、人類は初めて真の調和と幸福を得る。私は、そのための導き手……いわば、新たな時代の
その歪んだ思想、独善的な正義感……! こいつは、結城先輩に影響を与えていた『意志』そのもの、あるいは、それを使役する存在なのかもしれない!
「ふざけるな! そんなの、ただ心が死んでるだけだ!」
莉緒さんが、怒りを込めて叫ぶ。
「そうだ! 嬉しいとか、悲しいとか、ムカつくとか! そういうのが全部あって、人間なんだろうが!」
大輝も続く。
「あなたのやっていることは、ただの破壊です! 人の尊厳を踏みにじる、許されない行いです!」
一葉さんも、強い口調で非難する。僕らの言葉に、指導者は、初めて表情を変えた。それは、
『……やはり、君たちには理解できないようだね。
彼は、ゆっくりと玉座から立ち上がった。途端、空間全体のプレッシャーが、さらに増大する!
『ならば、言葉は不要だ。その愚かな感情ごと、ここで消え去るがいい。新たな世界の礎となるがいい!』
指導者の身体から、黒いオーラが溢れ出し、それは禍々しいアバターの姿へと変わっていく! その姿は……結城先輩が纏っていたものよりも、さらに巨大で、複雑で、そして絶望的なまでに強力な気配を放っていた。これが、マインド・イーターの指導者の……!
僕たち四人は、互いに視線を交わし、頷き合う。もう、後戻りはできない。ここで、全てを終わらせるんだ。
仲間との絆、守りたい日常、そして人間としての譲れない想い……それら全てを力に変えて、僕らは最後の戦いに挑む。
「ノア、サポートを頼む!」
《……了解! 全力でバックアップする! 絶対、負けないでよ、みんな!》
「行くぞ、みんな!」
「おう!」
「はい!」
「っしゃあ!」
四つの魂が、一つになる。僕たちチーム「アーク」は、それぞれのスマホを構え、アバターを起動! 最後の敵へと、同時に駆け出した!