街がきらびやかなイルミネーションで彩られ、クリスマスソングが流れ始める十二月。
あの激闘の日々が嘘のように、
僕たち「アーク」のメンバーも、それぞれの日常を送りながら、受験勉強や、近づいてきた冬休み、そしてクリスマスの計画なんかに、普通の高校生らしく頭を悩ませる日々だ。
そんなある日の放課後、僕のスマホが軽快な着信音を鳴らした。相手は……夏目 莉緒さんからだった。
『よっす、悠人! 今ヒマ? ちょっと買い物付き合えよ!』
電話越しでも分かる、いつもの元気な声。断る理由なんてない。僕は二つ返事でOKして、駅前のショッピングモールで彼女と待ち合わせることにした。
待ち合わせ場所に現れた莉緒さんは、いつものギャルスタイルだけど、今日は少しだけ大人っぽい雰囲気のコートを着ていた。うん、やっぱりオシャレだな、と思う。
「おー、来た来た。んじゃ、行くぞ!」
彼女は僕の腕をぐい、と引っ張って歩き出す。今日の目的は、お世話になっているおばあさんへのクリスマスプレゼント選びらしい。
「ばーちゃん、最近編み物にハマっててさー。なんかいい毛糸とか、編み棒とかないかなって」
「へえ、おばあさん、編み物するんだ」
「おう! てか、ウチもちょっとだけ教わってんだぜ? マフラーくらいなら編めるし!」
え、マジで!? ギャルの莉緒さんが編み物……そのギャップに、僕は思わず目を丸くしてしまった。
「な、なんだよ、その顔! ウチだって、やるときゃやるんだっつーの!」
ぷんすか怒る彼女だけど、その顔は少し照れているようにも見える。可愛い。
僕たちは、手芸用品店で色とりどりの毛糸を眺めたり、雑貨屋で温かそうな膝掛けを探したり……。莉緒さんは、真剣な表情であれこれ悩んでいて、本当におばあさんのことを大切に思っているんだな、というのが伝わってきた。
彼女と一緒にプレゼントを選ぶのが、なんだかすごく楽しかった。
買い物を終えて、少し疲れた僕らは、モールのフードコートで休憩することにした。
「ふぅー、疲れたー! あんがとな、悠人。荷物持ち、助かったわ」
莉緒さんは、クレープを頬張りながら礼を言う。
「ううん、これくらい。喜んでくれるといいね、おばあさん」
「おう! ……しかし、あれだな」彼女は、少しだけ真面目な顔になって続けた。「こうやって、普通に買い物とかできるの、なんか、すげぇ幸せだよな」
「……ああ、本当にそう思う」
あの戦いの日々があったからこそ、この何気ない日常が、かけがえのないものだと感じられる。
「あんたがいてくれて、大輝や一葉がいてくれて……マジで、よかったって思ってる」
彼女は、少し照れたように視線を
「ウチ、昔はさ、自分のことしか考えてなかったし、周りのヤツらなんてどうでもいいって思ってた。でも……あんたたちといると、なんか……変われた気がすんだよね」
「莉緒さん……」
「ま、ウチが優しいのは、今に始まったことじゃねーけど?」
すぐに、いつもの調子で付け足すのが、彼女らしい。でも、その言葉には、確かな温かさが込められていた。
僕も、彼女やみんなと出会えて、本当に変われたと思う。一人で抱え込んでいた時とは、全然違う。
「俺もだよ。莉緒さんがいてくれて、すごく心強かった。君の、その……気合? には、何度も助けられたし」
「へへっ、だろ? ウチの根性は、
彼女は、誇らしげに胸を張る。その飾らない、真っ直ぐな強さが、僕はすごく好きだ。
フードコートを出ると、外はもうすっかり暗くなっていた。クリスマスのイルミネーションが一層、きらきらと輝いている。
「……なあ、悠人」
帰り道、莉緒さんが不意に立ち止まって、空を見上げた。つられて僕も見上げると、冬の澄んだ空に、一番星が力強く輝いていた。
「ウチさ、あんたのこと……結構、気に入ってんだよね」
「え……?」
突然の言葉に、僕の心臓が跳ねる。
「ま、仲間として、だけどな!」彼女は慌てて付け足す。「勘違いすんなよ!?」
「……わ、分かってるよ」
僕が少しがっかりしたのを見透かしたのか、彼女はいたずらっぽく笑った。
「でもさ……あんたがもし、
彼女は、僕の目を真っ直ぐに見つめて言った。その瞳は、一番星みたいに、キラキラと輝いている。
「……だから、安心しろよな、相棒!」
相棒……。大輝にも言われた言葉だけど、莉緒さんから言われると、また違う響きがある。それは、恋愛感情とは少し違うかもしれない。でも、それと同じくらい……いや、もしかしたらそれ以上に、強くて、温かい絆の言葉のような気がした。
「……ああ。ありがとう、莉緒」
僕も、彼女に負けないくらい、力強い笑顔で応えた。
これからも、僕らは最高の仲間として、そして、互いを支え合う、特別な存在として、一緒に歩んでいくんだろう。そんな確かな予感が、冬の冷たい空気の中で、僕の心を温かく満たしてくれた。