「麗さん、麗さん」
その美弥(みや)の声で今度こそ本当に朝なのだと信じたかった麗(れい)だった。
「ど、どうしたんですか?」
「え?」
「その首」
麗が洗面所の鏡の前に行くと、首にまるで誰かに絞められたような痕跡があった。
(たしかに、昨日、首が苦しかった。誰かが、私の首を外そうとしていたのだ…。でも、私は着ぐるみとは違うから、首なんか外せるわけもないのに…)
玄関に様子を見に行った美弥が悲鳴をあげた。
「どうしたの?」と麗も行くと、そこには、脱皮したヘビの皮があった。
「き、気持ち悪い…」と美弥は嫌悪感を示した。
このとき、麗はなぜか寝起きの冷静さでこう思った。(脱皮…。脱ぐ。着ぐるみを脱ぐ。何かを脱ぐことへの暗示……)
でも、美弥を心配させるといけないから、麗は黙っていた。
「麗さん。仕事どうします?」
「う、うん…。でも、このくらいで休むわけにもいかないし……」
「じゃあ、また一緒に出社しましょう」
(美弥がいてくれて良かった!)と麗は思った。
二人は、デスティニーランドのバックヤードへと向かうことになる。
【つづく】