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第6話 ようやく訪れた朝

「麗さん、麗さん」

 その美弥(みや)の声で今度こそ本当に朝なのだと信じたかった麗(れい)だった。

「ど、どうしたんですか?」

「え?」

「その首」

 麗が洗面所の鏡の前に行くと、首にまるで誰かに絞められたような痕跡があった。

 (たしかに、昨日、首が苦しかった。誰かが、私の首を外そうとしていたのだ…。でも、私は着ぐるみとは違うから、首なんか外せるわけもないのに…)

 玄関に様子を見に行った美弥が悲鳴をあげた。

「どうしたの?」と麗も行くと、そこには、脱皮したヘビの皮があった。

「き、気持ち悪い…」と美弥は嫌悪感を示した。

 このとき、麗はなぜか寝起きの冷静さでこう思った。(脱皮…。脱ぐ。着ぐるみを脱ぐ。何かを脱ぐことへの暗示……)

 でも、美弥を心配させるといけないから、麗は黙っていた。

「麗さん。仕事どうします?」

「う、うん…。でも、このくらいで休むわけにもいかないし……」

「じゃあ、また一緒に出社しましょう」

 (美弥がいてくれて良かった!)と麗は思った。

 二人は、デスティニーランドのバックヤードへと向かうことになる。


【つづく】

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