――燃え上るような恋がしたい。
いきなりこんな始まり方で申し訳ないが、まぁまずは話を聞いて欲しい。
身長と頭の出来は並みかソレ以下。
顔面のスペックに至っては幼少期、『アンタの顔を見ていると殺意が湧くわ』と近所に住んでいた幼馴染みの女の子を殺人鬼1歩手前まで導いた輝かしい経歴すらある。
性格も自分ではサッパリ分からないし、学生らしく金もない。
そんな俺でも、己の心を、魂を燃やすような素敵な恋がしてみたいのだ。
『何をちばけた事を……学生の本文は勉強だ!』と思われるかもしれないが、それでも俺は恋がしたいのだ!
なんせ人生は一度きりなのだ。
もしかしたら明日の俺は、
もしくはいきなり難病が発症し、寝たきりの生活になるかもしれない。
明日の事は神様にすら分からない。
だから、後悔の残るような生き方はしたくない。
たった1度きりの人生、己の魂を燃やして生きていきたいのだ。
そう――あの燃え上っている我らの学び舎のようにっ!
「ワシらの学校、すげぇ燃えとるのぅ、アシト……」
「あぁ。メチャクチャ燃えてるな、ヤギチン」
中等部の頃からの腐れ縁であるヤギ・クサナギと1年間共に勉学に励んだ【南セントラル男子剣術高等アカデミー】を遠くから見守る。
そこにはごぅごぅと酸素を貪り喰らいながら現在絶賛炎上中の我らが学び舎の姿があった。
既に消防の方々が消火作業に入っているが、炎の勢いは衰えるどころかさらに勢いを増して我らが学び舎をバーニングしていく。
もうちょっとしたキャンプファイヤー状態である。
「なぁヤギチン?」
「なんや?」
「火事ってさ、近くで見るとメチャンコ熱いんだなぁ……」
「ほんまソレな」
ちなみに今日は【南セントラル男子剣術高等アカデミー】の卒業式である。
俺達の他にも校舎の中に残っていた卒業生たちが
「それで? 原因は?」
「3年G組の
「なるほど。お肉を焼くつもりが校舎を焼いちゃったと」
「上手いことを言っとる場合やないで、アシト。ワシら、明日からどうなっちまうんや?」
「さぁ? どうなっちまうんだろうね?」
ごぅごぅと猛り狂う炎を見上げる俺たち在校生たち。
卒業生は母校が消滅するだけで済むが、俺たち在校生はそうも言っていられない。
なんせまだ最低でも2年はこの『ウホッ♪ 男だらけの剣術高等アカデミーッ!』に通わなければいけなかったのだ。
果たして残された
「まぁなんとかなるだろ」
「楽観的やのぅ、アシトは……」
呆れた表情で俺を見てくるヤギチン。
そんな級友に俺は軽く肩を竦めてみせた。
悲観した所で何も始まらない。
だからこういう時こそ、俺は大好きだった彼女に教えて貰った【魔法の言葉】を口にするのだ。
「さぁ、楽しくなってきやがった」