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第10話 ーー

「ねえ、真守さん、覚えているかしら? あの家にいた時、鈴蘭の花言葉は『再び幸せが訪れる』って話したわよね。でも訪れるのは幸せだけだと思う――?」


 スズカはいつもと変わらぬ、花が綻ぶような笑みで話す。


「あと、鈴蘭は『天国の階段』って話も覚えているかしら? 天国って言葉、面白いわよね――だって、“死”という概念と、“幸福”という概念……対照的なイメージの言葉が思いつくのだから……」


 その声色はとても楽しそうだ。


「でも、酷いわよね! 守正は私たちの事を知っていて、あなたを隠したのよ……!」


 彼女は頬を膨らませる。


「あ……でも……最終的に一緒になったのだもの。私たちの運命は……誰にも変えられないほど、壊せないほど――強かったのよね、きっと。あゝァ、嬉しいわァ……!」

「そう思わない?」


「ねえ、旦那様真守さん?」


 壊れていた左側の扉が、ギイ……と音を立てて閉じた。

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