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第29話「しのぶちゃんの過去と、まゆらの新たな決意。裏切りの仮面を被るリュウの真実」

夜の都会は眠らない。

ネオンが灯り、雑踏の中で誰かの笑い声が遠くに響く。


リュウ(本名:水嶋 隆之)は、そんな街の一角で独り、電子タバコの煙をゆっくりと吐き出していた。

いつもの香水の香りが、夜の冷気に溶けていく。


「裏切り者のレッテルは…悪くない」


彼の唇が、ふっと歪む。

だが、その裏には深い計算があった。


表向きは、まゆらたちの敵として動いていたリュウ。

だが、その裏で彼は、しのぶちゃんの動きをスパイしていたのだ。


「奴らに渡したら、俺たちの全てが終わる」


リュウは知っていた。

しのぶちゃんのランドセル就労支援制度は、表の顔だけでなく、底知れぬ闇を抱えていることを。


「だから俺は裏切り者のふりをした」


誰にも言えない秘密を抱え、孤独に戦うリュウ。

ナルシストでチャラ男の彼も、この時ばかりは一人の男の顔だった。


一方、しのぶちゃんは静かなオフィスの一角で、過去の資料を見返していた。


「私は、子供のころから周囲と違った」


優秀すぎる頭脳と冷静すぎる判断力。

そのせいで孤独を感じ、心を閉ざしていた少女時代。


「希望なんて、幻想だと思っていた」


しかし、社会の不条理と出会い、

弱者が踏みつけにされる現実に直面し、彼女は決意した。


「この世界を変える――それが、私の使命」


だが、その使命感は時に冷徹な独裁者の影を落とす。

しのぶちゃんの“光”は、裏返せば“闇”だった。


まゆらは、リュウに裏切られたショックから少しずつ立ち直りつつあった。


「信じることは、弱さじゃない」


かつての極道の経験が彼女を支えている。

裏切りには慣れている。だが、信頼は簡単に壊れないと、心に誓った。


「私たちが守るべきものは何か」


灯や翔と話し合いながら、プロメテウスJobの未来を見据える。

傷ついても、希望を捨てない。


「もう一度、立ち上がる時だ」


彼女の目に再び強い光が宿る。


リュウは鏡の前で、自分の顔をじっと見つめていた。


「俺は一体、誰のために戦っているんだ?」


ナルシストの彼にとって、自分自身が最大の味方であり最大の敵だった。


「まゆらたちのため、なんて言いながら…実は自分を守ってるだけかもしれない」


だが、それでも彼はやめられなかった。


「この社会の狂ったゲームを、俺が最後まで生き残る」


その決意が、彼を前に進ませていた。



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