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第28話:「しのぶちゃんの真実と、リュウの裏切りの夜。まゆらの心は、揺れ動く」

薄暗い部屋の隅で、まゆらは肩を震わせていた。


「ああ、やっぱり…リュウにまで裏切られるなんて――」


彼女の声は、普段の強気な態度とは違い、どこか壊れそうな弱さをまとっていた。


元極道――裏切られることは日常茶飯事だったはずだ。

でも、リュウの裏切りは、まゆらにとって全然違った。


「リュウ、信じてたのに……」

まゆらは、ふとあの笑顔を思い出した。


金髪にピアス、香水の香りを漂わせながら、片手に電子タバコをくゆらせ、口角を絶えずあげていた男。


「俺が一番カッコよく見えるように動いてる」


あの言葉の意味を今、彼女は痛いほど噛みしめている。


「信じてたのに。あんなに危険な現場でも、私にだけは本音を話してくれたのに」


まゆらの胸の中にぽっかり穴が開いたようだった。


裏切りは、もう慣れていたはずなのに――。


その頃、しのぶちゃんは誰にも見られない場所で静かに話していた。


「ランドセル就労支援制度…それは、社会の闇を照らす“光”だ」


彼女の言葉には不思議な説得力があった。


「私が目指すのは、ただの再就職支援じゃない。社会の歪みを矯正し、弱者が利用される構造を変えること。誰もが希望を持てる未来のために」


だが、その“希望”は、時に人の心を蝕み、利用される道具になってしまう。


「だから私は、冷静に、計算高く動いている」


しのぶちゃんの目は、冷たくも熱く燃えていた。


リュウは裏切りの夜、闇に紛れて動いていた。


「まゆらたちを出し抜いて、一歩先に行く」


香水の香りを漂わせ、電子タバコの煙を静かに吐き出す。


「この社会のゲームで勝つには、裏切りも策略も必要不可欠だ」


彼はそう言いながら、自分の欲望と野望を満たすために動いている。


ナルシストの彼にとって、一番大事なのは“自分が輝くこと”だった。


まゆらと灯、翔はリュウの裏切りに揺れる心を抱えつつも、プロメテウスJobの未来を模索していた。


「このままじゃダメだ」翔が言う。


「しのぶちゃんの制度も、リュウの動きも、全部計算のうちかもしれない。でも俺たちは希望を捨てるわけにはいかない」


灯が頷く。


「希望は簡単には奪えない。私たちが守る」


まゆらはまだ傷ついていたが、ふと拳を握り締めた。


「信じられる仲間が減っても、私が倒れるわけにはいかない」


彼女の目に再び火が灯った。


かつての極道時代、裏切りは数えきれないほど経験してきた。

でも、リュウは違った。


彼は「仲間」を演じ、まゆらの弱さや迷いも見抜き、巧みに寄り添っていた。


その分、裏切られたショックは大きかった。


「信じることは、弱さじゃない」


自分に言い聞かせながらも、まゆらはその言葉にまだ心がついていかない。


彼女の心は、まるで暴風雨の中で揺れる小舟のように不安定だった。


「でも、裏切りを恐れてばかりもいられない。私は、私の道を行く」


そう決意し、彼女は静かに涙を拭った。


しのぶちゃんの冷徹な計算、リュウの華麗な裏切り、まゆらの揺れる心。


それぞれの思惑が絡み合い、プロメテウスJobの未来は揺れ動く。


果たして、彼らはこの社会の闇を照らし、希望を守ることができるのか?


それとも、裏切りと策略の渦に飲み込まれてしまうのか?



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