リュシェルが身に覚えのない罪を着せられたことで、王宮内の緊張は頂点に達していた。しかし、彼女は自身の潔白を証明するため、全力で調査を進めていた。その裏では、アレンが彼女を守るために動き、リュシェルを失脚させようとする貴族たちとの戦いが水面下で続いていた。
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決定的な証拠
数日間の調査の末、リュシェルはついに書類改ざんの証拠を掴むことに成功した。書類が一時的に保管されていた倉庫の警備記録を確認したところ、特定の貴族が不自然に立ち寄っていたことが判明したのだ。
「この記録を王太子様に提出すれば、真実を証明できる……。」
リュシェルは強く手帳を握りしめながら、自分を追い詰めようとした者たちに立ち向かう覚悟を決めた。
アレンの執務室を訪れると、彼はリュシェルの顔を見るなり微笑みかけた。
「リュシェル、何か進展があったのか?」
彼女は頷き、手にしていた証拠を差し出した。
「これが証拠です。書類改ざんに関与した人物が特定できました。」
アレンは書類を手に取り、内容を確認すると、目に見えて安堵した表情を浮かべた。
「君の努力が、この真実を明らかにしてくれた。ありがとう。」
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裁きの場
アレンはリュシェルが提出した証拠をもとに、緊急の貴族会議を召集した。会議には、王宮内の重要な貴族や関係者が全員出席し、改ざんされた書類の真相が公表されることとなった。
「本日、この場でリュシェルを陥れようとした者たちの罪を明らかにする。」
アレンの力強い宣言に、会場は静まり返った。
アレンは、警備記録や改ざんの痕跡を一つひとつ説明し、関与した貴族たちを名指しした。名前を呼ばれた彼らは、一瞬にして青ざめた。
「これらの証拠は、全てリュシェルが自ら調査し、真実を明らかにするために集めたものだ。」
アレンがそう言うと、会場内から驚きと感嘆の声が上がった。
「彼女がここまで努力した理由はただ一つ。自分の潔白を証明するためだ。」
アレンの言葉には強い怒りが込められていた。リュシェルを追い詰めようとした貴族たちは言い逃れを試みたが、揺るぎない証拠の前では無力だった。
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リュシェルの無実
会議の後、リュシェルはようやく自分の無実が証明されたことに安堵した。彼女を信じ続けたアレンが改めて彼女に感謝を述べた。
「リュシェル、君がこの試練を乗り越えたことを心から誇りに思う。君がいなければ、この真実は闇に葬られていただろう。」
リュシェルは微笑みながら静かに答えた。
「アレン様が信じてくださったおかげです。私は、この王宮で自分の居場所を守るために努力しました。それを叶えられたのは、皆さんのお力添えがあったからです。」
彼女の謙虚な言葉に、アレンは満足そうに頷いた。
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陰謀の終焉
貴族たちの陰謀が明らかにされたことで、リュシェルを巡る不当な噂も一掃された。彼女に対する侮辱的な態度を取っていた侍女たちや一部の貴族も、次第に彼女を尊敬し始めるようになった。
「リュシェル様、本当にすみませんでした。私たちが間違っていました。」
かつて冷たい態度を取っていた侍女たちが、頭を下げて謝罪してきたとき、リュシェルは柔らかく微笑みながら答えた。
「気にしないでください。これから一緒に頑張りましょう。」
彼女の寛大さに触れた侍女たちは、涙を浮かべながら感謝の言葉を口にした。
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新たな未来へ
全てが終わった夜、リュシェルは自室の窓辺に立ち、静かに月明かりを眺めていた。彼女の中には、これまでの試練を乗り越えた達成感と、これからの未来への希望が広がっていた。
「私はもう、過去に戻らない。ここで得た信頼と絆を守り続ける。」
彼女はそう心に誓い、深呼吸をした。
その後ろから、静かな足音が聞こえた。振り返ると、そこにはアレンが立っていた。
「リュシェル、今日は少し休むといい。君は十分に頑張った。」
彼の優しい言葉に、リュシェルは微笑みながら答えた。
「ありがとうございます。これからもアレン様のお役に立てるよう、頑張ります。」
「君がいてくれるだけで、僕には十分だ。」
アレンの言葉に、リュシェルの胸は温かく満たされていった。
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