リュシェルが自分の力で立ち向かう決意を固めた矢先、王宮内では彼女を失脚させようとする陰謀が次第に形になりつつあった。貴族たちの中には、彼女の存在を王太子アレンの政治的妨げと見なし、排除しようと動いている者たちがいた。
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噂の拡散
「リュシェル様が、元婚約者のロイ様と密会しているらしい。」
「どうやら、彼女はまだロイ様への未練があるようね。」
そんな根も葉もない噂が侍女たちの間で広がり始めた。さらに、噂は貴族たちの耳にも届き、リュシェルを中傷する声が次第に大きくなっていった。
「アレン様に近づいたのも、ロイ様への復讐が目的なのではないか?」
「こんな女が王宮にいるなんて、王家の名誉に傷がつく。」
噂話はいつの間にか事実のように扱われ、リュシェルの周囲には再び冷たい視線が集まり始めた。
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忘れられた書類
ある日、リュシェルが執務室で書類の整理をしていると、アレンから重要な貿易関連の文書を預かるよう指示された。彼女は慎重に管理し、翌日アレンに届ける予定だった。
しかし、その夜、彼女の部屋に保管していた書類が突然消えた。慌てて部屋中を探しても見つからず、リュシェルは混乱しながらも落ち着こうと自分に言い聞かせた。
「誰かが間違えて持ち出したのかもしれない……。」
そう考え、侍女や他の使用人たちにも尋ねたが、誰もその行方を知らなかった。
そのまま翌日を迎え、彼女はアレンに事情を説明した。
「アレン様、大変申し訳ありません。お預かりしていた書類が紛失してしまいました……。」
アレンは驚いた様子を見せながらも、冷静に彼女の話を聞いていた。
「君が書類を紛失するなんて、普段の君らしくないな。何か他に気づいたことはないか?」
リュシェルは首を横に振りながら、深い罪悪感を抱えていた。
「いいえ、全く心当たりがありません。ただ、誰かが意図的に動いた可能性もあるかと……。」
アレンは彼女の言葉に頷き、王宮内で調査を進めることを約束した。
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陰謀の発覚
数日後、アレンの命を受けた調査団が、紛失した書類を城の外れにある倉庫で発見した。しかし、それは奇妙な形で発見された――書類には一部改ざんされた痕跡があり、リュシェルが関与しているかのような証拠が残されていたのだ。
「リュシェル様が、書類を故意に隠した可能性があります。」
調査団からの報告が上がると、アレンは厳しい表情を浮かべた。彼にはリュシェルがそんなことをするはずがないと分かっていたが、貴族たちからの圧力は日に日に増していた。
「王太子様、彼女を信じるのは危険です。今すぐ追放するべきでは?」
「彼女をかばえば、王家の威厳が損なわれますぞ。」
会議室での議論は白熱し、アレンを取り巻く状況はますます困難なものとなっていった。
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リュシェルの覚悟
その夜、アレンはリュシェルを呼び出し、今回の件について話し合った。執務室に入った彼女の顔には、不安と覚悟が混じっていた。
「リュシェル、君が無実だと僕は信じている。しかし、貴族たちは君を疑っている。君自身がどう動くかで、この状況は変わるかもしれない。」
アレンの言葉に、リュシェルは静かに頷いた。
「私にできることがあれば、何でもいたします。もし私が身を引くことでアレン様の立場を守れるのであれば、それも覚悟しています。」
その言葉に、アレンは強い口調で言い返した。
「そんなことを言うな!君がいなければ、この王宮に正義も希望もなくなる。君を追い出すようなことは、絶対にさせない。」
彼の力強い言葉に、リュシェルは目を潤ませながら答えた。
「ありがとうございます、アレン様……。私はこの場で、真実を証明するために戦います。」
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新たな決意
翌日、リュシェルは自ら進んで調査に協力し、紛失した書類がどのように改ざんされたのかを詳しく調べ始めた。その過程で、貴族たちの中に内通者がいる可能性が浮かび上がる。
「この証拠を突き止めることで、私を信じてくれている人たちに報いる。」
リュシェルは胸にそう誓い、さらなる努力を重ねていく。
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