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第14話 : 確執の陰

元婚約者ロイ・グランフォードとの再会から数日後、リュシェルは王宮の生活に戻っていた。しかし、ロイの訪問がもたらした波紋は思った以上に大きく、彼女の心にもわずかな動揺を残していた。



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噂の再燃


「聞いた?リュシェル様が元婚約者と再会したらしいわ。」

「ええ、でも驚いたわね。王太子様の近くにいるのに、まだ過去の関係が話題になるなんて。」


王宮内では、ロイとリュシェルの再会が話題になっていた。侍女たちの間で囁かれる噂話は、一部の貴族たちの耳にも届き、リュシェルの立場を揺るがしかねない状況を生み出していた。


その中でも、リュシェルを快く思わない者たちは、この状況を利用しようと動き始めた。



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再び迫るロイ


そんな中、リュシェルは再びロイと顔を合わせることになる。廊下で偶然すれ違った際、ロイは彼女に話しかけてきた。


「リュシェル、少し話がしたい。」

リュシェルは一瞬戸惑ったが、冷静に答えた。

「申し訳ありませんが、私は今、王宮の仕事で忙しい身です。個人的な会話をする時間はありません。」


ロイは困惑した表情を浮かべたが、それでも引き下がらなかった。

「君と別れたことが間違いだったと気づいたんだ。あの時の僕は愚かだった。今からでも、僕たちの関係を修復することはできないだろうか?」


その言葉に、リュシェルの胸に怒りが込み上げた。だが、彼女は感情を抑え、冷静に言葉を返した。

「ロイ様、私はもう過去に戻るつもりはありません。あなたが私を捨てたことで、私は新しい人生を手に入れました。それを壊すつもりなら、お引き取りください。」


ロイは言葉を失い、その場に立ち尽くしていた。リュシェルは背を向けて去りながら、自分の心の中で再び過去と決別する覚悟を固めた。



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陰謀の影


ロイとの再会をきっかけに、リュシェルを陥れようとする動きが貴族たちの間で活発化していた。特に、アレンの婚約を推し進めようとする派閥の者たちは、リュシェルを「王太子にふさわしくない存在」として排除しようと画策していた。


「リュシェル様を王宮から追放するにはどうすればいい?」

「彼女の過去を利用するのがいいだろう。ロイ様との婚約破棄の真相を捻じ曲げて広めるんだ。」


貴族たちの計画は巧妙で、リュシェルを失脚させるための証拠をでっち上げようとしていた。侍女たちの中にもその計画に協力する者が現れ、リュシェルは知らぬ間に孤立させられようとしていた。



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アレンへの相談


そんな状況の中、リュシェルはアレンのもとを訪れた。執務室で彼と向き合い、噂の広がりや陰謀の気配について打ち明けた。


「アレン様、私はこのままでは王宮にいられなくなるかもしれません。」

彼女の声には、不安と覚悟が混じっていた。


アレンは静かに話を聞き、しばらく考え込んだ後、真剣な表情で言った。

「君を守るのは僕の役目だ。君がこの王宮で成し遂げてきたことは、誰よりも僕が知っている。」


リュシェルは彼の言葉に胸を打たれた。彼の信頼が、自分を支えているのだと再確認した。


「ありがとうございます。ですが、私は自分の力でこの状況を乗り越えたいと思っています。それが私の意地でもありますから。」

リュシェルの決意を聞いたアレンは微笑み、彼女の肩に手を置いた。

「君ならきっと乗り越えられる。僕も全力で支えるから、無理だけはするな。」



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自分の力で


その後、リュシェルは噂や陰謀に対抗するため、自分の仕事にさらに力を注ぎ始めた。彼女の正確な仕事ぶりや冷静な態度は、周囲の侍女たちや貴族の中にも少しずつ支持を広げていった。


「リュシェル様、本当にすごいですね。私たちも見習わないと……。」

以前は敵意を抱いていた侍女たちが、次第に彼女に敬意を示し始める場面も増えていった。


「私は、ここで役立つ存在でありたい。それが私の復讐ではなく、誇りだから。」

リュシェルの胸には、確固たる意志が宿っていた。



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希望の光


夜、リュシェルは窓の外を眺めながら静かに決意を新たにした。陰謀や過去の重圧にも負けない自分を作り上げるため、彼女はこれからも努力を続けるつもりだった。


「私はもう、誰にも負けない。ここが私の居場所だと証明する。」


その言葉は、彼女自身への誓いであり、新たな希望への一歩でもあった。



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