リュシェルが森の中で難民たちの真実を知り、彼らの窮状をアレンに報告してから数日が経った。王宮内では、この問題を解決するための協議が連日続いていた。一方で、難民たちを助けるべきだとするリュシェルの提案は、一部の貴族たちから強い反発を受けていた。
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貴族たちの反発
「難民だと?彼らを助けることが、どれほどの負担になるか考えたのか?」
会議室に集まった貴族の一人が、憤慨した様子で声を上げた。
「我々の王国は、隣国の混乱に巻き込まれる余裕などない。それに、彼らが本当に難民なのかどうかも怪しいではないか。」
別の貴族も同調する。
リュシェルは会議の隅に座り、冷静にそのやり取りを聞いていたが、やがて意を決して口を開いた。
「皆様、確かに難民の受け入れには負担が伴います。しかし、彼らを放置すれば、さらなる混乱を招く可能性があります。それに、彼らが隣国からの支援を得られない今、我々が手を差し伸べなければ、何百もの命が失われるかもしれません。」
その言葉に、会議室は一瞬静まり返った。リュシェルの真摯な態度が、貴族たちの一部に響いたのだ。
「では、具体的な提案はあるのか?」
一人の貴族が挑むように尋ねる。
「はい。」
リュシェルは落ち着いた声で答えた。
「まず、彼らを正式に王国の保護下に置きます。その上で、一時的な居住地を提供し、自立に向けた支援を行います。例えば、農地の開拓や労働力としての雇用機会を与えることで、彼らが社会に貢献できる仕組みを作るのです。」
具体的な提案に、貴族たちは再びざわめき始めた。批判的な意見もあったが、一部の者たちは彼女の提案に可能性を見出していた。
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アレンの支援
会議が終わり、リュシェルが疲れた表情で執務室を出ると、アレンが声をかけてきた。
「よくやった、リュシェル。君の言葉は確かに一部の貴族たちに響いていた。」
リュシェルは苦笑しながら答えた。
「ありがとうございます。でも、まだ全員を納得させるには至りませんでした。」
アレンは優しく微笑み、彼女の肩に手を置いた。
「君は一人で全てを解決する必要はない。僕が君を支える。二人でこの問題を乗り越えよう。」
その言葉に、リュシェルは胸の中に温かいものが広がるのを感じた。
「ありがとうございます、アレン様。私もできる限りのことをいたします。」
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難民たちとの対話
その後、リュシェルは護衛隊と共に再び森へ向かい、難民たちとの直接的な対話を行った。彼女は難民たちの代表と向き合い、落ち着いた声で話し始めた。
「私たちは、皆さんの状況を改善するために協力したいと考えています。ただし、そのためには皆さんにも協力が必要です。」
代表の男性は警戒しながら尋ねた。
「協力とは具体的に何をすればいいのですか?」
リュシェルは頷き、丁寧に説明を続けた。
「まず、王国が提供する居住地へ移動していただきます。その場所で自立のための支援を受けながら、農地の開拓や軽作業をお願いする形です。これにより、皆さんが王国にとって必要な存在であることを証明できます。」
その提案に難民たちは驚きと不安を抱いたが、やがて小さな希望を見出したように頷き始めた。
「私たちが努力すれば、ここを出て普通の生活を送れるということですか?」
リュシェルは力強く頷き、答えた。
「はい。それが私たちの願いです。」
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貴族たちの説得
リュシェルは難民たちの協力を得られる見込みがついたことで、王宮に戻り、再び貴族たちを説得する場に臨んだ。
「難民たちは自らの力で自立する意思を持っています。私たちが手を差し伸べることで、彼らは王国に貢献する人材となるでしょう。」
リュシェルの言葉に対し、最初は反発する声もあったが、彼女が提示した具体的な支援計画や、難民たちの協力の意志を伝えると、徐々に賛成意見が増え始めた。
「この計画が成功すれば、王国の発展にもつながるかもしれない。」
「確かに、これ以上の混乱を避けるためには、現実的な解決策が必要だな。」
こうして、貴族たちはついにリュシェルの提案を受け入れることを決定した。
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小さな勝利
その夜、リュシェルはアレンとともに庭園を散歩していた。彼女はようやく達成感を感じることができ、少しだけ肩の力を抜くことができた。
「リュシェル、君の努力がこの結果を生んだ。君がいなければ、難民たちは救われなかっただろう。」
アレンが優しく言うと、リュシェルは微笑みながら答えた。
「ありがとうございます。でも、これは始まりに過ぎません。これからが本当の試練です。」
「その通りだな。」
アレンも笑いながら頷き、夜空を見上げた。
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こうして、リュシェルは和解への第一歩を踏み出した。彼女の行動と献身が、王国の未来に新たな希望をもたらしていた。
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これで第5章第3セクションが完成しました。リュシェルが難民問題を巡って奮闘し、貴族や難民たちを説得して和解への道を切り開く姿を描きました。追加のご要望や修正があればお知らせください!