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第十二話 女神の託宣とリビィ

 そこは真っ白な場所だった。ただとても綺麗な世界だなとリビィは思った。

「え、あ?」

 どうにも足元がふわふわしている――と思ったら浮いていた。

「リビィ、大丈夫?」

 心配そうな声がしたのでそちらを見るとヴァーンがおり、今気が付いたが、彼女の手をしっかりと握り締めてくれていた。それにほっとする。

「ね、ヴァーン、あたし、もしかして飛んでる?」

 ひとまず自分の状態をきちんと確認すべく聞いてみた。

「うん、飛んでるね。俺もだけど」

 言われてみれば確かにヴァーンも同じ状態である。ただ不思議と怖さはなかった。

「ここって何処?」

「分からないけど、変な場所ではないっぽいかな」

「綺麗ではあるよね。上なんだか、下なんだか分からないけど」

「確かに」

 二人で会話をしていると、真っ白い中に虹が現れたかと思うと、それがまるでカーテンのように広がっていく。

「わあ、綺麗!! 虹のカーテン?」

「へえ、俺も初めて見たや。変わった虹だなあ」

「ようこそ、空の郷へ」

 ふいに静かな声が響いた。それは虹のカーテンの中から聞こえてくるようだ。

「誰?」

「『金色の乙女』よ、森の国の王子よ、希望の星たちよ、よく来ましたね」

 声が再度聞こえ、それとともに一人の女性とそれに付き従う、幾重にも広がっている羽のある白い蛇が現れた。女性は優しげな瞳でリビィたちを見ており、蛇はピンク色の舌をチロチロ出しながらやはり彼女らを愛らしいつぶらなまなこで眺めている。

「えーと、あなたたちは?」

 とりあえず誰だか分からないのでリビィは尋ねてみることにした。

「私の名前はガディンナ・ルールー。予言の女神であり、二つの世界を繋げ続けようとするものです。これにいるのはヘルオパ、私の従者です。少々悪戯好きですが、悪意はありません」

 ガディンナと名乗った女性はにこやかにそう言い、ヘルオパの頭を撫でてやると、甘えるようにガディンナに擦り寄ってく。その様子はかなり愛らしい。

 ガディンナの出で立ちは褐色の肌に虹のカーテンをそのまま纏ったような艶やかな衣装を身に付け、足元まである長い銀髪を垂らしている。

 かなり綺麗な人だなあとリビィは素直に思った。

「ね、ヴァーン、ヘルオパって洞窟の名前だったよね?」

「うん、そうだよ。へえ、じゃあ、あれが精霊ヘルオパか」

「ヴァーンは知ってるの?」

「見たのは初めてだよ。ヘルオパってかなり悪戯好きの精霊でさ、あそこの中を知らないヤツらが迷いやすいのはそのせいだとも言われてる。でもまあ、悪さしなければ不思議と怪我とかはしないんだ。意外と近道に導いてくれたりするみたいだし」

「へえ、そうなんだ。それだけ聞いてるといい精霊さんっぽいけど」

「うーん、リビィがいた広間あるだろ? あそこにヘルオパの好物、置いとけば大概は助けてくれるんだ」

「好物?」

「そ、ヘルオパは甘いお菓子が大好きなんだ」

「あ、もしかして『トラネンフルスの悪戯』が好き?」

「そうそう、大好物。それで『トラネンフルスの悪戯』って名前はヘルオパのことも由来にあってさ。ヘルオパの面倒を見ているのが精霊トラネンフルスで食いしんぼのヘルオパのために作ったんだけど、あれ、包んであるだろ?」

「うん、大きな葉っぱで」

「あれ、食べられないんだけど、あれってトラネンフルスがヘルオパに直ぐ食べさせないための工夫なんだってさ」

「そんなに食いしんぼなの?」

「そうしないと直ぐに丸呑み直ぐしちゃうらしい」

「えー、丸呑みしちゃうの?」

「うん、だけど不思議とトラネンフルスの葉で包んだ状態だとちゃんと待つらしい。だからトラネンフルスがヘルオパにする悪戯って言う名前になったんだってさ」

「なるほど」

「そんなわけでヘルオパの洞窟を通る商人たちはかならず『トラネンフルスの悪戯』を持っていく。今回みたいな騒動だと我関せずになるけどな。ヘルオパは基本的に人同士の争いには不介入なんだ」

 ヴァーンの説明にくすりと女神は微笑い、その後で少しため息を吐いた。

「ええ、そうです、ヘルオパは人を選びますからね。けれど、今回は地の国のものが魔封じをおこなっていたのもあり、そもそも手を出すことは出来なかったのですよ」

 困ったことと言うガディンナにリビィは問いかける。

「もしかしてあのテントがそうだったの? 魔法の石が助けてくれたけど」

「そうです、あなたを捕らえるためにあつらえたのでしょう。恐らくあなたのための衣装もあったはずです。それを着なくてよかったこと」

「あ、はい、着るようには確かに言われましたけど、あんな衣装一人で着られないし、嫌だったし」

 思い出してもあんな衣装は着たくない。無駄にカラフルで重そうな衣装だった。

「エリザベス=ウォルスング、あなたは賢いですね。でも本当にあなたの元に魔法の石があって不幸中の幸いでした」

「もしもだけど、あの衣装を着ていたらどうなったの?」

「恐らく色の違う宝石が装飾されていたはずですが」

「うん、すっごく趣味が悪いと思った。何色あったかな? バラバラな色の宝石と窮屈そうな服だったな」

「そうですか。そうであれば封印のまじないがしてあったと思います。恐らく着てしまったらあなたの意志が無くなってしまったでしょうね。そういう魔法がかかっていたのです」

「――っ」

 とんでもなく物凄く怪しいとは思っていたが、まさかそこまでひどいものとは思わなくてリビィは絶句した。

「あいつら、やっぱりそんな真似しようとしてたのか!」

 ヴァーンはガディンナの説明に激しい怒りを覚えた。リビィになんて真似しやがるんだ! 今度会ったら覚えてやがれ!!

 もともと仲が悪い相手だが、今回のことで更にそれは増していた。相手の石を捻じ曲げるなんて許されることではない。

「エリザベス=ウォルスング、あなたの力を狙ってのことです。よく逃げ出せましたね」

 ガディンナはとても感心している様子でそう問うた。

「ええと、魔法の石が緑の宝石を持つようにって教えてくれて。それでテントから逃げ出せたんです」

 掌に魔法の石と緑の宝石を載せて、ガディンナに見せた。

「そうですか。ああ、森の国の宝石ですね、それは」

「森の国の?」

「ええ、その鮮やかな緑色はかの国を象徴してますね」

「うん、一番綺麗だったの!」

 リビィは笑顔でそう答え、ヴァーンもそれを聞いて嬉しそうに眺める。

「それを持ち出されては彼らの計画は水泡に帰したはず。しばらくは動かないでしょう。残念ながら簡単には諦めはしないと思いますが」

 欲望に支配されたものたちはなかなかしつこいですからとガディンナは苦笑した。

「あ、もしかして宝石たちは何か意味があったんですか?」

「そうです、この世界にある国々を表す宝石があるのですが、それを決まった位置へと置くといろいろなことが出来ます。今回の場合は想像にはなりますが、恐らく封印の形にだったかと」

「封印……それってあたしがあたしでなくなるってこと?」

「端的に言えばそうなります。彼らの思うとおりに動くだけの人形のようになってしまったかもしれません」

 その言葉はリビィを心底ぞっとさせた。それを感じ取ったヴァーンは彼女を肩を抱き寄せて、ガディンナに向かって尋ねる。

「ガディンナ・ルールー、リビィはこの世界にどうしてやってきたんだ? あなたの予言では四年後だったはずだろう?」

「ええ、そうです。けれど今回のエリザベス=ウォルスングの来訪は偶然ではありませんよ、ヴァーン・サイス=バウ=ム=ヴァルツェン」

「偶然じゃない?」

 ガディンナは頷き、片手に持っていた杖を翳した。

「まずはエリザベス=ウォルスング、『金色の乙女』たるあなたには知る権利があります」

「何を?」

 不思議そうな顔でリビィはガディンナを見つめる。ヴァーンが傍にいてくれるのでとても安心出来るから素直に疑問を投げかけることができた。

「この世界のことわりをです」

「ことわり?」

「簡単に言えば、あなたの世界とこの世界についてです」

「それは知りたい! 教えて!」

「ええ、それでははじめましょう」

 ガディンナは杖を振るい、空中に映像を映し出した。それはそれぞれの世界であったが、少し彼らの知るものとは違っている。

 どちらにも境がなく、どちらも自由に行き来して、誰もが楽しそうだった。神話の時代というものだろうか。

「二つの世界が重なり合ってる?」

「ええ、これは私が生まれたときのものですから、原初ではもっと違っていたと思いますが、はるか昔は一つだったのです。宇宙が生まれた後に男神と女神が生まれ、我々の住まう世界を作り出しました。彼らはとても仲良く、やがてごく自然に夫婦となり、我ら神々を生み出しながら平和に世界を治めていました。けれどもあるとき二人の間に諍いが生まれ、夫婦神は互いを信じることが出来なくなり、世界を二つに分けてしまったのです」

「簡単に言うと神様たちが夫婦喧嘩しちゃったってこと?」

「はい、エリザベス=ウォルスングの言うとおりです」

「伝承は嘘じゃなかったってことかあ」

「そんな伝承がこっちにはあるんだ?」

「うん、世界が生まれたときには一つだったけど、二つに分かれてしまったっていうね。俺が聞いたのも原因は男神と女神の仲違いで、未だに仲直りしていない。んで、俺たちの世界とは違う世界に男神がいて、こっちには女神がいるって話。俺らの世界の人間なら誰もが知ってるけど、何故そうなったかは誰も知らないっていうヤツだ」

「え、それって女神様も知らないの?」

「お二方の諍いの理由も原因も未だに分かってはいませんね。ただ現在、二つの世界は少しずつ離れてきており、これは大変によくない兆候です。境界人バウンダリー・パーソンズの観測で分かったことですが」

 リビィは聞いたことのない言葉が出てきたので尋ねる。

境界人バウンダリー・パーソンズ? 何それ?」

「もしかして、それって境界人のこと? 聞いたことはあるけど、会ったことはないな」

「きょうかいじん?」

「うん、俺も伝承でしか知らないんだけど、俺たちの世界とリビィたちの世界を繋ぐ人たちのことだって聞いてる」

「そんな人たちがいるんだ?」

 ガディンナは頷き、言葉を紡いだ。

「境界人はヴァーン・サイス=バウ=ム=ヴァルツェンの言うとおり、二つの世界を行き来出来るものたちのこと指します。ただ彼らであっても行き来は限定的で、この世界の月とあちらの世界の月が重なるときだけなのです。その間に彼らは二つの世界の間にある私の城で会合をし、常にどうすべきかを話し合っています。私は予言の女神ですから境界人バウンダリー・パーソンズに助言をすることは出来ますが、根本の解決をすることは叶いません」

 リビィとヴァーンは女神の話に食い入るように耳を傾け、一言も聞き漏らさないようにと集中していた。自分たちにとって女神の話が重大であることを理解しているのだ。

 ガディンナはその様子にいたく満足したようで、目を細めて話を続けた。

「そこで彼らと話し合い、私の予言とともに一つの答えを導き出したのです」

「答え?」

「ええ、一つの結論と言ってもいいでしょう。最初に言っておきますが、分かたれてしまった二つの世界を元通りにすることはもう叶いません。けれども寄せ合うこと、近付けることは出来ることは分かりました。つまりそれぞれの世界にいる人間たち同士の絆を強くすればよいということです。互いを忘れ去れることはどちらの世界も消え去る運命を辿りかねません」

 リビィもヴァーンもゴクリと唾を飲む。世界が消え去ってしまうなど空恐ろしいことが起きるなんて思いもしなかったからだ。

「それを防ぐために互いの世界の人間に簡単に言えば入れ替えようという計画が生まれました。異世界の人間同士が強い絆を生み出すことによって世界の均衡を保つと言えばよいでしょうか。勿論、誰でも彼でもと言うわけにはいきません。ですからその人選は私に委ねられました。私であれば公平に選ぶことが出来るからです」

 語るはとても優しい声音だが、そこには神としての威厳があった。私情を交えず、二つの世界のために彼女は選定したのだということがありありと分かる。

「そして便宜上、彼らはこちらの世界をファンタジーワールド、あちらの世界をリアルワールドと呼んでいますので、今後の説明はそうさせてもらいますね。リビィにも分かりやすいでしょうし」

「ファンタジーワールドとリアルワールド……」

 とても簡単な名前ではあるが、イメージとしてはとても伝わりやすいとリビィは感じた。

「ええと、ガディンナ・ルールー、まとめると離れた二つの世界を近付けるために『金色の乙女』がいるってことなの?」

「ええ、そうです。二つの世界の架け橋となってもらうため、最初に選ばれた少女のうちの一人があなたです」

「え、ってことはあたしの他にもいるの?」

 それはまったく知らないことだから当然リビィは驚いた。

「はい、います。あなたはリアルワールドからの使いとなり、この世界にいる少女はあなたの代わりにあなたの世界へ導かれる運命を背負っています」

「その子はそれを知っているの?」

「いいえ、知りません。残念ながら知らせる術が今はないのです。ただ時が来れば彼女は旅立つことになるでしょう」

「それはそれで大変そう……」

 リビィはヴァーンに会えたからいいけれど、その少女はちゃんといい人に会えるんだろうか?

 そもそも何も知らないで突然あの世界に行ったら戸惑うなんてレベルじゃないような……

 名前も知らない少女に同情を覚えてしまうが、リビィとしても何とかなっているから何とかなるのだろうと結論付けた。それよりは見知らぬ彼女のためにも自分がどうして選ばれたのかを尋ねるべきだと思ったのだ。

「ところで架け橋って言ってもあたし、何も出来ないんだけど。選ばれた理由って何?」「紛れもなくあなただから選んだのです。あなたはまだ自分の力に目覚めていないだけですから問題はまったくありません」

「神様の答えとしては正しいのかもしれないけど、人間であるあたしには分からないよ、それじゃあ……」

 一生懸命理解しようと努力はしているけれど、ガディンナの物言いはリビィにはかなり難しい。

「今はそのくらいで構いませんよ。そう、完全に目覚めるにはまだ早い。ただあなたはこの世界にまた来る、それだけは確かです」

「またここに?」

「ええ、それがあなたの宿命さだめです。逃れることは叶いません」

 真っ直ぐにガディンナはリビィを見つめ、そこには真摯かつ揺るぎない意思があった。

「あたしの宿命……」

 十二歳で決まってしまっているのは何とも言いがたい気持ちになるが、それでもガディンナの言うことは正しいのだと理解する。

「けれども運命に会えたのならよかったことです」

「運命?」

「そうです、『金色の乙女』には対なる存在が必ずいますから。エリザベス=ウォルスング、あなたの心にも既にいるようですね」

「……へ」

 にこやかに笑うガディンナにリビィは一瞬固まる。彼女の心にいる、それはつまり……

「それってヴァーン……?」

 そうであったら嬉しいと思いながら少女は口にする。この世界で最初に逢えた少年が自分の運命であったのなら――!

 ちらりとヴァーンを見ると彼も驚きつつも、リビィに優しく微笑んでくれ、握ってくれている手も優しく温かい。

「ええ、あなたたちはよき運命です。今回のように様々な困難はありましょうが、あなたたちであれば二人で乗り越えていけると信じていますよ」

 ガディンナはリビィとヴァーンに微笑みかけ、二人の手に彼女の手を添えた。

「いいですか? 二つの世界の絆はあなた方の絆の強さによってかなり変化していきます。つまりは二人の婚姻に至ればそれは更に強くなるのです。『金色の乙女』が愛したものは世界に選ばれたものとなりますから、その者の考え方次第では世界を支配しようと考えるものもいるでしょう」

 そういえば地の国の連中も妻だのなんだの言ってたっけ。あれはあたしというか、『金色の乙女』を手に入れればそれでいいってことだったんだ。

 そこではたと気が付いた。

「え、婚姻ってことはあたし、ヴァーンと結婚……するってこと?」

 ガディンナの話はそう言うことで間違いないらしく、彼女は迷いもなく頷いた。

「はい、その通りです」

 運命という言葉よりも結婚とはっきり言われてリビィは自分の顔が紅潮していくのを感じる。

「リビィと?」

 一方のヴァーンも同じらしく、顔が赤い。

「あたしとだと駄目かな?」

 ヴァーンが嫌なら困ると思ってそう尋ねた。そうじゃないことを祈りつつ。

「嫌なわけない! リビィとなら! いや、リビィだからいいよ!!」

 そう少年は断言し、更に顔を真っ赤にしながらも少女から目を離さなかった。

「ヴァーン……うん、あたしもヴァーンだからいい!!」

 リビィは瞳を少し潤ませて、ヴァーンを見つめ返す。そう、彼でなくては駄目なのだ。リビィにはヴァーンが必要だ。

「とてもよい絆です。素晴らしいことですよ。あなたたちは今逢わなくていけなかったのです。だからこそエリザベス=ウォルスングはこの世界に召喚されたのですから」

「そうなの? あたしの家の絵を見たらここに来ただけなのに」

「それこそが運命であり、宿命です。あなたはあと数日、この世界に滞在したのち、リアルワールドに帰らねばなりません。そうしてあちらで学びを得てください。それがあなたの責務です」

「勉強しろってことよね。うん、分かった。頑張ってみる」

 リビィとしては勉強はかなり苦手だけれど、必要ならば仕方ない。

「ヴァーン・サイス=バウ=ム=ヴァルツェン、あなたもです。たくさん学び、王となるべく、そして『金色の乙女』の配偶者として相応しくなってくださいね」

 それがあなたが守るべきものを守ることに繋がりますとガディンナは続けた。

「分かった、俺は必ずリビィに相応しくなるよ。王としてだけでなく、人として!」

 胸を張ってそう言うヴァーンが眩しいなとリビィは思った。そして改めて自分も頑張ろうと決心する。

「エリザベス=ウォルスング、ヴァーン・サイス=バウ=ム=ヴァルツェン、二人ともいい瞳をしています」

「あ、ところで金髪だから『金色の乙女』なの?」

「そうですね、髪の色から来ているのもありますが、あなたの持つ独特のオーラが由来ですよ」

「おーら?」

「あなたの持つ力から発せられているものなので深く考えなくてもよいですよ」

「うーん、分かったです」

 納得出来るような出来ないような気はしたが、とりあえずそう答えた。

「ではあなたたちのいた場所にお返ししますね。お喋りに付き合ってくれて有り難う。またいつかお会いしましょう」

 そうガディンナは言い、彼女の錫杖を動かしてリビィとヴァーンを包んだかと思うと、世界が光り出し、二人は目を瞑る以外出来なかった。

 そうして次にリビィたちが目を開けると、ヘルオパの洞窟の広間に戻っていた。

 突然、現れた少女たちにその場で待機していたアゼルバインたちが驚いてはいたが、一番驚いていたのは当人たちだ。

 それでも今までいたところは確かにあり、女神のお陰で二人の絆は深まっていったことを自覚していたのだった。

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