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第4話 世界が色づいた ナギ視点

「好きです、付き合ってください」

幾度となく聞かされた言葉。

それに対して思ったのは「この女は誰なんだろう」「ろくに話したこともない俺に対してなんで好感を抱いてるんだ」「そんな気持ちを抱くなんて理解できない」だけだった。

断ったらこちらが悪者。

「人の好意を足蹴にした」「勇気を振り絞って告白した女の子を振るなんて最低」と告白してきた女の友人と思しき、これまたよく知らない女たちから批判されることもしょっちゅうだった。

面倒だな、と思いながらいつもの雑音だと無視する。

よく知らない女から告白されたら受け入れなくてはいけないのか?断ったらこちらが批判されるとか益々意味が分からない。

そして、人を好きになる、という気持ちもわからなかった。

わからなかった、だが。



三つ目の巫女の言葉通り、数日後には封書という形で「番いが見つかった」という報せが届いた。

同封された釣書に必要事項を書き、市役所を通してそれを渡し合い事前にお互いの情報を知り、実際に面合わせするらしい。

尚、指のサイズも釣書と一緒に知らされるために依頼した側が会うまでに指輪を作り、当日に渡す流れらしい。

デザインは国指定のものなので考えずに済むのがありがたい。

釣書交換をしておきながら、実際に会うまで相手の顔がわからないというのが不便ではある。

三つ目の巫女の意地の悪さを感じる。

「実際に会って知った方がロマンチストじゃろ?」と笑う巫女が想像できる。


相手が学業とバイトの両立をしてるせいか中々会える日がマッチしない。

こっちとしては指輪を互いに着けて「俺たちを引き離すな」と周りの女たちを牽制さえできればどうでもいいんで早く済ませたいんだが。

女たちを遠ざける事さえできるのなら、それでいい。

番いには一切の期待はしていない。


会う場所には「密室はダメだ」という制限もかかっていた。

何を危惧してるのかわからないが、過去に何かトラブルがあった結果なんだろうか。

場所を考えるのも面倒で互いの交通の便も良い、とあるホテルのロビーラウンジにした。

街中のカフェだと人目があり目立つが、ホテルならある程度こちらのプライバシーも考慮してくれるだろうし。

なにより顔がわからないが、馴染みのロビーラウンジなら俺のツレだと言えばそれで通してくれるだろう。



「御厨さま。お連れの方がお見えになりました」

ウェイターの声が俺の思考を遮った。

呼ばれふと目をやると、まだ年若いウェイターの陰に隠れるようにして一人の女が立っている。



「初めまして。えっと、藤原みやび、です」

若干頬を赤らめさせながら、淡い水色のトップスと華美過ぎない白のレーススカートを合わせた清楚に見える、艶やかな茶色の髪の毛の少女。






彼女を見た瞬間。



色の無かった俺の世界がぱっと色づいた気がした。

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