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第29話 なんちゅうもんを見せてくれたんや みやび視点

「うっわ、いいなー。海産物丼。ってか結構食べ歩きしてるなー。さすが男の人。よく食べるなぁ」

出張、というか公式SNSによると聖地巡礼というものらしい、とは言っても巡礼を作り出してる側らしいけどに行ってるナギからしょっちゅうSNSを通してダイレクトメッセージが来てた。

「旅行?うらやましいなー。ねぇ、こまめに写真送ってね」と軽い気持ちで言ったけど、こんな頻度で来るとは想像もしてなかった。

今日もバイトだったのでその間届いていた数時間分の写真付きメッセージをまとめてベッドの中でごろごろとチェックする。


その中に「勧められてた映画の1つを見た。・・・なんというか、筆舌に尽くしがたかった」と観たタイトルの映画を交えて感想?が届いた。

よりにもよってアレを見ちゃったかー、Z級って書いてたのに。

まぁ見ちゃったのなら、今度続編の方を今度二人で見ようか。

あっちの方はたぶん受け入れられる・・・と思う。

そして「サメ映画学会員なのか?」とも聞かれた。

同行してる広報の人も同志らしい。

「そうだよ」と証である学会員証明証を写真を撮って添付する。

すぐさまなんだか微妙な顔をしている犬のキャラクターのスタンプが送られてきた。

どういう意味?



ちなみにナギの公式SNS、とはいえ添えられる文章などは広報の人が担当しててナギは写真を撮られるだけらしい、には今日は訓練中の写真があげられていた。

通常、こういった出張などはその日に出先の写真を上げるんじゃなくて数日後にあげるらしい。

今回は翌日にはイレギュラーなことを考えてるらしいけど。

旅先で居合わせた人らがネットで騒ぎそうなんだけど、それは今まで一切ないってのが護国機関の闇を感じる。

道着を着てタオルで汗を拭ってる今日の公式SNSの写真はそれはそれで眼福だった。

尚、広報があげる写真以外にこまめに自撮りして私のは別のショットの写真を送ってくる。

しかも視線甘め。

特別だと言われてるようでなんか優越感。


「いつか二人で旅行行きたいなぁ」ぽつりと漏れる。

温泉って入ったことないから気になるし、何より好きな人と2人だけの旅行ってあこがれるよね。

あ、でも温泉か。

同性とはいえ他の女性とお風呂入るのは嫌だな。

裸見られたくないし。

行くとしたら家族風呂的なものがある所だなぁ。

高そうだけど。

と、考えていて「やっぱり無理、だな」と思った。

今は学校もバイトもあるし。

かといって卒業後は・・・お母さんとの約束があるから将来はどうなるのかわからない。

行きたいんだけどね。


ようやく送られた写真が終わりに近づいて、バイトの疲労からウトウトとしかけたところに新たなメッセージが届いたという報せの軽快な音が鳴る。

寝ぼけ眼で操作したら、写っていたのは寝転がりながらこちらに視線を送ってくる浴衣姿のナギ。

視線がなんだか誘ってる。

しかも浴衣、はだけてて鍛えられてる胸筋がチラ見えしてるんですけど???

直前に温泉に入ったのか頬の血色が良くて男の色気がだだ洩れなんですけど。

悩殺される。

ぴゃああああああああああああああ

思わず叫びそうになったので慌てて枕に顔を押し付ける。

私もベッドに横なってるというシチュエーション的に、今まさに添い寝してる感覚に襲われる。

ヤバイ、興奮して眠れそうにない。

明日もバイトなのに。


なんちゅうもんを、なんちゅうもんを見せてくれたんや。


なんだか悔しかったので、送られた写真と対になるように、同じように寝そべり自撮りする。

まださっきの写真の余韻が残ってて頬が紅潮してる気がするけど、多分バレないだろう。

写真を送った後で、パジャマ姿だというのに気づいた。

取り消そうかと一瞬思ったけど、時すでに遅くすぐさまに既読が付いた。

言い訳すべきかとも思ったけど、あまり引っ張るべき話題じゃないかな。

時計を見るともう寝なきゃいけない時間だった。

明日も朝からバイトなので、これ以上の夜更かしは翌日に響く。


「おやすみ」とナギの写真に向けて呟き、目を閉じるとあっという間に眠りに落ちた。



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