バリィ達にとっては価値のないものに見えていたようだったが。
彼女の翠玉色の瞳に見覚えがあった。カインの
それが何故、人の姿をしているのか。助けたってどういうことか。聞きたいことは山ほどある。
しかし、それをゆっくり聞いている暇はない。
「とにかく! 一旦行ってくるからそれまでは待ってて! お願いだから!」
「お願い……ですか?」
「お願い!」
「かしこまりました。お願い、うれしいです」
「……!」
無表情な彼女ではあったが、なんだろうか、うきうきといえばいいのか、ふんわりとした雰囲気が身体から溢れていた。
ずっとその様を見ていたいくらいの美しさだったが、そうもいかない。
カインは部屋の扉に手をかけ、彼女に声を掛けようとすると。
「忘れないでください。あなたはすごい人です。わたしは知っています。胸をおはりください」
相変わらず、彼女の翠玉色の瞳にははっきりとカインが映っている。
すこしばかり、自分を取り戻したカインが。
「ありがとう!」
カインは魔防布を持って、領主の屋敷へと駆け出した。