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クリスマスイブの告白の翌日。
冬休みは26日からということで、学校全体に浮かれた気分が広がっている。
が、春斗と美香は変わらず図書室で勉強していた。
宿題を片付けているのである。
それはそれとして、以前とは違う点がいくつかあった。
「坂登君、ここ教えて」
「ん? ああ、これは……」
二人の距離が、明らかに近い。
肩が触れ合うくらいの距離で、問題集を覗き込んでいる。
「なるほど、そういうことか」
「理解早いな」
「だって、坂登君の教え方上手だもん」
美香の素直な褒め言葉に、春斗は照れくさそうに顔を背けた。
「別に、普通だろ」
「また照れてる」
「照れてない」
そんなやり取りをしていると、図書室のドアが開いた。
「あ、いたいた!」
入ってきたのは、クラスメイトたち数人だった。
「おい坂登! 佐伯さんと付き合い始めたってマジ?」
直球な質問に、春斗は眉をひそめた。
「なんで知ってんだよ」
「そりゃ分かるって。急に仲直りして、しかもめっちゃラブラブじゃん」
「ラブラブって……」
春斗は否定しようとしたが、美香が口を開いた。
「はい、付き合ってます」
堂々とした宣言に、クラスメイトたちは歓声を上げた。
「やっぱり!」
「おめでとう!」
「坂登も隅に置けないなー」
春斗は居心地悪そうに身を縮めた。
こういう注目は苦手だ。
「うるさい。勉強の邪魔だから出てけ」
「相変わらずだなー」
クラスメイトたちは笑いながら出て行った。
最後に一人が振り返る。
「でも、良かったな。坂登も佐伯さんも」
ドアが閉まり、再び二人きりになった。
「恥ずかしかった……」
春斗がぼやく。
美香はクスクスと笑った。
「でも、隠す必要ないでしょ?」
「それは……まあ」
春斗は言葉を濁した。
正直、まだ恋人という関係に慣れていない。
でも美香と一緒にいられることは、素直に嬉しかった。
「ねえ、坂登君」
「ん?」
「私たち、同じ大学目指そうね」
美香の提案に、春斗は少し考えてから答えた。
「……分かった」
「本当? 約束だよ」
「ああ」
小指を差し出してくる美香。
春斗は苦笑しながら、指切りをした。
年が明けて、1月。
共通テストまで、あと少し。
春斗と美香は、より一層勉強に励んでいた。
「坂登君、最近すごく集中してるね」
「当たり前だろ。約束したんだから」
春斗の真剣な横顔を見て、美香は嬉しそうに微笑んだ。
「私も頑張る」
そんな妙に甘い空気を漂わせながら、2人は受験勉強に取り組んだ。