レアリナは夫カイゼルが秘密の社交場で何をしているのかを確かめるため、動き出す決意を固めた。彼の行動が何か不正なものに関わっているとしたら、それは彼女の家名、さらには彼女自身の未来をも脅かす。疑念を抱えたままでは、この孤独で冷たい生活を変えることはできない――そう確信していた。

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　カイゼルが秘密の社交場に通っているという事実を確認したレアリナは、次にその場所で行われている取引の内容を突き止めようと考えた。しかし、彼女自身がその場に入ることは不可能だった。そこで、彼女は召使いの中から信頼できる協力者を探すことにした。

　選んだのは馬車係のフレデリックだった。彼は以前からレアリナに対して控えめながらも忠実で、カイゼルの行動についても知っている可能性が高い。彼女はフレデリックに近づき、何度か会話を重ねるうちに、彼がカイゼルの秘密に少しだけ触れていることを察した。

「フレデリック、お願いがあるの。カイゼル様が行っている場所について、何か詳しいことを教えてもらえないかしら？」

　ある日の夕方、レアリナは彼に静かに話しかけた。フレデリックは一瞬だけ躊躇したが、彼女の真剣な表情を見て、ついに口を開いた。

「奥様……私は本来、何もお話しすべきではありません。しかし、旦那様が頻繁に訪れるその場所について、確かにおかしな話を耳にしています。」

　彼はカイゼルが頻繁に出入りしている社交場で、いわゆる「裏取引」が行われていることを小声で告げた。その取引には高額な資金が動き、貴族たちの間で秘密裏に進められているのだという。

「裏取引……。具体的には、どのような内容なの？」

　フレデリックはさらに小声になり、慎重に言葉を選びながら答えた。

「それは……貴族間での財産の譲渡や、違法な輸出入の話が主だと聞いています。特に、旦那様が中心的な役割を担っていると。」

　その言葉を聞いた瞬間、レアリナの胸に冷たい衝撃が走った。自分の夫が違法な活動に関わっている――それは彼女の想像を超える現実だった。

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　その翌日、レアリナはフレデリックに頼み込み、秘密裏に社交場での状況を調べることを約束させた。フレデリックはカイゼルの信頼も得ているため、彼の動きを探るには適任だった。

　数日後、フレデリックは再びレアリナの前に現れ、低い声で報告を始めた。

「奥様、旦那様があの場所で交わしている取引の一部について、いくつかの詳細を掴みました。」

　彼の手には、小さなメモ帳が握られていた。それには、取引の内容と思われる詳細な記録が記されていた。

「ここには、いくつかの違法な活動が記されています。高額な宝石の密輸、不正に徴収された税金の隠匿、そして……」

　フレデリックは言葉を詰まらせ、顔を曇らせた。

「……そして、人身売買の可能性も示唆されています。」

　レアリナはその言葉を聞き、息を呑んだ。カイゼルがどれほど冷淡で無関心な夫であっても、彼がここまでの犯罪に手を染めているとは思いたくなかった。

「……本当なの、それが？」

　震える声で問いかけるレアリナに、フレデリックは力強く頷いた。

「私も信じたくありませんが、確かな証拠があります。この記録は、旦那様の署名付きの取引記録です。」

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　その夜、レアリナは自室に戻り、フレデリックが渡してくれたメモを何度も読み返した。そこに記された取引内容は、彼女の想像を遥かに超えるものだった。

　彼女は震える手でメモを握りしめながら、自分の心に問いかけた。

「これが……カイゼルの正体？」

　夫が家の名誉を守るどころか、その名を汚すような行為を続けている現実に、彼女は深い絶望を感じた。そして、その重みが彼女自身にも降りかかることを理解していた。

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　翌日、レアリナはフレデリックと再び話し合い、この情報をどうするべきかを考えた。彼女の中には恐怖と怒りが渦巻いていたが、それ以上に湧き上がってきたのは「行動しなければならない」という強い意志だった。

「フレデリック、この情報を安全に保管してちょうだい。そして、もし何かあったときには私に知らせて。」

「承知しました、奥様。」

　フレデリックは深く頭を下げ、その場を後にした。

　レアリナは一人、部屋に残された。夫の秘密を知ったことで、これまで以上に孤独を感じたが、同時に新たな決意が芽生えた。自分がこれまでただ従順な妻として生きてきたことを後悔し、この状況を変えるために動き出す時が来たのだと理解した。

　「このままでは終わらせない……。」

　彼女の心の中で、小さな炎が灯った。それは、真実を明らかにし、自らの未来を取り戻すための第一歩だった。