カイゼルの不正を暴き、自らの人生を取り戻すため、レアリナは証拠集めを進めていた。屋敷の中での調査を進める中、召使いや馬車係などの協力を得て、次第に彼の犯罪の全容が明らかになりつつあった。しかし、レアリナは感じていた。この戦いには、もっと強力な助けが必要だと――彼一人を相手にするだけではなく、彼が築き上げた不正のネットワークそのものに立ち向かわなければならないからだ。
ある日、エドワードはレアリナに、一つの提案を持ちかけた。
「君に紹介したい人たちがいる。彼らもカイゼルの行動に巻き込まれ、傷つけられた人たちだ。」
その言葉にレアリナは驚きと同時に強い興味を抱いた。彼女はこれまで、自分だけがカイゼルの犠牲者だと思い込んでいた。しかし、彼が関わる不正が広範囲に及んでいるのならば、自分以外にも被害を受けた人がいるのは当然のことだ。そして、彼らの声がカイゼルを追い詰めるための重要な武器になるかもしれない。
「ぜひ、その方々にお会いしたいわ。」
エドワードの提案に、レアリナは力強く頷いた。
数日後、エドワードが手配した小さな集会が、彼の事務所で開かれた。そこに集まったのは、数人の女性たちだった。彼女たちはそれぞれ貴族や商人の娘であり、カイゼルによって直接的または間接的に被害を受けた人々だった。
最初に話し始めたのは、薄いピンクのドレスを纏った若い女性、クラリッサだった。彼女は震える声で語り始めた。
「私の家は、カイゼル様が仲介した取引で大きな損失を受けました。初めは信頼できる話だと思っていましたが、彼が保証していた財産が偽物だったのです。」
次に口を開いたのは、少し年上の女性、マルグリットだった。彼女の声には怒りが滲んでいた。
「私の兄は、カイゼルが主催する投資に参加し、大きな借金を抱えることになりました。彼の『成功するビジネス』という話に乗せられてしまったのです。」
それぞれの女性たちが、カイゼルに裏切られ、苦しめられた体験を語るたびに、レアリナは胸を痛めた。彼女だけではない――カイゼルは、自分の利益のために多くの人々を犠牲にしてきたのだ。
全員の話が終わった後、エドワードは静かに口を開いた。
「これで分かったと思う。カイゼルの不正は、彼の個人的な利益だけでなく、多くの人々の人生をも傷つけている。そして、今ここに集まっている君たちは、その真実を証言する力を持っている。」
レアリナは目の前の女性たちを見回した。彼女たちは最初こそ不安そうな表情を浮かべていたが、エドワードの言葉に少しずつ頷き始めた。そして、クラリッサが小さな声で言った。
「私たちが協力すれば……カイゼルを止められるでしょうか?」
その問いに、レアリナは力強く答えた。
「もちろんです。あなたたちの声が、彼の不正を暴く鍵になります。そして、私も全力で戦います。一人ではありません。皆で力を合わせれば、必ず真実を明らかにできるはずです。」
その言葉に、女性たちの目に少しずつ希望の光が灯り始めた。彼女たちは自分たちが犠牲者としてだけではなく、戦う力を持った存在であることを自覚し始めていた。
集会が終わり、レアリナはエドワードと二人で話し合った。
「彼女たちの証言を集めて、さらに確固たる証拠を作り上げましょう。」
「そうだね。そのためには、彼女たちの安全も確保しなければならない。カイゼルがこの動きを察知すれば、何をしてくるか分からないから。」
エドワードの言葉に、レアリナは深く頷いた。カイゼルは権力と金を持つ男だ。その力で彼女たちを黙らせようとする可能性は十分にある。
「私も彼女たちの安全を守るために協力します。彼女たちが再び傷つくことは、絶対に許せません。」
その言葉には、レアリナの決意が込められていた。彼女はもう、ただ耐えるだけの人間ではない。自分の力で状況を変えるため、仲間たちと共に戦う覚悟を固めていた。
こうして、カイゼルに立ち向かうための新たな仲間が集結した。彼女たちの証言は、カイゼルの不正を暴くための重要な武器となるだろう。レアリナは、これまでの自分が孤独に苦しんできたことを思い返しながらも、今は新たな希望を見いだしていた。
「もう一人で戦う必要はない。」
そう心に誓った彼女は、仲間たちと共に未来を切り開くための一歩を踏み出したのだった。