僕の高校時代を象徴するものがあるとしたら、それはやはり彼女だろう。彼女に始まって彼女に終わる。そう言っても過言ではないぐらい、彼女は僕のすべてを決定づけた。
もし彼女がそこに居なければ、僕の青春時代を彩った友情や愛情はもちろんのこと、そこから先の人生で手にしたありとあらゆる価値あるものが、僕とは無縁のものとして時の彼方へとすべり落ちていたに違いない。
なんだか自分でもずいぶんと大げさなことを言っているような気がするのだけど、これは誇張でもなんでもなく、まったくの事実だ。
そしてその場合の僕は、自らの空虚を悟ることすらなく、何も持たない自分に昏い満足感すら抱いていたことだろう。
あの頃の僕は精神的に死にかけていた。
世界に魅力を感じなかったし、未来に希望を抱くこともなく、ただ当たり障りのない人生をやるせなく生きていくことだけを心がけていた。
早い話が、わざわざ自分で人生を棒に振ろうとしていたのだ。
愛も友情もいらないと言えば達観しているように聞こえるかもしれないが、実際のところは過去のトラウマに負けて誰も信じられなくなっていただけだ。
それでも不思議なことに、そんな日々の中でさえ僕は恋をした。
だけど、当時の僕には、その恋を実らせる力も気力もなくて、けっきょくそれは空虚な想いとして日々の繰り返しの中に埋没していくはずだった。
でも、そこに彼女が現れた。
僕と彼女の交流は、この恋を切っ掛けに始まることになる。
それはわずか2年にも満たない期間であり、その中で実際に彼女と過ごした時間は、さらに短かい。だけど、それは僕にとって、かけがえのない宝物になったのだ。
だから、今は彼女のことを語ろうと思う。
僕がこの世でいちばん大好きな、その少女のことを。