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PROLOGUE

 僕の名前はアルキオネ。

 冒険者学園の1年生だ。

 孤児院育ちの平民なので、ファミリーネームは無い。


 その日も僕は、トレミー、スーフィー、ハインドの3人組からイジメられていた。

 学園の研修でダンジョンに来ているときに仕掛けてくるなんて。

 僕たちの行動は浮遊型の魔道具が撮影しているから、普通なら先生にバレるんだけど。


「あ! しまった! ぶつけちゃった~」


 とか言いながら、ハインドが撮影魔道具の後方からロングソードを叩き込み、破壊してしまった。

 どう見てもわざとだけど、きっと映ってないのをいいことに、何かにつまずいてウッカリとか言う気なんだ。

 意図的に監視の目を無くして、3人組は僕に嫌がらせを始める。


「ねえアルキオネく~ん、ちょっと運試ししない~?」

「え? いや、遠慮しておくよ……」


 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、トレミーが僕に迫る。

 運試し? そんなのする気無いよ。

 僕は逃げ腰で後退る。

 彼等の背後に、魔法陣が見えた。


「遠慮すんなよ~」


 同じ意地悪笑いをしながら、スーフィーが割り込んできて僕の腕を掴む。

 嫌な予感しかない。


「大丈夫、運が悪くてもちょっと呪われるだけらしいぜ」


 クスクス笑う3人が僕を使って試そうとしているのは、ダンジョンにある魔法陣を使った【実験】。

 ここにある魔法陣はワケありで、上に乗った者によって何が起こるか分からない。


 動物に変身したり。

 池に転移したり。

 身体能力が低下したり。

 今までできたことができなくなったり。

 夜な夜なゾンビに追い回される悪夢を見たり。

 いきなり雷が落ちてきて黒焦げになったり。


 とにかく嫌なことしか起きないってことが、冒険者学園ではよく知られている。

 毎日何もないところで必ず1回転ぶっていう、地味に嫌な呪いにかかった人もいた。

 伝承では過去に凄い能力を与えられて英雄になった人がいたらしいけど、本当かどうかは分からない。


「ほらっ! 呪われてみろよ!」


 僕の腕を掴んでいたスーフィーが、半ターン回転するような動きで引っ張った後に手を離す。

 その勢いで、僕は魔法陣の上に倒れ込んでしまった。


 魔法陣が光り始める。

 その光の色は明滅する度に変わる。

 何が起きるか分からない、呪いのシャッフルだ。

 僕は身体が何かに縛られたように動けなくなった。


「どんな呪いかな~?」

「虫に変身したら、うっかり踏み潰しちゃうかもな~?」


 3人組はニヤニヤ笑い続ける。

 小さな生き物には変身したくないなと僕は思う。


 魔法陣の光の色の変化は止まり、光量が一気に上がる。

 僕は逃げる余裕も無く、その光に飲み込まれた。

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