ラメル様の力を借りて、同時に全ての怪我人を癒した後。
驚いた表情をした人々の視線が俺に集まる。
「……君は、一体何者なんだ……?」
船医と看護師たちまで寄ってきて問う。
うーん、なんて答えよう?
転生者だとか言ったら、孤児院のみんなはショックを受けそうだし。
アルキオネが赤ん坊の頃から育ててきたミィファさんに、俺は異世界からきてアルキオネの身体に入った別人ですとか言えないし。
「さっきの魔法、光と水の複合だろう? 賢者クラスの魔法を、どうして子供が使えるんだ?」
魔導士の皆さんまで集まってきちゃったよ。
でもまさか中身は20歳ですなんて言えないしなぁ……。
「それに、蘇生魔法まで……。私が診たときはハインドくんはもう事切れていたのに」
「えっ?!」
健康状態を調べていた船医の言葉に、ハインドがギョッとする。
ユノはもう二度と息子を失うまいと思ったのか、膝に座らせたハインドを強く抱き締めた。
ハインドは傷の具合を診てもらうために上着を脱いでいるけれど、胸も背中も傷一つ無い。
「死者を蘇らせるなんて、神の奇跡でしかありえないことだよ」
「私は魔法学院の卒業生だが、あんな魔法は見たことがないよ」
「奇跡レベルの複合魔法を連続使用なんて、君の魔力は一体どうなっているんだい?」
モントル号の魔法使いたちが言う。
俺は少し考えて、転生者であることは伏せて話すことにした。
「僕はもともと、他の能力値が全て【劣】だった代わりに、魔力値が【∞】、つまり魔力が尽きることがない人間だったんです」
「「「えぇっ?!」」」
と言った時点で、魔法使いのみなさん&他の人たちまで、めちゃくちゃ驚いてしまった。
まあそうだよな。女神リイン様も∞の魔力は特別みたいなこと言ってたし。
「でも魔力が無限にあっても、知力が低かったから魔法を覚えることはできず、冒険者学園入学時は劣等生という評価を受けていました」
ふと見れば、ユノに抱きしめられたままのハインドまで真剣なまなざしでこちらを見ている。
まあ気になるよな、ここにいる人々の中で、アルキオネの変化を一番よく見てるわけだし。
「僕に変化が起きたのは、冒険者学園のかけだしダンジョンにある【呪いの魔法陣】の上に乗ったときでした。あの魔法陣の力で、【劣】だった能力値が全て【優】に変わり、全属性持ちになったんです」
「呪いの魔法陣……遙か昔に全能力値が上昇して勇者になった者がいたというアレか……」
魔法学院卒業生という魔法使いが呟く。
他校の卒業生も知ってるくらい、呪いの魔法陣はそこそこ知名度があるらしい。
「あと、【言語理解】っていうスキルを付与されました。治癒魔法は、孤児院の談話室にある聖女伝説の絵本にあった古代魔法文字から習得したものです」
セラフィナからも習っていることは伏せておこう。
水の祝福や海神の加護のことは黙っておいた。
光魔法も複合魔法も今ここにいる人たちには未知の領域みたいだからね。