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第61話:神官の訪問

 マイア孤児院のリフォームが終わり、モントル号に仮住まい中の孤児院メンバーが引っ越しを終えた頃。

 門も建物も新築みたいになった孤児院の門前に、聖職者らしき法衣姿の中年男性と、聖騎士っぽい2人の若い男女がやってきた。


「こちらの孤児院に神に選ばれし子がいると聞き、お会いしたいと思いメシエより参りました」

「失礼ですが、神に選ばれし子とは何を基準にお決めになられるのですか?」

「冒険者学園のかけだしダンジョンにある魔法陣ですよ。あの上に乗って呪いを受けずに能力値が上がった者は、神に選ばれし子であると言い伝えられております」


 穏やかな笑みを浮かべて言う神官っぽいオッサン。

 ミィファさんは【メシエ】と聞いた途端に思いっきり警戒している。

 セキュリティ面がかなりレベルアップしたマイア孤児院。

 門前の映像と音声は、コメルスの商人が防犯用にと門柱に仕込んでくれた撮影用魔道具から、リアルタイムで談話室に隣接する監視部屋に送信されている。

 今では訪問者が門柱に付いているインターホン的な魔道具のボタンを押すと映像を確認してからミィファさんが外に出て、子供たちは監視部屋のモニター的な魔道具を見るようになった。


「またセラを狙ってきたのかな?」

「違うと思うわ。聖女なら【聖なる娘】って言う筈よ」


 俺とセラフィナは受信用の魔道具に映る映像と音声を見ながら小声で話す。

 普通の声量でも防音性能UPした今の建物なら外には聞こえないけどね。

 なんとなく気分的に小声になっている。


「あの人たち、前に来た悪いオジサンたちの仲間?」


 アトラスも真似して小声で聞いてくる。

 一度不法侵入やら里親詐欺やらあったので、セラフィナの身分は隠しつつも「悪い奴がセラを狙っている」という話はしてある。


「ううん、あの人たちは多分関係ないわ。それに私じゃなくて、神官が会いたがっているのはアルじゃないかしら?」

「海賊船を壊しまくったから、神聖王国に目を付けられたかな?」


 引き続き小声で話すセラフィナと俺。

 門前での会話が終わり、「少々お待ち下さい」と言ってミィファさんだけが建物内に入ってくる。


「アル、お客様がアルに会いたいそうだから、一緒に来てくれる?」

「いいよ」


 監視部屋まで来たミィファさんが言う。

 セラフィナの言う通り、用事があるのは俺の方らしい。

 歩いてついていこうとしたら、ミィファさんに抱き上げられてしまった。


「攫われたら大変だから、抱っこしていくね」

「う、うん」


 心配性なミィファさん。

 純粋な戦闘力でいったら俺の方が強いんだけど、ここは素直に抱っこされておこう。

 抱っこされたまま玄関から出て門前まで行くと、神官たちの視線が俺に集まった。

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