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第62話:神に選ばれし子

「その銀色の髪に青い瞳、あなたが今代の勇者アルキオネ様ですね。私はメシエの神官で名をミセジと申します」

「勇者かどうかは知りません。呪いの魔法陣に乗って呪われずに能力が上がったのは僕です」


 ミィファさんに抱っこされたまま門前まで行くと、法衣姿のオジサンが穏やかな口調で名乗ってくる。

 名前まで知ってるってことは、ある程度の情報を得てから来たんだろう。

 スバルは転生者であることは隠したまま、呪いの魔法陣に関することだけを告げた。


「あの魔法陣は、もともとは勇者選定のために作られたものなのですよ」

「学園ではそんな話は聞いたことがないです」


 ミセジさんの情報は、メシエだけに伝わるものだろうか?

 学園敷地内にあるのに、スバルが読み漁った学園図書館の本にはそんなことは載ってない。

 大昔に呪われずに能力値が上がり、勇者になった人がいるらしいと書いてあるだけだ。


「この情報は普段は秘匿されておりまして、勇者に選定された子が現れたときのみ伝えられるのです」

「秘匿されていることを、今こんな場所で話しちゃってもいいんですか?」

「メシエの神官さんが、どうしてプレアまでそれを伝えに来るんですか?」


 ミセジさんは優しそうな雰囲気で悪い人には見えない。

 けれどセラフィナのことがあるから、スバルもミィファさんも警戒している。

 孤児院の前の道は人通りが少ないとはいえ、秘密を気軽に打ち明けられるような場所じゃないと僕も思う。


「近々公式に発表されることですし、こうした開けた場所で人目につきやすい方が奴等も邪魔できませんから」


 そう言いながら、ミセジさんが背後の民家の屋根を見上げる。

 護衛のお兄さんとお姉さんも同じ方を見て、そっと片手を武器に添えた。

 まるで、何かを警戒しているみたいだ。


 ミィファさんには見えなかったけれど、スバルと僕には見える。

 屋根にいた人影が、サッと動いて建物の反対側へ逃げていった。

 怪しさしかないあの人影は、一体何なんだろう?


「それで、僕は何をすればいいんですか?」

「メシエの大神殿で、勇者認定の儀を受けて頂きたいのです」

「それを伝えるためだけに、わざわざここまで来たんですか?」

「手紙や魔導通信は、妨害する輩がおりますので……」


 ミセジさんの用件は、スバルを大神殿に呼ぶことだった。

 勇者認定って、何するんだろう?

 スバルの記憶にあるゲームやアニメでやってるような儀式っぽいものかな?


「アルはまだ6歳です。危険な国には行かせたくありません」


 ミィファさん、ストレートに言うなぁ……

 手紙や魔導通信を妨害されるなんて聞いたら、そう思うかもしれないけど。

 セラフィナがメシエから逃げてきた話は、既にバランさんとミィファさんは知っている。

 ハッキリ「危険」と言うミィファさんに、ミセジさんは少し驚いているし、護衛の2人は少しムッとしていた。


 でも確かにメシエという国は、普通に行ける雰囲気じゃないね。

 メシエの王子に、セラフィナを殺そうとした奴がいるよね?

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