「七人もいるんじゃ、篤也くんの車だけじゃ足りないからね」
そう言って耀が持ち出してきたのは軽トラだった。
「先生の車は四人乗りだから、結局一人余るんだが」
つぶやく希美に、耀は満面の笑みで告げる。
「大丈夫、荷台があるわ」
「それは道交法的にアウトだ!」
「ぐるぐる巻きにして箱詰めにしておけば、あなたひとりくらい誰も気がつかないわよ」
「何この人!? 怖い!」
耀の言い様にどん引きする希美。
「バニースーツなんて着て西御寺先生を誘惑するからでしょ」
肩をすくめる未来。平静を装っているが間違いなく面白がっている。
「好きで着たわけじゃない!」
「似合ってたよねえ、あれって」
遠い目をする朋子。
「先輩って、時々アブナイスイッチが入りますよね!?」
「いやいや、それは気のせいだよ」
朋子はパタパタと手を振って否定する。希美はなおも疑念を持っているようだったが、気にすることなく篤也に向き直った。
「わたしは希美ちゃんとサイドカーで追いかけますから、先に出発して下さい」
シートが足りないための苦肉の策だ。決して希美とふたりきりになるのが目的ではない……と思いたい。
「そうか、すまないな。ガソリン代は希美につけておいてくれ」
「なんでわたし!?」
ギョッとする希美。
「いやいや、後輩にたかるのはダメですってば」
後輩に金銭を支払わせないのは朋子のポリシーだ。もちろん、篤也も冗談を口にしただけだろう。
「よし、それでは早速出動だ。みんな地球防衛マシンに乗り込め」
マイカーを指差して部員たちに指示を出す篤也。
どう見ても、普通の車だがわざわざツッコミを入れる者はいなかった。
それぞれに車に乗り込む中、篤也はひとり突っ立ったままのエイダに声をかける。
「どうした? 行くぞ、エイダ」
「あ……は、はい」
らしくもなくぼーっとしていたエイダも慌てて車に乗り込む。
薄暗い夜道を走り去る車のランプをを見送ったあと、朋子が不思議そうに首を傾げた。
「どうしたんだろ、エイダちゃん? ちょっといつもと様子が違っていたけど」
「さっき部室に集まった時は普通でしたけど」
希美も頷いたが考えて分かることでもない。それに今はゆっくりとはしていられなかった。
まずはサイドカーを借りるために朋子の従兄に連絡しなければならない。
ふたりは校内に設置された公衆電話を目指して走り出した。