俺とココ、それにシュリアとその妹のミラリスは、皆と少し離れた場所に座った。
ミラリスのほっぺたには、まだ痛々しい擦り傷が残っている。
血はまだ滲んでいて、女の子なのに
実験を兼ねて、やってみよう。
「ココ」
「はい、救世主様」
「俺と、手を繋いでくれ」
「やった! 救世主様の手、私好きですわ。ふふふ。貴族の娘として、はしたないですわよね?」
顔を赤らめ、上目遣いで俺の手を握るココ。
そして、俺に向けてニコッと笑顔を見せた。
あかぎれだらけの手だ。血まで滲んでいて痛そうだな。
水くみやら洗濯やらの水仕事をしてきている手だと思った。
奴隷としての仕事は毎日きっちりこなしていたんだろうな。
ココは俺の手を両手で握ると、俺を上目遣いで見て恥ずかしそうに笑った。
肌は荒れてガサガサの手だったけど、温もりは伝わってきた。
なんともいえぬ感情が湧き上がってきたけど、今はまず実験だ。
「じゃあミラリス、俺のこっちの手をお前が握ってくれ」
「うん!」
ミラリスがもう片方の俺の手を握る。
「よし、じゃあ治癒ができるか試すぞ。えーと、どうすればいいんだこれ。えー。チンカラホイ!」
適当に叫んでみたが、なにも起こらない。
「じゃあココがミラリスの傷を治そうと思ってくれ」
「はい、さっきからそう思っているのですけれど……なんだか、身体がピリピリするばかりで……」
見ると、ココのステータスは、
●E
▲D
■E
✿ENP
★Ultra
うーん、この✿のマークのENPってやつが気になるな。
いま、ココの中の何かはからっぽになってるのだろう。
それに、★がSSSSSから、Ultraに変化している。
Ultraってなんだ?
もしかしたらSSSSSよりさらに上ってことか?
シュリアを見る。
シュリアのステータスは、
●C
▲A
■A
✿E
★S
なるほど、✿がEか……。 もともとAだったはずだが、傘の形をした防護魔法を使ったときにCになっていた。その後、村のみんなに治癒魔法をかけていたので、その分消費してEになっているということか。
別に、✿はエンプティになっても死ぬとかじゃなさそうなので、今度はシュリアで試してみよう。
「ココ、ありがとう。もういいぞ。じゃあ今度はシュリア様が俺の手を握ってくれ」
シュリアと手を握り直し、もう一度試してみる。
「えーと、キュアップラパパ!」
俺が叫ぶと、先ほどと同じくピンク色の光がパッと俺たちを包んだ。
そして、ミラリスのほっぺたの傷がみるみるうちに治っていく。
まるで最初から何もなかったかのようにきれいな肌に戻った。
「すごい……私の治癒魔法なんて、せいぜい傷口をかさぶたにする程度なのに……こんなに綺麗に直しちゃうなんて……やっぱりトモキは救世主かも……」
シュリアが妹のほっぺたを撫でながら言った。
ビゴンッと音が鳴ってシュリアのステータスが変化する。
●C
▲A
■A
✿E⇒F
★S
「シュリア様」
俺が呼びかけると、シュリアは言った。
「いいえ、シュリアと呼び捨てでいいわよ。トモキ、あなたは確かに救世主だわ」
「じゃあシュリア、なんか自分の中で変化はないか?」
俺がそう聞くと、シュリアが答える。
「そうね、なんだか魔力を使い果たしたときみたいな、だるさは感じるけど……。でも私、今は魔法使ってないわよ。そもそも、傷跡まで完璧に治す魔法は使えないし……これはトモキの魔法よね?」
「そうなのか……そうなのかもな」
そのとき、ココが言った。
「私も、さっきからずっと身体のだるさは感じていましたわ……。救世主様を前にして失礼ですが、少し、……休ませていただいてもよろしいかしら……」
そして、草むらの上で、コテッと横になって寝息を立て始めるココ。
そっか、ニッキーを回復してからずっと✿がENPだったもんな。
ずっと我慢していたんだろう。
「魔力を使い果たしたときと同じ感じね……私も、少し休みたいわ……」
シュリアが言う。
シュリアが使える治癒魔法は、傷跡を綺麗になおすレベルではないとのことだった。
つまり、ミラリスのほっぺたを治癒させたのは、俺の能力ということになるのか。
あのとうもろこし女神が言っていた、新しい能力ってこのことか。
総合して考えると。
つまり……✿が魔力ということか?
つまり、他人の魔力を使って何らかの魔法を使える……?