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第12話 Ultra

 俺とココ、それにシュリアとその妹のミラリスは、皆と少し離れた場所に座った。


 ミラリスのほっぺたには、まだ痛々しい擦り傷が残っている。

 血はまだ滲んでいて、女の子なのにあとが残らなければいいが……。


 実験を兼ねて、やってみよう。


「ココ」

「はい、救世主様」

「俺と、手を繋いでくれ」

「やった! 救世主様の手、私好きですわ。ふふふ。貴族の娘として、はしたないですわよね?」


 顔を赤らめ、上目遣いで俺の手を握るココ。

 そして、俺に向けてニコッと笑顔を見せた。

 あかぎれだらけの手だ。血まで滲んでいて痛そうだな。

 水くみやら洗濯やらの水仕事をしてきている手だと思った。

 奴隷としての仕事は毎日きっちりこなしていたんだろうな。

 ココは俺の手を両手で握ると、俺を上目遣いで見て恥ずかしそうに笑った。

 肌は荒れてガサガサの手だったけど、温もりは伝わってきた。

 なんともいえぬ感情が湧き上がってきたけど、今はまず実験だ。


「じゃあミラリス、俺のこっちの手をお前が握ってくれ」

「うん!」


 ミラリスがもう片方の俺の手を握る。


「よし、じゃあ治癒ができるか試すぞ。えーと、どうすればいいんだこれ。えー。チンカラホイ!」


 適当に叫んでみたが、なにも起こらない。


「じゃあココがミラリスの傷を治そうと思ってくれ」

「はい、さっきからそう思っているのですけれど……なんだか、身体がピリピリするばかりで……」


 見ると、ココのステータスは、

●E

▲D

■E

✿ENP

★Ultra


 うーん、この✿のマークのENPってやつが気になるな。

 いま、ココの中の何かはからっぽになってるのだろう。

 それに、★がSSSSSから、Ultraに変化している。

 Ultraってなんだ?

 もしかしたらSSSSSよりさらに上ってことか?


 シュリアを見る。

 シュリアのステータスは、


●C

▲A

■A

✿E

★S


 なるほど、✿がEか……。 もともとAだったはずだが、傘の形をした防護魔法を使ったときにCになっていた。その後、村のみんなに治癒魔法をかけていたので、その分消費してEになっているということか。


 別に、✿はエンプティになっても死ぬとかじゃなさそうなので、今度はシュリアで試してみよう。


「ココ、ありがとう。もういいぞ。じゃあ今度はシュリア様が俺の手を握ってくれ」


 シュリアと手を握り直し、もう一度試してみる。


「えーと、キュアップラパパ!」


 俺が叫ぶと、先ほどと同じくピンク色の光がパッと俺たちを包んだ。

 そして、ミラリスのほっぺたの傷がみるみるうちに治っていく。

 まるで最初から何もなかったかのようにきれいな肌に戻った。


「すごい……私の治癒魔法なんて、せいぜい傷口をかさぶたにする程度なのに……こんなに綺麗に直しちゃうなんて……やっぱりトモキは救世主かも……」


 シュリアが妹のほっぺたを撫でながら言った。

 ビゴンッと音が鳴ってシュリアのステータスが変化する。

●C

▲A

■A

✿E⇒F

★S


「シュリア様」


 俺が呼びかけると、シュリアは言った。


「いいえ、シュリアと呼び捨てでいいわよ。トモキ、あなたは確かに救世主だわ」


「じゃあシュリア、なんか自分の中で変化はないか?」


 俺がそう聞くと、シュリアが答える。


「そうね、なんだか魔力を使い果たしたときみたいな、だるさは感じるけど……。でも私、今は魔法使ってないわよ。そもそも、傷跡まで完璧に治す魔法は使えないし……これはトモキの魔法よね?」


「そうなのか……そうなのかもな」


 そのとき、ココが言った。


「私も、さっきからずっと身体のだるさは感じていましたわ……。救世主様を前にして失礼ですが、少し、……休ませていただいてもよろしいかしら……」


 そして、草むらの上で、コテッと横になって寝息を立て始めるココ。

 そっか、ニッキーを回復してからずっと✿がENPだったもんな。

 ずっと我慢していたんだろう。


「魔力を使い果たしたときと同じ感じね……私も、少し休みたいわ……」


 シュリアが言う。


 シュリアが使える治癒魔法は、傷跡を綺麗になおすレベルではないとのことだった。

 つまり、ミラリスのほっぺたを治癒させたのは、俺の能力ということになるのか。

 あのとうもろこし女神が言っていた、新しい能力ってこのことか。


 総合して考えると。

 つまり……✿が魔力ということか?


 つまり、他人の魔力を使って何らかの魔法を使える……?


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