「クソが、クソっ!!! あぁぁっ!!! 忌々しいっ!!!」
吐き捨てるような怒声が響き渡る。
大広間の空気がビリビリと震える。
「ガチャン!!!」と何かが砕け散る音が響き来る。
きっと、
侍女の
露わとなった豊満なる乳房をタプンタプンと揺らしながら。
主が怒りを持て余し、その挙句に魔力を暴走させてしまえば若き淫魔のようなか弱い存在などは、それだけで消滅しかねないのだ。
淫魔どものように逃げ出す訳にも行かない私は頭を垂れ、首を
怒りの波動がチリチリと肌を苛む。
灼熱の針が突き刺さるようにして。
私が居るのは魔王城の中心に在る重厚壮麗なる玉座の間。
高々とした天井からは数多の黒水晶に彩られた華麗なシャンデリアが幾つも下がり、壁際には金大理石で造られた大小様々な石像がずらりと居並んでいる。
中央に据えられた豪奢なる玉座に座し、まさしく炎を噴き出さんばかりに怒り狂っているのは、我が主たる魔王様だ。
その姿こそ小柄で色白な可愛らしき少年であるものの、爛々と輝く黄金色の眼から迸る魔力は膨大なものであって、全身を薄らと覆う薄紫のオーラは如何なる魔法をも、あらゆる物理攻撃すらものともしない絶対的な障壁となっている。
魔王様はその魔力で生み出した万眼鏡にて、狂将ガルゴス率いる魔王軍精鋭部隊と勇者一行との遭遇戦を見守っていた。
けれども、ガルゴスの部隊は実に呆気無く壊滅してしまったのだ。
まさしく鎧袖一触と言わんばかりに。
ガルゴス、そして我等が精鋭部隊が不甲斐無いと言うよりも、憎き勇者一味が桁外れに強過ぎたのだ。
勇者の舞い踊るが如き流麗な剣捌き
驟雨の如く繰り出される賢者の魔法
鉄壁の如き戦士のガードに可憐なる女神官が放つ光溢れる神聖魔法
敵ながら圧巻とも天晴れとも言える華麗な戦い振りだった。
そして、
実に、誠に忌々しきものだ。
魔王様ほど露骨に現わさぬものの、この私とて腸が煮えくり返るような思いを抱いているのだ。