魔王様の腹心であり、魔王軍の総指揮官でもあり、そして私たち四魔侯にとっては『上司』とでも言うべき存在。
彼の執務室に喚び出された私は、告げられた言葉によって絶望の滝壺へと叩き落とされていた。
表向きこそ何とか平静を装ってはいるものの、内心は絶望や恐怖、苦悩や混乱で
重々く咳払いをした
「
貴侯には勇者一味の『威力偵察』に趣いて頂きたい。
本気で戦いを仕掛けるのでは無く、探るように攻撃を仕掛けて奴らの能力や戦い振りを見極めるのだ。
明日にでも城を出発し、早々に務めを果たされよ。
これはな、魔王軍の盛衰にも関わる重大な任務である。
急を要する事態なのだ。
宜しく頼み申す」
私は俯いたままで、頭の上から響き来る重々しい言葉に耳を傾けていた。
聳え立つ
まるで冷たい水のように、絶望が身体に染み渡って行くかのようだった。
私は心の中でこう絶叫する。
『嫌だっ!
絶対に、絶対に嫌だ!』と。
部屋の中をふわふわと漂う浮遊蝋の赤紫の灯がゆらゆらと揺らめく。
それはまるで、怯えきった私の内心を嘲笑っているかのように思えてしまった。