後日、再び秋(あき)の部屋で汐花(しおか)と会うと、秋は先日の公園での出来事はなんだったのか、と汐花を問いただした。
「べ〜つに。あれで、旦那の心理をはかったってだけよ」
「旦那さんの心理?」
「たぶん、あっちは不倫してるわね」
「えっ?」
「だって、普通、パート先のアルバイトの男だとしても、挨拶なんかしないと思わない?完全にあたしを女として見てない証拠だし、別に奪われたっていいと考えてる。それを証明したかったのよ」
「そ、その……レスなんですか?」
「あぁ……、セックスレス?そうよ」
二人のあいだにしばしの沈黙がおりた。秋はきわめて気まずそうにし、汐花はなんとも思っていない表情だ。
「ぼ、僕とは、したいと思うんですか?」
「ど〜だろ。試してみる?」
「えっ?」
「旦那が不倫してるっぽいって分かったから、こっちも堂々と不倫できる」
秋の部屋に秋と汐花がふたり裸の状態でいることに変わりはないけれど、今まで点で交わらなかったものが、その時は交わったという点で大いに現象としては異なる結果になった。
もちろん、それは破滅への階段をズンズンと降っているのに他ならず、ステップアップではなくステップダウンとしか言いようがなかった。
【つづく】