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【連載小説】久しぶりの再会 第5話 保証付きの恋などない

 わずかに詩織に対して気持ちが芽生えたような気がする。恋愛感情だ。気のせいだろうか。でも、そんな気がする。先日詩織に訊いたら、僕に対して恋愛感情はないと言っていた。きっと、今も変わらないだろう。多分。


 僕はたまに文章を書く時がある。気が向いた時に。詩というか、小説というか。とは言ってもショートショートだが。誰かに恋をしたり、腹が立ったり、悲しい思いをしたり、楽しい気持ちになったり。そういう気持ちに変化が現れた時に書く。


 今回は詩織に対しての短い文章を書こうと思う。『いつも僕の相手をしてくれてありがとう。嫌な顔もせずに。僕は嬉しいよ。君のような女性に再会出来て、ありがたいよ。感謝している。僕は君に少し恋心を抱くようになった。でも、君には僕のことなど気にも留めてないだろう。そう思うと少し寂しい。でも、僕は諦めない。いつか、きっと僕と交際したくなるように頑張る!』


 こんな感じの文章を書いてみた。これを見せたらどう思うだろう。嫌がるだろうか。それとも、嬉しく思ってくれるだろうか。僕は詩織に肉体関係を求めるが、純粋な気持ちを抱くこともある。特に女性に対して。


 今のところ、この文章を見せる気はない。気持ち悪がられてもショックだし。詩織の柔らかい肉体に初めて触れた時は、あまりの気持ち良さにどうにかなってしまいそうだった。でも、それは僕側の反応であって、彼女はどう感じたのだろう。


 僕は詩織を抱くために、正社員になることを決めた。不純な動機。これじゃあ、純粋とは到底言えない。僕は自嘲した。 もう一度、確認の意味を込めて、僕のことをどう思っているか訊いてみようかな。それで前と変わらない、と言われたら、時間をかけて僕のことを好きになってもらおう。好きになってくれる保証はないが。まあ、どんな恋愛も保証付きの恋などないだろう。所詮、そんなもの。


 僕は詩織にLINEを送った。

<詩織、ちょっと訊きたいことがあるんだ。詩織は以前、僕に対して恋愛感情はない、と言っていたけれど、それは今も変わらないの?>

 暫くして、LINEがきた。詩織から。

<うーん、そうだね。変わらないかな>

 案の定だ。

<じゃあ、時間をかけて僕のことを好きになってもらおうかな> また、暫くLINEはこない。そして、三十分くらい経過して詩織からのLINEがきた。

<何で? 好きになってもらうって、どういうこと?><それは、ご想像にお任せします>

 考えているのだろうか、また、LINEがストップした。  そして、ようやくきたLINEはというと、

<もしかして、違うと思うけど、まさか新沼くん、あたしのこと……>

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