僕の気持ちを詩織に悟られたか。でも、今はまだ告白する気はない。なので、僕は詩織の発言を否定した。そういうわけじゃないよ、と。でも、詩織は、「本当?」と言い、「あたしに気があるように聞こえたけれど」と言った。僕は、「いや、それは勘違いだよ」と言うと、「あっそ」と素っ気ない返事だった。まずかったかな。まあ、いいか。いちいち気にしてられない、と思った。詩織は怒ってしまったのかな。急に黙ってしまった。そんなに怒ることだろうか。彼女にとっては気に障ることだったのかもしれない。でも、怒っているかどうかはさすがに訊けないので、時間が解決するのを待つことにした。いずれ、怒りも冷めるだろう。
僕は久しぶりに男友達と遊ぼうかとスマホの電話帳を開いた。
今日までバイトなので、十四時に帰って来た。両親にはまだ明日から正社員になることは言っていなかった。忘れていた。なので、夜、父が仕事から帰宅したら両親に話そうと考えている。 十九時くらいに父は帰宅した。父は営業の仕事をしている。聞いた話しだとノルマがきついらしく、大変なようだ。でも、何とか辞めずに続いている。さすがは我、父。まあ、家族がいるから責任も伴うから、仕事も簡単に辞められない。家庭を持つということはこういうことか、と思った。僕は二人に声をかけた。「父さん、母さん。ちょっと、話したいことがあるから聞いて」と言うと、父は疲れているのか、面倒臭そうな態度で、「なんだ」と不機嫌そうだ。「僕、明日からコンビニの仕事、正社員だから」そう言うと母は、「え! そうなの? 良かったじゃない」と感心していた。父は、「そうか。頑張れよ! 正社員には自分からなりたいと店長に話したのか?」父は笑顔を浮かべながら言った。「そうだよ」僕はそう言った。