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第15話 友達の存在と実家での食事

 僕は他の人にお金を払って友達とエッチしている、とは言うわけがない。そんなこと口外したら、それこそ警察沙汰になりかねない。売春という名の犯罪。


 帰りに一度実家に戻る。詩織の仕事は十九時までだから、その時間になったらLINEをしてみる。玄関から居間に行くと父はまだいなかった。最近、詩織のアパートに入り浸っているから、父の顔を見ていない。母はキッチンにいて、夕食を作っている。僕は母に話しかけた。

「ただいま」

「あら、いたの。今夜も夕ご飯いらないの?」

 僕は焦って否定した。

「いやいや、今夜は食べるよ」

 母は笑いながら言った。

「彼女でも出来たの?」

 僕は驚いた。

「いや、出来てないよ」

 母は、ふーん、と言いながら、

「だって、最近、家にあまりいないじゃない」

 確かにそうだ。でも、と僕は反論した。

「彼女というか、友達だよ」

 母は笑みを浮かべて、

「やっぱり、女の子なんだね」

 そう言われて僕は照れくさくなった。

「まあね」

 と適当にあしらった。


 僕は居間に行き、ソファに座った。

「ふー、疲れた」

 と独り言を言った。


 僕には妹がいる。姿が見えないが、自分の部屋にいるのだろうか。母に訊いてみた。

「母さん、心愛ここあは?」

「心愛? 部屋にいるんじゃないの」

「そっか」

 妹にも暫く会っていない。元気にしているのだろうか。まあ、あいつのことだから元気だろう。たまに、一緒にご飯を食べるのも悪くない。心愛のことは、妹として好きだ。心愛はどう思っているのかな。訊いたことないけれど。訊く必要もないけれど。母が話しかけてきた。

「今夜はカツよ!」

 僕はそれを聞いて、

「お! 旨そう。楽しみだ」

 母は、

「きっと美味しいと思うよ」


 その時、詩織の夕ご飯のことを思い出した。また、コンビニ弁当だろうか。一人暮らしだから仕方ないとはいえ、何か可哀想だ。これは無理な話しだけれど、母が作ったカツを詩織におすそ分けしたい。スーパーマーケットでカツを買って持っていってやろう。


 母は、

「支度出来たから食べるよ」

 二階にいる心愛にも声を掛けに母は行った。


 二階から降りて来た心愛は、

「あ! お兄ちゃんだ! 久しぶり」

「そうだな。久しぶりだな」

「最近、見ないけどどこに行ってるの?」

 やはり訊かれたか。

「友達の家だよ」

 そう言うと、ふーんと母のように僕の言うことを信じていないように感じられた。

 母はトレーにカツと味噌汁とライスを順番に載せて持ってきて、居間のテーブルの上に置いて行った。僕は思い出したことを言った。

「あ、母さん。明日は夜勤だから、夕ご飯を食べてから出勤するから」

「そうなんだ、わかった」

 僕は食べながら言った。

「夕ご飯食べたら、出かけてくるよ」

 妹は、

「お兄ちゃん、また出掛けるの?」

 心愛はいかにも僕が悪さをしているように言った。

「うん、呼ばれているんだ」

「へえ、彼女?」

 心愛は母と同じことを訊く。

「いや、さっきも言ったけど、友達だよ」

「そうなんだ」

 時刻は十八時半頃。シャワーを浴びる時間はあるな、と思い僕の部屋から下着を持ってきてシャワーを浴びた。

 それから、部屋に行き、青いTシャツと黒いチノパンに着替えた。それから、スマホと財布を小さいバッグに入れ、車の鍵は手に持ち、居間を通り過ぎる時、

「父さんは?」

 と気になっていたので、訊いた。母は、

「最近、残業が多いみたいで遅いのよ」

 僕はこう言った。

「そうかぁ、体壊さなければいいけどな」

「そうね」

「じゃあ、行ってくるわ」

 そう言い、家から出て車に乗り詩織のアパートに向かった。車の中の時計を見ると、19:06と表示されていた。

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