目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第16話 彼女は体調不良

 スーパーマーケットに寄り、詩織の惣菜を買った。カツと山菜の天ぷら。これで彼女は帰って来てからおかずを作る必要はない。喜んでくれると嬉しいな。只今の時刻は十八時五十分。あと、十分で詩織の勤務が終わる。彼女の部屋を見てみた。あれ? 電気ついてる。部屋にいるのかな? 試しにLINEを送ってみよう。

<こんばんは、今、どこにいるの? 僕は詩織のアパートの傍にいるんだけど>

 少し経過してからLINEは十九時前にきた。もしかして、今日仕事休んだのかな。本文を開いてみると、

<え、傍にいるの? 入ってきていいよ。仕事はさすがに行けなかったから休んだよ>

 やはりそうなのか。まあ、仕方ない。今朝は僕から見ても荒れていたから。僕は車から降りて詩織の部屋のドアの前に立ち、引いてみた。鍵はかけてなかったようで開いている。不用心だな。僕は、「こんばんはー」

 と言ってから、

「上がるよー」

 そう言うと、

「どうぞー」

 と聴こえた。

 上がってみると今朝のような荒れた詩織ではなく、ベッドも直してあるしいつもの彼女だった。良かった。

「今朝はごめんね。どうかしてた」

「それより、晩御飯食べたのか?」

 詩織は頭を左右に振った。

「そうか。ここに来る時、スーパーマーケットに寄って惣菜を買ってきたんだ。食べないか?」

 詩織は微笑を浮かべて、

「ありがとう、いただくよ」

 そう言ってくれた。僕は買い物袋からパックに入っている惣菜を取り出した。

「カツと山菜の天ぷらだよ。もしかして、あんまり食欲ないのか?」

 詩織は頷いた。

「でも、せっかくだから食べるよ」

 僕はそれに対し、

「いや、無理しなくていいんだぞ」

 僕は心配になった。

「うん、大丈夫だよ」

「そうか、じゃあ、これ」

 僕は詩織に惣菜を手渡した。彼女はそれを受け取り、立ち上がりキッチンに行って茶碗を戸棚から取り、炊飯器から冷めたご飯をついだ。僕は言った。

「ご飯、冷たいんだろ? チンしたらどうだ?」

「うん、温めるよ」

 詩織は電子レンジにご飯茶碗を入れ、温め始めた。

 数分温めて、レンジから出した。そして、それらを居間のテーブルの上に置き、そこに座った。詩織の顔を見ると、あまり顔色が良くない。まだ、体調不良なのだろうか。心配だ。食べ始めて、突然、詩織は口に手を当てながらトイレに慌てて行った。吐くのだろうか。暫くトイレにいてから部屋に戻ってきた。

「ごめん……吐いちゃった……」

 詩織は俯いていた。

「だから、無理するなって言ったのに」

 僕がそう言うと、

「だって、せっかく買ってきてくれたのに、食べなかったら悪いじゃない」

 と詩織は言った。

「悪いとか、そんなこと気にしなくていいって。吐いたら元も子もないだろ」

「まあね」

 僕は更に言った。

「病院に行くか?」

 詩織は頭を左右に振って、

「行かない」

 と言った。

「まあ、今日は早めに寝て、明日に備えた方がいいよ」

 僕がそう言うと、詩織はベッドに入った。

「僕も今日は帰るよ。僕がいたら気になるだろ?」

 彼女は目に涙を浮かべながら、

「お願いだから傍にいて……」

 いたほうがいいのか。

「わかった、傍にいるから安心してくれ」

「ありがと」

 そう言って、僕はベッドの横に移動した。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?