スーパーマーケットに寄り、詩織の惣菜を買った。カツと山菜の天ぷら。これで彼女は帰って来てからおかずを作る必要はない。喜んでくれると嬉しいな。只今の時刻は十八時五十分。あと、十分で詩織の勤務が終わる。彼女の部屋を見てみた。あれ? 電気ついてる。部屋にいるのかな? 試しにLINEを送ってみよう。
<こんばんは、今、どこにいるの? 僕は詩織のアパートの傍にいるんだけど>
少し経過してからLINEは十九時前にきた。もしかして、今日仕事休んだのかな。本文を開いてみると、
<え、傍にいるの? 入ってきていいよ。仕事はさすがに行けなかったから休んだよ>
やはりそうなのか。まあ、仕方ない。今朝は僕から見ても荒れていたから。僕は車から降りて詩織の部屋のドアの前に立ち、引いてみた。鍵はかけてなかったようで開いている。不用心だな。僕は、「こんばんはー」
と言ってから、
「上がるよー」
そう言うと、
「どうぞー」
と聴こえた。
上がってみると今朝のような荒れた詩織ではなく、ベッドも直してあるしいつもの彼女だった。良かった。
「今朝はごめんね。どうかしてた」
「それより、晩御飯食べたのか?」
詩織は頭を左右に振った。
「そうか。ここに来る時、スーパーマーケットに寄って惣菜を買ってきたんだ。食べないか?」
詩織は微笑を浮かべて、
「ありがとう、いただくよ」
そう言ってくれた。僕は買い物袋からパックに入っている惣菜を取り出した。
「カツと山菜の天ぷらだよ。もしかして、あんまり食欲ないのか?」
詩織は頷いた。
「でも、せっかくだから食べるよ」
僕はそれに対し、
「いや、無理しなくていいんだぞ」
僕は心配になった。
「うん、大丈夫だよ」
「そうか、じゃあ、これ」
僕は詩織に惣菜を手渡した。彼女はそれを受け取り、立ち上がりキッチンに行って茶碗を戸棚から取り、炊飯器から冷めたご飯をついだ。僕は言った。
「ご飯、冷たいんだろ? チンしたらどうだ?」
「うん、温めるよ」
詩織は電子レンジにご飯茶碗を入れ、温め始めた。
数分温めて、レンジから出した。そして、それらを居間のテーブルの上に置き、そこに座った。詩織の顔を見ると、あまり顔色が良くない。まだ、体調不良なのだろうか。心配だ。食べ始めて、突然、詩織は口に手を当てながらトイレに慌てて行った。吐くのだろうか。暫くトイレにいてから部屋に戻ってきた。
「ごめん……吐いちゃった……」
詩織は俯いていた。
「だから、無理するなって言ったのに」
僕がそう言うと、
「だって、せっかく買ってきてくれたのに、食べなかったら悪いじゃない」
と詩織は言った。
「悪いとか、そんなこと気にしなくていいって。吐いたら元も子もないだろ」
「まあね」
僕は更に言った。
「病院に行くか?」
詩織は頭を左右に振って、
「行かない」
と言った。
「まあ、今日は早めに寝て、明日に備えた方がいいよ」
僕がそう言うと、詩織はベッドに入った。
「僕も今日は帰るよ。僕がいたら気になるだろ?」
彼女は目に涙を浮かべながら、
「お願いだから傍にいて……」
いたほうがいいのか。
「わかった、傍にいるから安心してくれ」
「ありがと」
そう言って、僕はベッドの横に移動した。