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第28話 干し柿爆発!? ピコリーナ温泉珍道中 前編

正月明け、札幌駅前のビルの一室。


「ピコリーナ・カンパニー」では、ようやく年末年始の修羅場を乗り越えたメンバーたちが、どこか抜け殻のような表情でソファに沈んでいた。


「いや~、大晦日の“埴輪福引き大会”、ほんとギリギリだったのです」


佳苗がソファに寝そべりながら、ぶりっこポーズでバナナミルクをすする。「ねっ、千歳?」


「福引きってレベルじゃなかったでしょ。埴輪が自走して逃げたの初めて見たわ」


千歳は苦笑しながら、膝に座る猫型の湯たんぽを撫でる。見た目は猫、名前は“はにゃん”。もちろん中身は埴輪だ。


部屋の隅では、リィナが女神然とした神々しいポーズで茶を啜っていた。


「そなたたちの新年初働き、誠にご苦労であった。女神として、褒美を与えねばなるまいのぅ……ふむ、何が良いか……焼き芋?」


「ご褒美に焼き芋て」


レミットが小声でつっこむが、誰にも聞こえない。


彼女の声は蚊の鳴くような囁きだ。背中ではうっすら影が蠢いている。


そのとき、どこからか「ゴン!」という鈍い音が鳴った。玄関の方からだ。


「……ヨモツ、また自分のスーツケースに頭ぶつけてない?」


千歳が言うと、ふらりとヨモツが入ってくる。肩には埴輪型のキャリーバッグが鎮座している。


「埴輪型のスーツケース、取っ手が内臓式になっててな……出すたびに拳骨食らうのじゃ」


「いや改善して」


「芸術とは苦しみなのじゃよ」


そう言って鼻を高くするヨモツの背後から、黒衣の錬金術師ネロが顔を出す。


「師匠、今度こそ取っ手のスライド式に改造しておきました。衝撃吸収ゴム入りです」


「ぬぅ! わしの芸術が……合理化されておる……!」


「ありがたく使いなさい」


そこへ、セラスが無言で紅茶を差し出した。相変わらずセリフなし。だが誰よりも気が利く。


「そなたたち」


リィナが立ち上がり、手を広げる。背後で風が吹いた(窓は閉まっている)。


「このように忙しき年の始まりにこそ、人の身には“癒し”が必要であるぞ!」


「お、出た。女神の温泉推奨令」


「我が御神託に従い、此度は温泉旅行を実施するものとする!」


「……また突然だな」


キリがいつの間にか窓辺に立っていた。白い和装に身を包み、目を閉じているが、口元にはうっすら微笑みが浮かぶ。


「心身を清め、穢れを祓うには……湯浴みは理に適っております」


「ちょっとお湯に浸かるくらいでそんな本格的な口調でなくても……」


「というわけで!」


千歳が立ち上がる。彼女が立てば会議が始まる。それは社内常識。


「じゃあ、温泉地候補と宿の提案はプレゼン方式でいきましょう!」


「えぇぇ~、仕事じゃん~」


佳苗が寝転がったまま転げる。


「いいのよ。遊ぶためにはまず、働くの」


「名言っぽいけど、まったく嬉しくないのです~……」



*** 一時間後 ***


社内プロジェクターの前で、佳苗がぶりっこスマイルで手を振っている。


「ではっ♡ 佳苗プレゼン♡ タイトルは~……『恋する♥ととのい温泉郷』なのです~!」


「帰れ」


ほぼ全員の声が揃った。



*** 最終的に選ばれた宿 ***


・名前:湯の花幽谷(ゆのはなゆうこく)

・場所:山奥の神域。リィナがかつて信仰を集めた神社の近く。

・宿泊条件:神気に敏感な者歓迎。

・設備:露天風呂/宴会場/“謎の間”あり/ご神木付


「リィナ様のゆかりの地……な、なんか……呪いとか、大丈夫ですか……」


レミットがそわそわする。


「うむ。神々の加護あらば、邪なるものも寄せ付けまい。……たぶんのう」


「“たぶん”!?」



*** 出発当日 ***


大型バスの前で、ダークエルフたちが既に大騒ぎしていた。


「私たち! スーツケースに焼き芋しか詰めてないけど問題ないですか~!?」


「誰か! 焼き芋が爆発したぁー!!」


「埴輪の中に柿入れたやつ誰よぉぉお!!」


その様子を見て、ショージがバスの屋根に荷物を積みながら、ぽつりとつぶやく。


「……にぎやか……」


「ショージくん、ありがとう! トランク満杯だね!」


千歳が声をかけると、ショージはもじもじと頷いた。


「……ども……お、重く……ない」


「うそだろ埴輪12体だぞ!?」



バスの中、宴が始まるまであと数時間。

しかしすでに、旅は波乱の幕開けだった。


バスは市街地を離れ、山道を登っていく。


大型車体がカーブを曲がるたび、座席に詰め込まれた乗客たちが左右にゆらゆらと大移動。


「千歳ぇ……! 助手席、酔う……! 今からお芋出そう……!」


佳苗が口元を押さえてうなだれている。すでに顔面は煮えたタコ色。


「朝から焼き芋4本も食べるなって言ったでしょ! というか“芋出る”って怖いからね!」


「なぜ旅の道中で炭水化物を詰めるのじゃ……」


ヨモツが後ろの席でため息をついている。彼の膝には、例によって埴輪型スーツケース。今朝もこっそり顔面を強打していたらしい。


「お、お芋、残ってたら……持ち帰って乾燥させて……祠に供えたり……します……」


レミットがそっと紙袋を抱きしめている。


中には、まだ温もりの残る焼き芋が2本。


「神域に焼き芋は要らぬ」


リィナがきっぱり言い放つ。後光が差している。たぶん照明の加減。


「でも~♡ 旅といえば食べ物でしょ~♡ お芋と~♡ 甘酒と~♡ おせちも持ってきたのです~♡」


佳苗は座席の下からタッパーを引き出し、重箱を広げはじめた。


「やめろ! 味しみ大根が転がってんじゃん!」


「こぼすなよ!」「マジでやめろ!」


バスが急カーブを曲がった瞬間——


ごろん。


……ぴょん。


ぷしゅう……(←甘酒が吹き出す音)


味しみ大根が勢いよく転がり、車内の通路をゴルフボールのように跳ねていく。


その直撃を受けたのは、最前列で黙々とおにぎりを食べていたセラスだった。


「……」


彼は大根をスッと手に取ると、無言で紙ナプキンにくるんでリィナに手渡した。


「ふむ、これは供物とするか」


リィナがすっと受け取る。なんか神聖化されてしまった。


そのころ——


後部座席では、ダークエルフたちがテンションマックスで大騒ぎしていた。


「ねえ、みんなでお弁当作ってきたけど、全部焼き芋にしたよ!」


「わたし柿詰めた!」


「埴輪にも詰めた!」


「それもう弁当じゃねえよ!」


ネロが後方から悲鳴を上げていた。


「お願いですから埴輪を保温容器に使わないでください! 古代文明に対する冒涜です!」


「だって中が空洞でちょうど良かったの~!」


「それ言ったらあたしのポーチ、埴輪の口にリップ刺してんだけど~」


「何そのメイクボックス!? 死後メイク!? 火の七日間とか乗り越えそうじゃん!」


ショージは無言で座席の天井に頭をぶつけていた。背が高すぎて、着席していても時折「ゴン……」と低い音がする。


「しょ、ショージくん、大丈夫!? クッションあるよ!」


「……だい……じょ……」


頭を押さえながらも、荷物棚からはにゃん湯たんぽを取り出して座らせるショージ。優しい。


その横で、キリが窓の外を見つめてぽつり。


「……この山道、何か……妙です。何かが蠢いています」


「ひええええ、やっぱり呪い的ななにか!?」


レミットが首をすくめる。


「ただの鹿だよ!」

千歳が運転席越しに叫んだ。


しかし、その鹿の背中にはなぜか埴輪が一体、ちょこんと乗っていた。


「……あれ、うちの埴輪?」


「多分脱走したやつなのです~♡」


「追いかけなくて大丈夫!? あれ神域に入り込んだらバグ起きるんじゃ!?」


「知らん! 今は旅行を楽しむんだ!!」



*** 一時間後、ついに到着 ***


山道を登りきると、そこは雪景色と湯けむりの混じる静かな山里。


老舗旅館『湯の花幽谷』が、厳かにたたずんでいた。


「わ~~! 本物の温泉宿~♡」


佳苗がテンションMAXで雪にダイブしそうになるのを、セラスが無言で肩をつかんで止める。


「はにゃんが……あったかいです……」 


レミットは湯たんぽをぎゅっと抱きながら、目を細めていた。


旅館の玄関には立て札が出ていた。


「ようこそ神の地へ。人の穢れを祓い、心の曇りを溶かす時が来た」


「おお、我が名を記す土地、未だ残されておるか……」


リィナが感無量の様子で見上げる。


「うわ、ここで昔ご神体だったのリィナ様?」


「うむ。五百年前、この地にて“百八の芋霊”を祓ったのじゃ。伝説となったわ」


「芋関係かよ!」



宿の女将は、ふくよかで笑顔の素敵な中年女性だった。


だが、なぜか背後に“巨大な埴輪”が静かに鎮座している。


「ようこそ、おいでくださいました。ご予約のお名前は……『ピコリーナ様ご一行』でよろしいですか?」


「はい、それです! 千歳です、代表です!」


千歳が胸を張る。


「お客様……なにか、“とても霊的に濃い”方が……多いようにお見受けいたしますが……」


「気のせいですよ、ははっ」


(全然気のせいじゃない)


「それでは、お部屋とお風呂の案内を……」

女将が振り返ると、すでにショージが屋根裏まで埴輪荷物を運び終えていた。


「……たくましいお方ですね」


「……運ぶの、得意……です」


ショージがもじもじと答える。



こうして、ピコリーナ一行の温泉旅行はようやく“宿泊”段階へと突入した。


だが、この後に待ち受ける宴会騒動、露天風呂混浴騒ぎ、埴輪芸コンテスト、夜の怪談迷走事件などなど――まだまだ“平穏”の二文字は訪れないのであった。


日も暮れて、宿の広間には、豪華絢爛な食事がずらりと並んだ。


山菜の炊き合わせ、鹿刺し、川魚の塩焼き、囲炉裏で炙られる味噌田楽、そして“焼き芋”——


「また芋かよ!!」


千歳の悲鳴が部屋にこだまする。


「えへへ~♡ さっき厨房の人にお願いして、余ったお芋を追加してもらったのです~♡」


佳苗が満面の笑みで、自分の前に芋山を築いていた。


「……佳苗、おまえ明日埋まって帰るぞ」


「埋まってるのはその芋山なのです~♡」


「はにゃー……」


レミットがその芋山に神妙な面持ちで手を合わせている。


「……芋供養中?」


「はい……この子たち……きっと望まれて焼かれたのではないかと……」


「いやそれは食べ物だから……」


そんな中、セラスは黙々と川魚を食べ、エルファは囲炉裏で焼いたナス味噌を絶賛中。


ヨモツは例によって「煮物がぬるい」とか言い出して、ちゃぶ台の高さに文句を言いながら埴輪型箸置きを持参していた。


「……んぐっ、うんまっ……!」


ネロはお子様プレートのようなセットを前にして目を潤ませていた。


「ネロ、それお子様用だけど大丈夫?」


「えっ!? い、いえ……! これは研究の一環で……!」


「プリン狙ってるのバレバレだぞ」


ショージは静かに巨大なお椀で味噌汁をすする。口をつけるだけで湯が半分減るサイズだ。


「お……おいし……い」


「……味噌、四人前分あるけどな」


そのとき、宿の女将が拍手しながら入ってきた。


「皆様~、お楽しみいただけていますでしょうか~? 本日は特別に、当宿恒例の“宴会芸大会”もご用意しております~!」


「宴会芸!? やるやる!」

佳苗が即座に挙手。


「……我も出るぞ」


リィナも手を挙げる。どうやらノリノリである。


「えぇっ!? 女神なのに出るの!?」


「神々の舞いを披露してやろう。いにしえの封印を解きし秘儀、“天翔る埴輪(てんかけるはにわ)”をな……!」


「なんか絶対ヤバい儀式じゃん!?」


「よし、審査員は私がやる。※ただし強制参加」


千歳がマイク(箸)を握ると、ダークエルフたちが一斉に「わーい!」と盛り上がった。


「出番だぞ! “ダークエルフ・エンタメ部”の底力を見せるのです~♡」


エルファの号令で、20人が勢いよく立ち上がる。


「衣装チェンジいっくよー!」


「てかもう持ってきてるんかい!」


【第一芸:ダークエルフ20人組による「芋盆踊り2025」】


♪ は~ にゃんにゃんにゃんにゃん 芋まつり~~~

 や~き~い~も~ おいし~~~い~~~


20人が埴輪型のお面を被り、芋のぬいぐるみを振り回しながら舞い踊る。


背後で回転するLED装置はどうやって持ち込んだのか、まったく謎である。


「うるさすぎるだろ!」


ネロが目を覆いながら叫んだ。


「この光景……神域を超えている……」


レミットが震え始める。


【第二芸:ヨモツの「阿波踊り × 埴輪解説」】


「埴輪の語源は“はにわらべ”……つまり~! 幼き者たちの声が形になったものなのだ!」


「踊りながら言うことじゃない!」


【第三芸:リィナの舞】


「我が舞いを見よ! この神舞、“天翔る埴輪”、いざ解禁!」


すると——


バッ!


宿の障子が吹き飛び、外から“空を舞う埴輪”が一直線に飛び込んできた。


「ぎゃああああああああ!!」


それは、昼間鹿に乗っていた“脱走埴輪”だった。


「な、なぜ戻ってきた……」


「帰巣本能か!?」


埴輪が見事に女将の頭に直撃。女将はその場でピクリと止まる。


「……ワタクシ、もうちょっと休ませていただきます……」

(※スタッフが静かに連れて行った)


【第四芸:ショージの紙芝居「埴輪とぼく」】


「……こ……これは……しゃべる埴輪……おれ……ともだち……なる……」


地味に感動系だった。みんな泣いた。


「しょ、ショージくん……感受性豊かなんだね……!」


レミットがハンカチを目に当てる。



こうして、大盛り上がり(と若干の事故)に終わった宴会芸大会。


みんなが思い思いに料理を平らげ、笑い合い、ぽかぽかになっていく。


夜はまだ長い。


そして次なるステージは——もちろん、混浴露天風呂。


「混浴……だと……!?」


ざわつくピコリーナ御一行。次の騒動の予感しかしない。


「ま、混浴!? 聞いてないんですけどー!!」


佳苗の悲鳴が旅館中に響き渡る。


「お、おちついて……でも確かに……案内には“露天風呂・混浴あり”って……!」


レミットが案内板を差し出すと、

そこには達筆な筆文字で《湯の花幽谷・神気の泉──神々男女、隔てることなかれ》と書かれていた。


「誰だよこのキャッチコピー考えたの! 女神が喜ぶと思ってんのかよ!」


「我である!」


リィナが高らかに胸を張った。


「神々が肩を並べるとき、いかなる区別も無意味……。これは神域の掟ぞ」


「神域に温泉作った時点でなんかズレてるよ!」


「えっと……でも……男女別の脱衣所はあるみたいですし……」


レミットが控えめに指差すと、たしかに脱衣所は分かれていた。


「……でも中は繋がってんだよなあ……」


千歳がため息をつくと、

ちょうどそこへセラスとショージが静かにタオル一枚で通りかかる。


「…………」 


セラスは当然のように無言。


「お、おふ……ろ……さむく、ない……かな……」


「ショージ、バスタオル三枚巻いてるよね!?」


「……しょ、初めて……だから……」


「うるっとするんじゃないよ!」


一方、ダークエルフたちは混浴と聞いて大はしゃぎ。


「わーい! 水鉄砲持ってこう!」


「わたし芋パックするー!」


「露天風呂でスイカ割りしようよ!」


「おまえら混浴って概念が完全に消えてるな!?」


ネロはというと、「こ、これは……文化研究の絶好の機会……!」と自分に言い聞かせつつ、

耳まで真っ赤な顔でノートとペンを持って走り去っていった。



露天風呂:夜。雪、ちらほら。


「ひ、ひろい……」


レミットが湯に浸かりながら、感嘆の声を漏らす。


月明かりに照らされ、湯けむりが幽かに光っていた。


「……神気が満ちている……」


キリがぽつりとつぶやく。 


あまりの神々しさに、湯けむりが周囲だけ神域っぽくなっていた。背景の岩が時々発光する。


そう言えばリィナって異世界からこっちの世界に来て、魔王をあのビルの地下に封印したって言ってたけど。


千歳は最初の頃のリィナの言葉を思いだした。それを今聞いていいのか。と、考える余裕もなく、


「キリさん、温泉に入ってるのに、足が……あ、足が……透けてます……!」


「すまない。成仏しかけていた」


「ええええええ!?」


その隣では、佳苗がバスタオルを巻きつつ入浴中。


「ふふん♡ 見てなのです~♡ こう見えてわたし、混浴免疫があるのです~♡」


「なにそれ!? 免疫ってなに!?」


リィナは岩の上に座り、湯に足だけつけながら、何やら祈祷していた。


「ふむ……湯の花よ……神の息吹を浴びよ……」


「その芋、湯に沈めないで! 芋を奉納しないで!!」



一方、男湯側では——


「……ふぅ」


セラスは全裸に近い形で、肩までお湯に浸かっている。


「な、なんか背中から光出てるんだけど……あの人、温泉でステータス上がってない?」


ネロがぼそっと言うと、


ショージがバスタオルぐるぐる巻きのまま「う……ぬく……」と目を細めた。


「しょ……しょーじ、溶けてる……!」



そのとき。


「おじゃましま~~す♡」


佳苗の声が岩の陰から響いた。


「えっ!? はやっ、もう来たの!?」


「おお……これは……混浴というやつ……」


ヨモツが風呂桶を抱えてぬっと現れる。


「なんで埴輪持ち込んでんの!? 湯の花代わり!?」


「埴輪風呂、これぞ神域」



リィナがその場に姿を現すと、湯けむりがぐわっと神々しく広がった。


「この場、清められたり。男も女も、皆平等に湯を楽しむがよい」


「……女神が正論だけど……ぜんぶ説得力を持たせてしまうのやめてくれ……!」



そこへ——


「よーし、流しそうめんセット準備よし!」

「持ってきたの!? 今!?」


「湯けむりクイズ大会スタートです~♡」


「なんでクイズ!?」


「私は芋風呂に挑戦します……!」


レミットが袋いっぱいの焼き芋を湯に投げ込み始める。


「埴輪スイッチ、起動ッ!!」


ヨモツの埴輪から謎の蒸気が噴き出す。


「やばい! これやばいよ! この風呂、今! 化学反応起きてるから!!」



そして——


「ドォォォォォン!!」


突如、芋と湯けむりと埴輪の融合反応により、空高く打ち上がる一つの影。


「なんか花火あがってるぅううう!!?」


「いや埴輪!! 埴輪が打ち上がってる!!!」



こうして、湯けむりと笑いと埴輪が舞う“混浴騒動”は、宿全体の神域バランスを揺るがすほどのインパクトを残して幕を閉じた。


翌朝——


「温泉成分が強すぎて……埴輪に角が生えました……」


「なんで進化してるんだよ!」




後編に続く。

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