十一月になり、紅葉が始まった。
楓も少しずつ色づき始めている。
ある朝、郵便受けに見慣れない封筒が入っていた。
差出人の名前はない。
しかし、筆跡で翔太からだと分かった。
茜は震える手で封を開けた。
便箋が三枚。
びっしりと文字が書かれている。
『おばあちゃんへ
直接言えないことを、手紙で伝えさせてください。
僕は、おばあちゃんのことが好きです。孫として、ではありません。一人の男として、一人の女性を愛しています。
おかしいことは分かっています。世間から見れば異常でしょう。年齢差も、血縁関係も、すべてが僕たちの間に立ちはだかっています。
でも、気持ちは本物です。
おばあちゃんの優しさ、温かさ、すべてが愛おしい。声も、仕草も、笑顔も。朝起きた時から夜眠るまで、おばあちゃんのことばかり考えています。
これは一時的な感情ではありません。夏から今まで、気持ちは強くなる一方です。
お願いです。一度でいいから、僕の気持ちを受け止めてください。祖母と孫としてではなく、一人の人間として向き合ってください。
愛しています。
翔太』
茜は手紙を読み終えると、静かに折りたたんだ。
涙が溢れそうになった。
この子は本気だ。
その本気さが恐ろしかった。
手紙を仏壇の引き出しに仕舞った。
処分すべきだと分かっている。
しかし、できなかった。
翔太の想いが詰まった手紙を捨てることなどできなかった。
その日、翔太が来た時、茜は何も言わなかった。
手紙のことには触れなかった。
翔太も、いつも通りに振る舞った。
しかし、二人の間の空気は確実に変わっていた。