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第7話 11月

十一月になり、紅葉が始まった。


楓も少しずつ色づき始めている。


ある朝、郵便受けに見慣れない封筒が入っていた。


差出人の名前はない。


しかし、筆跡で翔太からだと分かった。


茜は震える手で封を開けた。


便箋が三枚。


びっしりと文字が書かれている。


『おばあちゃんへ


直接言えないことを、手紙で伝えさせてください。


僕は、おばあちゃんのことが好きです。孫として、ではありません。一人の男として、一人の女性を愛しています。


おかしいことは分かっています。世間から見れば異常でしょう。年齢差も、血縁関係も、すべてが僕たちの間に立ちはだかっています。


でも、気持ちは本物です。


おばあちゃんの優しさ、温かさ、すべてが愛おしい。声も、仕草も、笑顔も。朝起きた時から夜眠るまで、おばあちゃんのことばかり考えています。


これは一時的な感情ではありません。夏から今まで、気持ちは強くなる一方です。


お願いです。一度でいいから、僕の気持ちを受け止めてください。祖母と孫としてではなく、一人の人間として向き合ってください。


愛しています。


翔太』


茜は手紙を読み終えると、静かに折りたたんだ。


涙が溢れそうになった。


この子は本気だ。


その本気さが恐ろしかった。


手紙を仏壇の引き出しに仕舞った。


処分すべきだと分かっている。


しかし、できなかった。


翔太の想いが詰まった手紙を捨てることなどできなかった。


その日、翔太が来た時、茜は何も言わなかった。


手紙のことには触れなかった。


翔太も、いつも通りに振る舞った。


しかし、二人の間の空気は確実に変わっていた。

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